第2話 奴隷商
クリフォト家騎士団団長、ガーランド。
日本における一般的な騎士のイメージと非常に酷似している。
こんなキャラはゲームには居なかったはずだが、ここはリアルだ。登場してない人物がいてもおかしくはない。
「閣下、今日も訓練ですか?」
「どうしたガーランド。訓練する事が悪いのか?」
「いえ、そういうことではありません。朝、お見かけした時体調が悪そうに見えたので今日はお休みになさるかと……。」
少し心配そうな顔をしてガーランドが尋ねる。
この体からの記憶を見ると父が死んでから異様に訓練を俺自身に課している事がわかる。気持ちはわかるが、確かに訓練してはいけないレベルまでに疲労が溜まっているな。
「……そうだな。父が死んでから私は少々焦りすぎていたらしい。忠告感謝する、今日の訓練は休ませてもらっても良いか?」
「ハッ。少し、安心いたしました。」
「大丈夫だ。俺はこの程度では倒れん。」
笑いながら俺は訓練場から去っていった。
思いがけず休みが入ったが、何をしようかな……今後に向けて手札でも集めるか。
ある考えが浮かんだので街に向かった。
所々魔法で隠密しているので使用人にはバレない。
……いや、バレたようだ。
街へ繰り出そうとしたその時、背後に執事が現れた。
「イシェル、驚かさないでくれ。」
「申し訳ございません。しかし、クリフォト様も勝手に一人で街に出ようとしないでください。」
もっともな意見だ。
「ではお前も一緒に来るか?」
「特に予定もありませんし、同行します。」
「なら大丈夫だろう。そもそも、平民やそこらの刺客ごときが私を殺せるとでも?」
少し煽るように言うが、イシェルは真剣な顔を崩さない。
「油断はしてはいけません。」
「それもそうだな。」
「そういえば、クリフォト様はなぜこのような場所へ?」
「人材を見にきた。奴隷商、またはそれに近い闇市はあるか?」
この国では表向きには奴隷は禁止されている。だが、他国の子供はその類に入らない。
使い切りにしても人材は重要である。まぁ、奴隷を信頼することはないがな。
「それでしたらこちらの方向に奴隷商があるはずです。闇市もその方向にあるはずですので一緒に見ますか?」
「そうだな。あの実験のためにも非検体は必要だ。…闇市は行かなくてもかまわん」
「そうですね。隷属させておけば裏切る心配もない。非常に便利なものです。」
全くだ。
暫く歩くと奴隷商についた。屋敷ほどではないが、外観は綺麗である。
「これはこれは。ナハト様自ら。何の御用で?」
綺麗な格好をした中年の男が出てきた。
「奴隷商に行くことに理由は1つしかないだろ、それとももう一つの理由で来なければいけないようなことをやっているのか?」
「も、勿論そんなことはございません。」
まぁ、証拠を見つけたとしてここを捌くことはないだろう。口減らしとして売られることでその他大勢が生き残るなら領にとって問題はないのである。思い上がらないように釘は刺しておく必要はあるがな。まぁ、茶番でしかない。
「どのような奴隷を望みで?」
「特にないが……いや、他国の貴族はいるか?」
「こちらに。」
そう言って奴隷商が案内を始めた。
貴族の奴隷が住んでいるスペースに行くまでに他の奴隷も見るが、どれも殺意が籠った目をしている。
「こちらがそうです。」
「ふむ」
与えられたカタログを見ながらイシェルと話し合う。
「どれが良いと思う?対してスペックは変わらないぞ。」
「奴隷の感情も大して変わらなそうですので悩みますね。」
貴族だから魔法も使えて優秀なのだがスペックが大して変わらないのだ。カタログで記載されてない情報もイシェルと俺なら見分ける事ができる。と言うか、気になる気配が奥から感知できるな。
「おい奴隷商、奥の隠し扉の部屋にいるのは誰だ?」
「……………」
「答えろ。ここで死にたいのか?」
剣を取り出し、奴隷商の護衛が反応することもできない速度で首筋に両手剣を添える。
「……ライヒム王国の王族でございます。」
奴隷商が搾り出すような声で答えた。
「ほぉ、イシェル知っていたか?」
ニヤリと笑ってイシェルに問いかける。
「いえ、知りませんでしたな。」
白々しい顔を浮かべながらイシェルが答えた。
が、実際どちらも知らない。奴隷商に対してのブラフである。
しっかし、王族とは何が…。
もしかして知らずに引き受けて後から発覚か?
「奴隷商、その王族二人は貰っていくぞ、後処理はしてやる。その代わり貴族全員の値段を半額にしろ。」
「良いのですか!?」
「勘違いするな。一代でこの規模まで広げて見せたお前の手腕を買ってやるだけだ、次はない。それと近いうちに召喚するから準備だけしておけ。」
「了解致しました。」
こいつを殺してもその後、奴隷商を作るのが面倒だ。そうするくらいだったらこの面倒ごとを処理したほうが早い。ついでに恩も売れたしな。
奴隷を自腹で購入し、屋敷まで届ける手配が揃った。
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