第16話 他界
海賊と通信しながら電子戦をしていると、ついに楓から残り7隻のメイン・サブコンピューターを乗っ取ることに成功したと聞いたので海賊船にあった即効性の強力な眠り薬や痺れ薬と同じ効果を持つナノマシンを空調に混ぜて敵の無力化を図る。
徐々に敵艦内に充満していくナノマシン達。
「よぉ、そろそろ射程距離だが降伏する気になったか?」
「誰が降伏するかよ!」
「だったら死にな」
そう言って相手は主砲を撃ってきた上に高速ミサイルを発射した。
主砲は強力なエンジンを積んでるだけ合ってバリアでしのげたが、それにバリアがかかりきりになってる間に高速ミサイルの侵入を許してしまった。
幸い直撃はしなかったが、至近距離で爆発し、輸送船に分離できる第一倉庫、第二倉庫の内の第一倉庫の外殻が何枚か外れた。
また、艦内の酸素タンクが衝撃で何台か壊れてしまい、修理に自立型万能工兵ロボットが大忙しであった。
「チッ! 死ななかったか」
「これぐらいで死んでたまるか」
「だが……次は、仕留め……る」
「やっと効いてきたか」
「何…………やがった」
「答えるつもりはない。そのまま死んでいけ」
「お前も……道づ……だ」
そう言うと何かの信号を発した様だ。それを楓が受信している。
変化が無いのを見ると海賊は何故だという顔をした。
「もしかして船に仕込まれた爆薬でも爆発させる気だったか? 残念だったな、あれは受領前に撤去させて貰ったよ」
「ち……しょう」
そう言って海賊のボスが倒れ込んだ。全身の姿が見えて分かったがサイボーグだったようだ。
サイボーグである程度脳が守られていて、体内での酸素吸入ボンベもあってだろう。
それで、外気からの吸入は少なかった為にナノマシンの効きも悪かったのかと納得した。
楓に言って海賊艦の各艦のロボット達全部に内部の人間の拘束と武装解除にサイボークは体を良く入れ替える為に脳が入った容器に酸素ボンベと栄養素が入ったボンベを繋いでボディと隔離するように言っておいた。
ついでにボディも腕と足を胴体から切り離しておくように言った。
作業が終わったのは1時間後だった。
その間、僕らは海賊の新鋭艦を引き連れて海賊の旧型艦に行ってた。
自立型万能工兵機械に宇宙船の第一倉庫の外殻が剥がれた部分の素材を旧型艦の外殻を切り離して補修剤に使うよう指示を出していたのでその作業をしている最中だった。
自立型万能工兵機械にはそのまま作業を進めませて、俺達は脳の記憶や思考を引き出して記録するブレインスキャナーを何台も持って行き、海賊の脳を地位の高い者から順に引き出して記録する作業をしていた。
医務室に行き、医者の脳から記憶や思考を読み取っていると、医者が気がついたのか喚きだした。
医者が喚くのを止めて何かに集中している。
ふと、医者の目に俺の背後に立つアンドロイドが見えた。
その瞬間、嫌な予感がして横っ飛びに飛び退いたが少々遅かった様で腹をでかい刃物で刺された。
飛び退いていなかったら首の延髄を切られていた所だろう。
すぐに楓が来てアンドロイドを始末したが、俺の傷は浅手では無かったようで血が止まらない。
飛び退いた時に医者の口を塞いでいたタオルが解けたのか口が自由になり、叫びだした。
「僕を自由にしろ! そしたらその男も治してやる。時間が無いぞ。どうする!」
おれは高度再生医療ナノマシンを自分に投与した。
ブレインスキャナーを見ると読み込み終わっていたのでこいつの思考と記憶を読み取ってみると、こいつは医者でもなく医務室の管理人で手術などは先程襲われたアンドロイドがやっていたようだ。
一応、アンドロイドはこいつの私物になっており、こいつの意思で動かせるようになっていたようだ。
だから、海賊船のコンピューターに見逃されてしまったのだろう。
楓にその事を伝えるとその場で殺そうとしたので止める。
何も殺しが良くないとか楓に殺人を犯させたくないとかそんな理由じゃない。
この場で殺してしまうとアストラル体が自由になって輪廻に行くことになるかも知れないからだ。
その事を楓に伝えて、今この場で殺すのを止めて貰う。
その代わり、こいつは連れて帰ってアストラル体捕獲・保存容器に入れて軍に売り払う。
軍にはアストラル体の苦痛を利用した戦略兵器があるそうなので、それに使用して貰おう。
「オーナー、艦に帰れば最新の医療カプセルで治せますので気をしっかり持って下さい!」
そう、俺に声をかける楓。
俺は効きが弱くなってきた高度再生医療ナノマシンを再度自分に投与した。
◇
私は艦に帰ってオーナーの体を抱きかかえて医療室に飛び込む。すぐに医療カプセルに入れて医療カプセルを起動させる。
だが、医療カプセルは型番とシリーズ名を言うだけで何もしない。
嫌な予感がして、コンセントから医療カプセルのコードを抜こうとしたら接着されているかのように堅い。
力を徐々に少し強めながら抜いていくと、ある時点でバリッという音と共にコンセントが抜けた。
抜けた電源ケーブルには端子がなかった。
これは店頭などによく使われる外側だけ作られた偽物だ。それに型番とシリーズ名だけを言うように音声機器を付けた偽物でしかない。
あの時、私が型番とシリーズ名以外に何か起動させていれば!
後悔が私の頭をよぎる。
オーナーに本当のことを言わないわけにはいかない。
私はオーナーに本当のことを伝えた。
オーナーは一度、上を向きその後に私の方を見て継承のスペアボディを連れてくるように言った。
スペアボディを連れてくるとオーナーはアストラル体移植寸前まで継承を進めると言った。
今の体を諦めるのかと聞くと、そうじゃ無く高度再生医療ナノマシンを打って治療するしかないが、駄目な時は駄目なのでそれで死んだらすぐにアストラル体をスペアボディに移植して欲しいとの事だった。
スペアボディの入っている育成カプセルに手術させればどうかと言ったが、スペアボディが入っている為に無理だとの事だった。
他の方法は私も思い浮かばなかったのでオーナーに従う事にした。
宇宙ネットで帝国の継承院にライブで継承を進める。
只、スペアボディの遺伝子情報を取り込んでおかないと持ち主不明になるので今の意識のない内にオーナーの許可を得て育成カプセルに命じてスペアボディの血を後々を考えて注射器2本分もらう事にした。
スペアボディの注射の痕はすぐに消えた。
オーナーの治療は過酷を極めた。簡易な医療器具に繋がれたオーナーに高度再生医療ナノマシンを打って再生するか、出血多量で死ぬかのどちらかだ。
オーナーが先程高度再生医療ナノマシンを打って意識がハッキリしている内に言っておきたい事があるらしい。
「何ですか? オーナー」
「今の内に言っておくけど、もし俺のこの肉体が死んだら楓に代行としての全権限を与えるからあのタイタン社と改悪した武器をよこした軍の落とし前と海賊どもの処置は任せたぞ。後、その他の事も。それと唯一残った宝くじのスーパーパワーボールを今から言う番号でキャリーオーバーが終わるまで購入してくれ。番号は…………だ。」
「分かりました。タイタン社と軍の落とし前と海賊どもの処理とその他の事にスーパーパワーボールのキャリーオーバーが終わるまで番号…………を購入すれば良いのですね」
「ああ。……各自の落とし前は……徹底的にな」
「徹底的にですね」
「……眠くなって来た……ので、少し……寝る」
「オーナー、寝ないで下さい。……お願いです」
「ああ、……もしかして……これが死ぬって…………事なのか?」
「オーナー! オーナー!」
「…………死にたく……ない……なぁ」
「オーナー!」
……心電図の音がピーッと鳴り続けた。
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次回の内容は継承です。
タローは無事に戻ってくるのか、それとも継承でスペアボディになるのか!
スペアボディになったとしても無事に移れるのか?
次回、継承です。
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実を言うと★の方が嬉しいですが!
拙い出来ですが旧作も読んで頂ければ幸いです。
能力者が現れたと思ったらダンジョンも出てきました。これは・・・・・・商機ですね!
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