第14話

「ははははは! こいつらは俺が雇った傭兵集団クオークスだ! 俺の領地の周辺にいる傭兵たちの中でも優れた実力者で構成された集団だ。いくら最強の女騎士でもこれだけいればかなわねえだろ!」


「そうよ! これであんたたちも終わりよ!」



屈強な男たちに周りを囲まれるリリィとジェシカだが、落ち着いて状況分析する。



「ジェシカ、行けそう?」


「問題ありませんよ。貴女の笑顔を守るためならば、この程度の苦境などたやすく切り抜けます」



不利な状況でも余裕を崩さないリリィとジェシカが気にくわないマグーマは、頭に血が上る。



「ふん! 生意気言うんじゃねえよ、やっちまえ! あの女どもを叩き潰せ!」


「やっちゃいなさい!」


「「「「うおおおおお!」」」」




マグーマの指示で傭兵集団クオークスたちが襲い掛かってくるが、リリィを守るためジェシカは闘志に燃え、立ちはだかる。



「ジェシカ」


「はい。愚か者どもを地に伏せてやりましょう。我が剣術、とくとご覧あれ! はあああああ!!」


「「「「!?」」」」



剣を手に持ったジェシカは黒ずくめの男たちを動きが読めない速さと独特な自己流の剣術であっという間に倒してしまった。その立ち振る舞いは、強風が吹くような速さで美しいと思ってしまうほど見事なものだった。もっとも、それは守られる側のリリィだけの感想になる。



「素晴らしいわジェシカ」


「もったいなきお言葉です、お嬢様」


「そ、そんな馬鹿な……俺が苦労して見つけた傭兵団たちがあっという間に……!」


「嘘でしょ……」



マグーマは目を丸くして戦慄する。たった一人の女騎士に多くの傭兵の男たちがあっという間に倒されてしまうとは思わなかったのだ。ジェシカの強さは有名だし身を持って知っている。だからこそ対策もしていたというのに。



「我が剣術スピニング・トゥ・フォークは、素早い回転と突きを組み合わせた技で、数多くの相手を同時に相手にすることができる。正規の騎士の剣術を極めているならまだしも辺境の地で見つかるような傭兵共なら叩き潰すのに難はない」


「そ、そんな……」


「ま、まだよ! 出てきなさい! 暗殺集団ゴキスター!」



アノマの合図で馬車の方から虫の仮面を被った黒装束の集団が現れた。先程の傭兵集団よりも数は少ないが全く違った雰囲気を感じさせる。



「こんなこともあろうかと! 王都に入ってすぐに暗殺集団を雇ったのよ! あんたたち、あのいけ好かない銀髪女をやっつけちゃって!」


「「「「「承知!」」」」」



アノマの命令に従い、リリィに黒装束の集団が詰め寄ってくる。だが、結果は変わりそうもない。

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