“ざまぁ” をします……。だけど、思っていたのと何だか違う
棚から現ナマ
第1話 ”ざまぁ” の開始
「オーホッホッホッ。これで分かったかしら? あなたが身の程知らずだということが。ジェイニー、あなたは所詮、私には敵わないってことよ」
私は右手を腰に、左手を口元にあて、高笑いをかます。
さあ、 ”ざまぁ” の開幕よっ!!
ここはエルダーナ王宮で行われている成人を祝うパーティー会場。
今年成人を迎えた貴族の令息令嬢達のお披露目の舞踏会だ。
会場には成人を迎えた者達以外にも、大勢の貴族が招かれているのだが、今年はいつも以上に招待客が多い。というか、成人以外の令嬢達が多く押しかけているようだ。
令嬢達の狙いは唯一人。この国の第2王子様、アーネスト=グランシル=エルダーナ様だ。
アーネスト王子も今年成人を迎えるので、このパーティーに参加している。
この国の王族は10歳頃に婚約するのが通例なのだが、アーネスト王子には未だ婚約者はいない。
どうやら相手に対しての理想が高いらしくて……。とても、とても、とても高いらしくて、どんなに美しく聡明な令嬢を連れてこようと、鼻で笑って相手にされないらしい。
王子たるもの国のために政略結婚があたりまえなのだが、いかんせんアーネスト王子は優秀すぎた。
顔が良いのは王家アルアルなのだが、その上に頭脳もずば抜けて聡明で、剣技にも優れている。いつの間にか周り中が
成人前だというのに政治にも精通されており、税制改革に始まり地方の農作物の流通の改善まで、ありとあらゆることに能力を発揮されている。
今アーネスト王子から手を引かれると、政務が滞ってしまう程には国のために貢献されているのだ。
第2王子ということもあり、外国の王族に婿養子として差し出そうかという話も出たことがあったらしいが、これほどの人材を外国に出してしまうのは惜しい。執務が滞り宰相も泣くだろう。それに、もし敵にでも回られたら、この国の実情を知られている分、どれ程の脅威になるか分からない。
何件か縁談の話もあったようだが、見送らざるをえなかった。
困り果てた国王陛下は、この成人祝いのパーティーに、めぼしい令嬢達を招待し、アーネスト王子自身に結婚相手を決めさせることにした……。という噂が流れている。
そのためか招待された令嬢達は、それはそれは気合の入った美しい装いをしているし、親たちは自分の娘を王宮に押し込もうと、パーティー会場で根回しに余念がない。
そんなパーティー会場の中心で高笑いをしているのが私、アイリス=ハーナン。
残念ながら美人とは言えない平々凡々な容姿で、スタイルも中肉中背。お胸もそこそこ。
野菜で例えるなら一皿いくらで売られているタイプだ。
その他大勢というかモブというか、特出した所が無くて、何かしら取り柄を強いてあげるなら、貴族の娘ということぐらい。
これだけ騒いでいても、明日になれば私の顔を覚えている人は、ほぼいないことだろう。キングオブキングモブそれが私だ。
「ひ、酷いわお姉様」
高笑いする私の目の前で、ピルピルと小さく震えて怯えているのが、ジェイニー=ハーナン。
艶やかな金髪は腰まで届き、今は両側を編み込んだハーフアップにして、贈り物だという髪飾りを付けている。
瞳の色は澄んだ蒼。華奢なのに胸は大きい。庇護欲を掻き立てられる美少女だ。
ハーナン侯爵家の次女であり、双子ではないけれど同い年の私の妹。
「ジェイニーを悲しませるのは止めろ」
そんなジェイニーの肩を抱いているのが、チャールズ=ロウハコウ。
茶色の髪に鳶色の瞳。体格は逞しく身長も高い。第2騎士団に所属しているなかなかの美丈夫。
ロウハコウ侯爵家の三男だ。
チラリと周りを見回すと、会場の真ん中で騒ぎだした私達の周りには、大勢の招待客達が集まって来ており、何が始まったのかと興味深そうにこちらを窺(うかが)っている。
その中に両親がいるのが分かった。両親にとっても訳の分からない状態だろう。下手な口出しをするわけにもいかず、傍観しているみたいだ。
私はわざわざこの
この場で “ざまぁ” をするために。
私が “ざまぁ” をする人達が、言い逃れなんてできないように。
徹底的に “ざまぁ” されるがいいわ。多くの人達の前で、恥と屈辱を味わわせてやるからっ!
私は気合と共に、手に持った扇に力を入れるのだった。
*** *** ***
テンプレシリーズをお届けします。
第1弾 ”ざまぁ” です。次作は ”悪役令嬢”……と、続く予定です。
今回のお話は、9話ぐらいの短いものです。
1日1話投稿予定です。
宜しくお願いします。
BL(八重名義)情報です。
ムーンライトノベルズ(BL)に投稿していた『乙女ゲームの悪役令息でした。立派な悪役令息になってみせる! て、思っていたのに……なんで?』を【乙女ゲームの悪役令息に転生しましたが、攻略対象者のハイスペックな義弟に迫られています!】に改題し、9月8日に電子書籍にて発売します!
大幅に改稿しました。まるで違ったお話になっておりますが、とっても素敵なお話になりました!
削除はしませんので、読み比べてみて下さい。
イラストはカズアキ先生が担当してくれ、とても素晴らしいセシルとフレデリックに会えます。
Jパブリッシング様のブルームーンノベルズです。
https://bluemoonnovels.com/books/bmn2309_otomegameno/
どうぞ、見てやってください。
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