第37話 ドラゴン

 村長一派が桃教入りをして村に桃教で無いものはいなくなった。

 その代わりに周囲の村があそこは変わった村だと噂をし始めた。


 そんな中、太郎は輸送船トランスから背丈に合う宇宙海賊からの押収品の中で高周波ブレードを装備する事にした。

 日本刀に似ている構造で高周波で超振動を発生させているので鉄ぐらいなら簡単に切れる。

 そんな武器を装備して携帯する事にしたのだ。

 ちなみに防具はバリアを張れる海賊から押収した腕輪のバリア発生装置である。

 さて、そんな装備をして如何するのかというと。魔術の師匠の所で冒険者ギルドに特例で入会できて最初からダンジョンに潜れる階級になったからである。

 

 ダンジョンに潜るのにパーティー人数は俺と師匠の2人だけである。

 そして、どうやら最近出来たダンジョンでボスはドラゴンらしい。

 らしいというのは偵察で見に行ったパーティーがボスが他の魔物を捕食している所を見たらドラゴンだったと言う報告があるからだ。

 と言うわけで金欠の師匠と俺がドラゴンを倒してその素材を売っぱらおうと言う事になった。

 ちなみに報酬は均等に働いて基本半分半分で、活躍すれば6:4や7:3もあり得る。

 師匠は昔の冒険者時代に使っていたマジックバックを持ってきている。

 物資はこの中に入っていると言う事だ。


 ダンジョンアタックを開始して1時間の内にヘルハウンド、スライム、トレント、アサシンラビット、ゴブリン、コボルト、オーク等と遭遇して蹴散らしている。

 結果、もう荷物が一杯で仕方なく一旦帰る事になった。

 で、その時に疑問を聞いてみた。


「師匠、ドラゴンを倒してもどうやってドラゴンを洞窟から運び出すつもりなんですか?」

「あ! …………何も考えてなかった」

 

 …………まぁ、そんな所かも知れないとは思っていたけど、その通りだったとは思わなかったなぁ。

 じと目で師匠を見てると、師匠はごまかしに掛かった。


「まぁ、こんな事もあるよ。私だって人間なんだ失敗くらいあるさ」

「失敗の頻度が人よりも多いみたいですけれど?」

「失敗して人は学んでいくんだ。今回の事は良い学びの機会になっただろう?」

「賢者は本を見て学ぶと言っていますが?」

「…………何でそういう事言うかな! 泣くよ! 終いにはさぁ!」

「見苦しい師匠の泣き顔は見たくないのでここまでにしておきます」

「…………ぐす……うぅぅ」

「師匠、見苦しいので泣かないで下さい」

「うわぁぁぁぁぁん!」

 

 …………ドン引きですよ。良い大人が大泣きなんて。

 まぁ、泣くだけ泣いたらすっきりすだろうから、放っておこうっと。

 結局泣き止むまでに1時間程掛かった。


 冒険者ギルドで獲物を換金して5対5で分配する所を泣かしたので4対6で良いですよと言うと満面の笑みで笑った。

 …………こういう所が現金なんだよなと思いつつも憎めない性格をしている師匠だった。

 

 冒険者ギルドにドラゴンを入れるマジックバックの事を相談したら、冒険者ギルドで貸し出しをやっているそうだ。

 ドラゴンの成体が入るぐらいの大きさのマジックバックなら20金貨を預けて無事に戻せば10金貨返ってくるらしい。

 反対に無くしたり壊したりすれば追加で金貨200枚取られるらしい。

 その事を師匠に相談すると、折半で借りて壊したりしたら負債も折半でと言う事になった。

 

 折半でドラゴンの生態が入るぐらいのマジックバックを借りて、再びドラゴンの洞窟に行く。

 今度は以前にずいぶん戦闘して自分達より格上と思い知ったのか敵と殆ど出会う事無くドラゴンがいる奥の部屋に行けた。

 奥の部屋は暗くなく、日の光が振ってくる火山の火口が固まったような場所だった。

 ドラゴンは寝てたので師匠に何か見せたい魔法でもあるのですかと聞くと別に無いとの事だったので、ドラゴンの頭まで飛び跳ねて高周波ブレードで脳みそを差した。

 ドラゴンは痛みを感じる前に死んだと思う。

 そして俺は借りたマジックバックにドラゴンの死体を入れて師匠に言った。


「師匠は殆ど何もしてないのですから割合は9対1で良いですね!」

「え? は! へ?」

「良いですね!」

「はい!」


 有無を言わさぬ力業で9対1にした。

 冒険者ギルドに戻り、ドラゴンの成体を殺して持ってきたので査定して欲しいと言ったら冒険者ギルド中がパニックになった。

 解体所でドラゴンの成体を出すと通常の成体よりも多少大きかったそうだ。

 額の傷しか無い極上品で血もこれなら沢山取れるし皮も頭の傷以外は無傷だから高額が見込めると言われた。

 マジックバックに使用されているのは何の皮かと聞くと、大きさによって違うが最上級はドラゴンの胃だとの事だ。

 丁度良いので胃と肉を少し……と言っても大きさが大きさだから一抱えあるが各部位毎に貰う約束をした。

 全体の金額を出して貰ってその1割とマジックバックを返したので帰って来た金貨10枚の内の5枚を師匠に渡した。

 全体の金額が金貨150万枚になったので胃と肉と師匠の1割を引くとこの国の通貨で金貨115万枚になった。



―――――――――――――――――――――――――――――

次回は話は楓視点の話だよ。

帝国と慰謝料での話し合いをするみたい。

次回、交渉① -楓視点-です。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る