93話目田沢湖を救っちゃうよ!

俺の目の前で佐竹侯爵閣下が深々と頭を下げていた。


関門トンネルを掘ったり、東京湾地下トンネルを掘ったり、青函トンネルを掘ったり、黒部ダムを建設したりしちゃったもんな。


『玉川温泉から流れ出る強酸性の温泉の被害をなんとかできませんか?』

と頼まれてしまったのだ。

仙北平野東部の開拓の大きな障害になっているらしい。



佐竹家といえば常陸国(茨城県)周辺地域に強い力を持った室町以来の名門大名家である。

徳川幕府が出羽国に佐竹家を移動させたのは大軍を動員できる佐竹の力を恐れたとも言われている。

周辺の蘆名などの大名家にも強い影響力を持っており、動員能力が高かったからだ。


その佐竹家にとって、開拓に成功すれば広大な田畑になるであろう、

仙北平野東部の奥羽山脈西麓地域における未墾地開拓はまさに悲願と言っていいが、苦難の歴史でもあった。


豪雪をともなう山塊から無数の沢水を集めて流れる玉川は、水量がきわめて豊富な川であるが、田沢村の上流奥深くにある玉川温泉から噴出する大量の強酸性水(毒水)のため大規模な除毒工事を必要とする川でもあった。


玉川温泉はpH1.03〜1.25で国内の温泉では最低のph値を示し、「大噴(おおぶけ)」と呼ばれる湧出口は単一の湧出口からの湧出量としては日本最多の毎分9,000リットルを湧出する。

温度は98度。

湯治効果はきわめて大きいものの、下流域の農業にあたえる被害もまた甚大であった。

また、その被害は、飲料水、水産業、土木工作物の酸化など多方面におよんでいた。

湧き出る量がこれほど多くなければ毒水とは言われていないだろう。

皮肉な物である。

普通なら喜ばれるだろうに。


だが、塩酸が主成分の酸性度の高い温泉水が毎分9000リットルも湧き出すのだから被害も納得できる。


角館の田口宗俊、宗辰親子は天保12年(1841年)に工事に取りかった。12年の歳月をかけて大きな成果を出した。


慶応2年(1866年)には鑓見内村(長野)の小松市右衛門が地下溶透法による修復に乗り出している。


だが、明治から大正にかけては、除毒に関してはほとんど放置の状態に近かった。


強い酸性の玉川温泉の温泉水の湯治の効果は極めて高い。

現在は整備されていないが未来では

病に苦しむ人々にとって助けになる

素晴らしい温泉ではある。

だが、どう中和すればいいのか解決策がまったく見当たらない難問であった。


中和するには、強いアルカリ性を持つ石灰岩が1日あたり10トン以上も必要、(一説には30トン)は必要だとも

言われるほどだ。


調べれば調べるほど、開拓の困難さが

浮き彫りになってくる。

国家プロジェクト物の大規模工事になるだろう。


田沢湖?

何か記憶に引っかかるような、、、


佐竹侯爵が帰られた後、俺はゴーレムに尋ねた。

『田沢湖について教えてくれ。』

「田沢湖は日本で1番深いカルデラ湖ですが透明度は高く、ヒメマスやクニマスといった漁獲資源も豊富な美しい湖で」


『クニマス?クニマスが生息していた

田沢湖!!』

まさか!!

記憶のパズルのピースがカチっとハマって、俺ははっきりと思い出していた。

『田沢湖は強い酸性の水を流し込まれて漁獲資源が全滅した悲劇の湖じゃないか!!』


美しい田沢湖を死の湖にしてはならない!

俺は引き受ける事を決意した。



俺は田沢湖の湖畔に転移した。

地元の人には何も言うつもりはない。

陳情されたり土下座して頼まれたりしたくはなかった。

史実だと25年(26年です。)くらいかけて、10億円の

巨額の費用をかけての大規模国家事業である。10億円といっても昭和前半から戦後間もない頃のお金だからね。

相当な金額だよ。

戦艦1隻以上の建造費用に匹敵するかも。

それにブルドーザーが投入されず明治後半から行われたら30年経っても完成しなかったかもな。


それに洪水が起きればどうなるかわからないし。


『この美しい田沢湖が死の湖になるのか、、、』

愚かな事をしたバカ共への

怒りが込み上げてくる。

普通なら石灰岩を使うなりなんなりして中和してから放流するだろ!

そのまま湖に放流するって何を考えているのか!

発電所の機械だって酸性度の高くなった水のせいで壊れているじゃないか!

そんなのわかりきっているだろ!

と言いたくなってしまう。

田沢湖の水を水力発電しつつ排水して玉川を薄めたらいいのに、やってる事が真逆だよ。

結局は漁獲資源を全滅させて、2000年近くになっても自然が回復していない始末じゃないか。

こんなん、『開拓者さん頑張って』で

できる開拓地じゃねーよ。


その後、俺は『ジャングルの原始林』と言われた森林も見ていった。

人力で開拓なんて無理だろ!と言いたくなるような森林だった。


玉川温泉だって道路の無い山奥に湯治場があるだけ。

昭和30年代にやっと道路ができるくらいである。

昭和12年とかから工事してるのなら、まずは玉川温泉からの温泉水の流出をなんとかするべきなのに!!

なんで、少しでも中和しようとか思わないんだよ!



だが、この温泉水が玉川に流れ込む事で『北投石』が生まれる。

お風呂に入れればラジウム温泉になる

メリットがある。


とりあえず、目についた『北投石』を採取して今日のところは帰宅する事にした。お供のゴーレム達と一緒に転移するのだった。



(史実の玉川河川統制計画は、具体的には玉川温泉の強酸性水(玉川毒水)を田沢湖に流し込んで、その毒性を中和し、生保内発電所・夏瀬発電所・神代発電所で発電用水として利用し、その下流の神代調整池(神代ダム)に2つの取水口を設け、北側の「神代取水口」から取水して右岸用水路を、南側は神代ダムから放流された抱返り渓谷付近に流された水を「抱返頭首工」で取水して左岸用水路をそれぞれ建設し、右岸に471.8町歩、左岸に2028.2町歩を新たに開墾するほか、既存の水田にも利用しようというものでした。)


(未墾地を強制買収して水利をともなう、秋田県内では前例のない約3,000町歩(およそ3,000ha)の開拓事業です。)


(当初計画では、2,500町歩を開田して、そのうち1,700町歩は地元の小作農の増反用地にあてて経済更生をはかり、のこりの800町歩には約400戸の移住家屋を建設して優良な移住者を招致し、新農村を建設するつもりでした。)

(この事業では地域の既存農家の経営規模拡大をはかるために、事業主体(国)が、農地に必要な水源施設、水路、農道などの基幹工事はもとより末端の開墾作業とその換地までを一貫しておこなうことでした。)



翌日、ゴーレム達にアイテムバッグを持たせて『北投石』を採取させた。

あるだけの『北投石』を回収するつもりだ。

そして河原を下って行く。

地下もサーチしつつ、地下の『北投石』も回収していくと大量に『北投石』を回収する事ができた。


そして玉川温泉の酸性水が流れ込む場所に第1沈殿池を作る。この沈殿池には大量に石灰岩を入れて中和させる。


そして高さは1.5mくらいの砂防ダムを作る。

このダム内にも石灰岩を大量に入れた。ダム自体は周辺の石を固めて土魔法で作る。

攪拌して鑑定してみるとそれなりに

酸性度は下がっている。


だが川の水も危険なくらい酸性度が高い。

1分あたりの湧き出る量が9000リットルだもんな。

これは相当な量の石灰岩が必要なのかもしれない。


それに水田に開拓予定の砂礫地は石だらけ。

耕地化するまでには土中の礫や石を除去しなくてはいけません。

そして野ツツジやアカマツやスギの広がる原生林の開墾も非常に困難だと想像がつきます。


水田にするとなると、表土(礫)と底土を逆転させる作業が必要になります。ベントナイト(粘土)を使用して水田の底の保水力を高める床締めの作業も

大変でしょう。


史実では、玉川左岸が1,971ha、右岸391haが開拓されました。



『まずは玉川温泉の酸性温泉水をどうするかだな。』

玉川温泉の権利を買い占め、周辺の土地も全部を買いました。


ダンジョンの階層を丸々使用して、

深さ数キロ、面積は関東平野の広さの巨大な穴を開けます。

そこに玉川温泉の温泉水を転移魔法陣を使って空間を繋げて注ぎ込みます。

まぁ、満タンになったら何かに使うとしますか。

これで玉川に温泉水が流れ込む事は無くなりますから、石灰の粉を川に混ぜていけば川の水も中性に近くなるでしょう。


さて、佐竹侯爵に報告するとしますか。

これで田沢湖は死の湖になる事は

ないでしょう。

仙北平野東部の開拓がどうなるかは

計画案が出てきてから、考えるとしますか。


・・・・・その後、東北振興の為、

仙北平野の開拓計画はスタートしたが

地域の住民では手に負える開拓ではないと陳情が行われ、宇垣建設が森林の伐採部門を全面的に行う事になった。


主人公とゴーレム達のレベルの高い植物魔法で材木に適した木に成長させられた木は次々に切り倒されて木材に加工する為の保管場所に運ばれて売却されて行く。

魔法が使えてレベルも高いゴーレム達が切り倒された木や邪魔な岩や倒木を次々とアイテムバッグに収納していきます。

ゴーレム達は24時間体制で働き続けて

僅か1年で森林開拓を行ってしまいます。


森林開拓があまりにも早く進むのに驚いた佐竹侯爵から依頼された主人公は、エリア植物魔法にて伐採予定の木を立派な木材に加工できそうな木に成長させた作業が終わった後に他の場所に行った。


川の近くの砂礫地域だが、何度も洪水が繰り返されて砂と石が混ざっており、水田にする場所から石を取り除くのは大変な作業だったが、主人公とゴーレム達はアイテムボックスにさっと収納しその下の土台になる地面を土魔法で粘土質のベントナイトに変質させ、水田に向いた土を上に出して次々と水田を完成させて行きました。

水田になる砂礫地域の半分以上を主人公はちゃっちゃっと完成させてしまいましたので開拓住民用の家屋の建設が

早々と始まるのでした。

こうして宇垣建設の凄さはまた広まるのでした。


玉川の水に関しては水魔法の水質変換魔法に大量の魔力を注ぎ込む力技で

酸性から中性に変化させました。

玉川温泉からは温泉水が溢れる事は無いので、もう安心でしょう。

田沢湖は今日も綺麗で美しい姿です。


史実の玉川河川統制計画案とはちょっと違ってますが遥かに安上がりに、

早く開拓ができました。

まぁ、ダムとかは宇垣建設がちゃっちゃっと建設しちゃいます。


あ、宇垣建設は日本一の建設会社ですけど、中抜きとかせずにきちんと下請けに建設費用を渡していますし、その

建設会社が下請けに丸投げして中抜きしないように厳しく指導しています。


そういう習慣ができないようにしたいんですよね。

丸投げする企業を外して下請けと直接

契約すればいいだけですし。


しかし、、、開拓の契約金額が30万円って少なく感じるなぁ、、、

本来なら26年もかかる大工事をさっと

終わらせたのに。

まぁ、ダムの方は1社独占で別払いだから、そちらは大儲けなのだが。

まぁ、この金はゴーレム達の給料やボーナスにでもするか。


さっと建設できた他とちがって、

こちらは拘束時間が長くなりました。


あと、玉川温泉の豊富な温泉が得られたのは収穫でした。タンクローリーで

温泉水を運んで契約した銭湯にラジウム温泉の湯船とタンクを建設してタンクを満タンにして幾らというビジネスを開始しました。

大浴場を持つホテルや高級旅館とも契約しましたよ。

まぁ、国民の健康増進の為のボランティア的なビジネスですがね。

皇居内にも玉川の湯ができました。

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