第7話 楓のわがまま
歓迎会から二日経ち、教習場の整備日が来た。
言われた通り、午後三時前には座学も実習も終わった。
待ち合わせの為に合宿場の寮を出ると何故か楓が待ち受けていた。
「どうした、楓。何か用か?」
嫌な予感を感じながら聞いてみる。
「今日でしたよね、スペアボディの打ち合わせがあるのは! 私も同行します」
案の定、嫌な予感は当たったようだ。勘に従うと連れていけば何かヤバい事になると勘が言っている。
「其れはこの前、メールで断っただろう?」
一先ず穏便に断った事を言ってみる。
「そうですね。でも、考えてみて下さい! スペアボディというのはバイオロイドの設計に近い物があると思いませんか?」
「う!それはそうだが……」
理屈で攻められると弱いな。だが、勘はダメだと言っている!
「それで活躍出来るのがバイオロイドである私の存在です。私が居れば、何処まで攻められて何処までダメなのかがアドバイス出来ます!」
「それはそうかもしれないが……」
理屈でぐいぐいと攻めてくるなぁ。だけど理屈じゃないからなぁ。
「何をそんなに渋っておられるのですか? メリットはあってもデメリットは思い当たりませんが?」
こうなったら本当の事を言うしかないな。
「……理屈じゃないんだ。楓を連れていくと何か不味い事が起こると俺の勘が言っているんだ!」
本当の事を言った。そう、理屈じゃないんだよ理屈じゃ。
「勘なんて曖昧な物を信用しないで下さい! 理屈で考えて下さい!」
いや、理屈で考えてたら死んでた場面が何度かあるんだが、やっぱり理屈じゃなくて勘の方が信頼出来るな!
「これまでも勘に従ったからこれまで生きてこられたんだから、勘は信用出来る!」
「今までは信用出来たかもしれませんが、今回は信用しないで下さい!」
いきなり理屈じゃなくて感情で言ってきたぞ! これは手強いぞ。
「今までの積み重ねで信用出来た物を今回だけ信用するなって言われても無理!」
「そこを何とか!」
「無理な物は無理!」
そう言って俺は楓から逃げ出した。
暫く走っていると、人にぶつかった。
「すみません。急いでた物で。大丈夫ですか?」
と、ぶつかった人に謝り心配すると……。
「大丈夫ですよ。このお詫びは私を一緒にスペアボディの打ち合わせに連れて行ってくれる事で良いですよ!」
ぶつかったのは楓だった。
なんで? 確かに楓から逃げたはずなのに!
俺はもう一度逃げ出した。
逃げ出した先ではまた楓が待っていた!
「なんで逃げ出した先々に居るんだ!?」
すると楓はうっすらと笑ってこう言った。
「私は3000万馬力とその再生力を出せるんですよ。先回りなんか簡単です♪」
「ひ、卑怯な!」
「何と言われようがこの私から逃げる事は出来ませんよ!大人しく打ち合わせに連れていって下さい!」
「だからそれは無理!」
「何でですか! 悪い事などしませんしメリットも言った通りですよ? 納得いきません!」
「それであの悪寒と嫌な予感は……楓、お前何かよこしまな事を考えているだろう」
「え? よこしま! な、何ので事でしょう? み、身に覚えは無いですねぇ」
……これは身に覚えがあるな!問い詰めてやるか!
「身に覚えがなかったら何でどもるんだ? 身に覚えがあるから度盛るんだろう? 良いから吐け。それによっては考えてやるから!」
「うう! 嘘ついてませんか? 本当に考えてくれるんですか?」
「ああ! 本当に考えてやるから言ってみろ」
「じ、実はオーナーの子供の頃や昔の写真が会ったら見てみたくて打ち合わせに同行したいのです!」
「…………なんというか、聞いたらくだらない理由で脱力したわ。 まぁ、素直に言ったから打ち合わせには連れて行ってやるけど暴走するなよ」
「良いのですか? 暴走しません! よい子で居ます」
「それはそうと、お前の3000万馬力の力だが、身の危険や自衛に非常事態以外の普段は1万馬力に抑えて置けよ。これは命令だ」
「分かりました。力を抑えておきます」
「ああ! くだらない騒ぎの所為で時間が無くなってきたじゃないか。学校に行って予約したポーターを借りるぞ!」
「分かりました~!」
俺達は学校に行き、予約してあったポーターを借りて宇宙港に向かった。
宇宙港に着いて暫くすると、待っていた定期便が丁度入ってくる所だった。
俺は会社名の入ったプラカードを持って胸の前に掲げる。
暫くすると、プラカードに気付いた女性と男性が此方に来た。
「タロー・コバヤシはあなたですか?」
「はい。私がタロー・コバヤシです。此方はバイオロイドの楓と言います。あなた方は?」
「スツーカ株式会社のクローンデザイン部営業担当のリュナ・コワンと言います。此方の彼が技術担当のゴン・トゴーです」
「よろしくお願い致します」
「此方こそよろしくお願いします」
「では、早速宇宙港で会議室を借りて打ち合わせしましょうか?」
「此方は問題ないですが、長旅で疲れていませんか?」
「大丈夫ですよ。お気遣い有り難う御座います」
「問題が無ければそれで良いのですが。……それでは、会議室を借りて打ち合わせをしましょうか?」
「「はい」」
そうして俺達は打ち合わせをする事になった。
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次回の内容は楓が大人しくする?
するはず無いよね!
打ち合わせ。
ご期待あれ!
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