第15話 海賊
外宇宙地域に向かっている俺と楓だが、全ての道筋を自前のワープ期間で行こうと思ったらとんでもない時間が掛かる。
だから、こんな時は帝国内に張り巡らされているゲートと言う惑星よりも巨大なリング状のワープ装置で長距離を移動する。
その順番待ちをしている最中だ。
そんな中、楓は電子戦用の機器の操作や戦術、ハッキングの練度を高めるシミュレーションを行っていた。
電子世界にダイブしてハッキングする方法も勿論含まれている。
そんな中、楓は宇宙ネットに何かが発信されてるような気がする波長を見つけたが、それが何かは分からなかった。
ただ、嫌な予感は常にしていたので電子戦の準備は欠かさず行っていた。
幾つものゲートを潜って目的の外宇宙地域まであと1ワープとなった。
ここは帝国の外れだが隕石などがない只の宇宙空間なのでスピードを出せる。
疑似マイクロブラックホールのエンジンの出力に任せてスピードを出していたらある時点で船体ががたつき始めたので慌ててスピードを緩めた。
1時間で百光年以上進めるスピードだったが、一般のスピード特化の貨物船はもっと速く動くことが出来る。
新素材を使用しているこの船なら余裕の安全域のスピードである筈だった、それにスピードを出し始めて十分も経っていない。
明らかな異常だ。
メーカーにどういうことか聞くつもりでここで引き返すことにした。
引き換えして暫くすると、行きも遭遇した隕石群に突入した。
隕石群では基本的に隕石はシールドで弾き飛ばすが、大きな隕石は避ける。
そうして進んでいると、此方のレーダーがかろうじて届く範囲の前方に大きな十個の隕石があった。
楓に頼んで精査して貰うと、隕石の背後に宇宙船が隠れていた。
十中八九、海賊だと思うのですぐに撃てるように主砲にエネルギーを回した後、規則なので警告の通信文を送った。
艦内では浮遊型自立AI付きのカメラが承認申請をすませて録画に入っていた。
存在がバレたと悟った海賊は隕石の後ろから出て此方に急行して射程距離に納めようとする。
此方は軍の最新の武器なので射程範囲だ。
警告後に返答鳴く行動した場合は海賊と見なされ攻撃することが帝国法で許されている。
だから、主砲を発射させる。
主砲は3隻の海賊船を航行不能にした。
航行不能にした海賊船からワープ搭載型の脱出カプセルが1機、発射されたのは本人以外は誰も知らなかった。
残り七隻になった。ここで海賊船から通信が入ってきた。ハッキングを警戒して防壁を強化する。
それと同時に此方からハッキングできるように楓に指示を出した。
また、その際には楓の全能力を使っても良いと言っておいた。
また、次弾発射の為に主砲にエネルギーを貯めるように指示を出す。
そして海賊からの通信に出る。
「いきなり撃ってくるとはひでぇな。か弱い一般船に何しやがる!」
「ここは帝国領内だ。帝国法に従っただけだ。一般船を名乗るのなら機関を停止して船を止めろ。次弾を撃つぞ!」
もう次弾発射できるはずなのに未だエネルギーが充電されていない!
どうなっているんだ?
「ちぃっ! そっちこそ降伏するんだな。この数の差で勝てると思っているのか?」
「海賊であることを認めるんだな! 次弾発射!」
やっと溜まった次弾を発射した。
次弾は的のバリアを貫いたが、どの艦も装甲を貫けなかった。
「何故貫けない!」
俺は思わず叫んでいた。
海賊との通信は繋がったままだったのかそれを聞いた海賊は笑って言ってきた。
「わはははは! そりゃこちとら軍の最新の外殻素材だからな。それぐらいじゃ貫けねぇよ。さっき離脱した艦は旧式艦だ。ボスである俺が乗る新鋭艦には効かないぜ」
「どうして海賊が軍の最新の外殻素材なんて持っている?」
通信マイクを切り、海賊のことが本当か砲が当たった時の分析を楓にお願いして軍の最新素材か確かめて貰う。最新素材にはナノテクノロジーも使われているのでロットナンバーも一緒に調べるのは簡単だ。幸い、最新素材は量が少ないからロットナンバーが分かれば持ち主が分かる。
「どうしてだろうな。今降伏するか、エンジンとコンピューターと武器を置いて脱出カプセルで逃げ出せば負わないでやるぜ」
「そこまで言っといて海賊が見逃すはずがないだろう! おおかた手間を省きたかっただけだろ。それに何故海賊がそんな物欲しがる?」
「
そう言えば宇宙船の形が揃っている。同じメーカーが作った証だ。
そこに楓から連絡が来た。通信のマイクを切る。
「オーナー。調べた結果ですが軍の最新素材で間違いありません。それと持ち主はオーナーになっています」
やっぱりかと思った瞬間、主砲や副砲の武器関連が電子戦装備を除いて使えなくなった。至急原因を楓に電子戦をしながら調べて貰う。
答えは1秒もかからずに分かった。
楓の言うには軍の兵器のプログラムを解析した結果、軍や帝国に砲を向けないように向けた時には武装が使えなくなるような仕掛けが施されているとの事だった。
この場合は希少な軍の最新素材を使っている相手は軍しか居ないという判断らしい。
ガバガバである。
その上、通常時にも砲撃するエネルギーが溜まるのに2倍の時間が掛かるように設定されていた。
楓に電子戦で相手の宇宙船を全て全力で乗っ取れと改めて命令して、海賊との会話を再開する。
「取引って事はこの艦に詳しくてお前らの艦隊を用意できる奴ときたら1つしか浮かばない。この艦のメインを務めたメーカーのタイタン社だろう!」
「ほう。そこまで分かるか。まぁ、冥土の土産に教えてやればその通りだ。ついでに教えといてやるが、その艦には軍の最新素材は使われてないからな」
分かっては居たが堪える事を海賊は言い放った。
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不穏な終わり方だけど次回の内容は他界です。
タローが!タローが!とんでもないピンチだ。下手すれば終わるよ!
次回、他界です。
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