第16話
「それだけのことをしたのでしょう? 第二王子殿下と第三王子殿下、二人共貴方の弟なのに自分の野望の道具として利用したり誘拐するなど酷すぎますでしょう?」
「お、俺は王太子に……」
「その立場にふさわしくないから貴様は地べたを這いつくばっているんじゃないか。多くの人々に迷惑ばかりかけて自業自得じゃないか。隣で咽び泣く妻のようにな」
「…………」
マグーマに反論できる余地もなかった。確かに多くの人々に迷惑をかけた自覚はあったのだ。ティレックス伯爵となってから日常が一変したことで嫌でも部下や領民のことを考えさせられるようになったのだ。そんな環境の変化の過程で自分のしてきたことを嫌でも反省することもあった。
しかし、そんな日常から抜け出したいという気持ちのほうが強くもあった。だからこそ、王太子に戻るために強硬手段に出てしまったのだが結果的にこの有様。
「~~~~!?」
王太子になった弟に手紙を出し続けて呼ばれてきてみれば呆れられ、幼い弟を利用して自作自演の功績を挙げようとしても事前に阻止される。あまりにも失敗続きで馬鹿にされるしまつ、マグーマにとっては屈辱以外の何でもない。
「さてと、まずはお二人を縛りましょうか」
「い、嫌だあああああ!!」
あまりの怒りに、ついに半狂乱になったマグーマは痛みを堪えて無理やり立ち上がって剣を抜いた。リリィに切りかかるつもりのようだが、体中を切り刻まれたその体では立ち上がるだけでも大したもの、走ることはおろか上手く歩くのも無理があった。それ以前にこの国最強の騎士ジェシカが眼の前にいるのだから、動かずに大人しくするべきだった。
「……お嬢様に手出しできんだろうがあまりにも見苦しい。貴様のその心にとどめを刺してやる。これで最後にしてくれる。必殺カラミティ・ストライク!」
ジェシカはまるで竜巻のように回転しながら、次々と斬撃を繰り出した。マグーマは悲鳴を上げながら地面に叩きつけられ、動かなくなった。
「ひっ、うぇああああああああ!!??」
マグーマは回転しながら迫ってきたジェシカに対する恐怖が頂点に達して惨めな恐怖の叫びを出してしまう。そして、気づいた時にはマグーマは服がボロボロになり、剣もズタズタになり、髪と眉の毛も切り落とされていた。
「あ、あ……」
「ふん、前にもまして惨めな姿になったもんだな。これでは人前に出られんな」
「っ!? お、俺の服が髪が!?」
「あらあら、髪と眉の毛が切り落とされてハゲ頭の眉無しになられましたわね。これでは恥ずかしくて人前に出れないでしょうね」
「そ、そんな……俺は、ここまで辱められるというのかぁ……?」
マグーマは意識を失い、地面に倒れ込んだ。生気を失ってピクリとも動かなくなり、言葉すら発することも無くなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます