第18話 日常
次の日、早速風呂を作ることにした。
庭を抜けると離れが何棟か建ててある。
城こそないが、この屋敷の面積はだいぶ広いのだ。
その一棟を使い、今後思いついた時に使える娯楽施設を作る場所にすることに決めた。
一階の隅の大部屋に石を敷き詰めていく。
本来なら木の桶を作りたいが、技術もないし木も何を使えばいいのかがわからない。
仕方がないのでお湯を張る場所だけタイルで穴を作った。
仕組みは簡単だ。
別の場所にある水をためておく場所に水を魔法で生成し、その下にある火を沸かすところから魔法で炎を出せばいいだけだ。
やはり、天然温泉の方がいいかと思ったが出なかった。
水源はあるが、庭園に使ってしまっていて足りない。
風情が消し飛んでいるような気がするが大丈夫だろうか。
いざ入ってみるととてもゆったりとした気分になった。
周りを竹のような植物を乾燥させた塀で囲んだ露天風呂もいい感じだ。
サウナや水風呂も魔力を使えば出せるようになっている。
庭園から持ってきた色とりどりの花を眺めながら空を見上げる。
前世、地球と全く変わらない色だ。
眠くなってきたので風呂を出る。
いつの間にかやってきた使用人が紅茶を用意してくれていた。
「ありがとう。」
「菓子が届きますのでゆっくり休んでください。ご希望がありましたらマッサージなどもありますがどうされますか?」
「今はいいかな。」
「かしこまりました。」
続いて出された菓子をつまみながら庭園の中にある東屋から花々を眺める。
すると、その中に混じって花を採集している人間がいた。
「イシェル。あれは何をやっているのだ?」
「薬草の採集です。景観が損なわないような場所の花を取って、研究に使うのですよ。」
「なるほどな。魔導医師だけではだめなのか?」
「あくまで魔法で治すものなので、実際に薬草から作ったものとは効力が違いますよ。それに、薬草は主に毒などを治すのに使われます。」
「そういうことか。」
薬師というべきだろうか、その人物はこちらに気がつくとお辞儀をし、去っていった。
それにしてもこの菓子は何だ?サクサクとして美味しいな
ラスクにとても近いが、前世にはなかった味付けがされている。
「この菓子は何を使っているんだ?」
「小麦粉と【飛鶏】の卵と【魔闘牛】の牛乳、バターと【炭糖】です。レシピは…。」
なるほど材料が違うだけだな。
それだけでこれほど変わるのか……。
意外な発見だな。調理場も作って実験してみるか。
素材の違いでだいぶ変わりそうだ。
とういうか、闘牛の牛乳は大丈夫なのか?」
「クリフォト領は海には繋がっていないよな。」
「ええ。大きな川があるのみですね、領主の魔法によって治水されていますので氾濫もございません。」
「なら良かった。海はどのあたりにある?」
「あの小国にありますな。」
「……なるほど。」
いずれ海軍も必要になるだろうな。川で作っておくように手配しておくか。
魚が食べたい。
「それと、叔父上から手紙が届きました。ギルドに行けばギルマスが呼び出してくれるそうです。」
「わかった。明日にでも行こう。」
「そのように言っておきます。」
「ありがたい。……執務に戻るか。」
「そうしましょう。財務が溜まっています。」
「機関を作ってそこで管理できるようにすれば簡単なのだがなぁ〜。」
「着服されますからね。」
「どうにかならないものかね。」
「そうですね。」
財務の紙束を想像しながらトボトボ二人で帰っていった。
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