終~そしてまた旅に出るまで(第一部完)

 数日後、くだんの依頼者が黒竜王に面会を求めたそうだ。

 王が言っていた通り、その人は安生町の元長官だったらしい。

 私は政務に一切関わらないので、これは後から聞いた話である。

 そもそもあの依頼は五年も前から出されていたものだったらしい。安東村の村人の羽振りがよくなったことで、依頼者はその理由を調べたのだという。けれど場所は辺鄙なところだし、調査にどれぐらい時間がかかるかもわからない依頼ということで依頼を受ける者が長い間いなかったのだそうだ。

 それを王が受け、植生の変化は鳳凰の定住にあると原因を突き止めた。そしてその鳳凰は今年の冬に泰山へ戻るという。

 依頼者は王に礼を言うと共に、例の木の葉(薬草)を扱う市場の鎮静化を求めたようだ。

 木の葉の価格は戻し、余剰分は国が多少安い値段で引き取るという方法である。そうすれば薬が減るということもなくなるし、他の地域の薬草摘みの従事者も助かるというものだ。

 短期的な鎮静化はそれでいいが、あの地域の木の葉の生産が落ちた時が問題である。

 それは私が提案した、周囲の薬草を採って売ることで生活を維持できるよう、薬草に知識を持つ者を派遣することにしたそうである。

 やはり薬草の知識を持つ者というのはあまりいないらしい。その知識だけでも財産になるだろうとのことだった。

 もちろんこれは一朝一夕でできることではないので全く苦労しないということはないだろうが、みなが楽しく暮らせるよう、王が考えてくれたことが嬉しかった。

 当然だけどこれから課題は出てくると思う。けれどそれはあの村や、周辺地域の人たちが考えるべきことだった。


「このようになったが、そなたとしてはどうか」

「難しいことはわかりませんけど、よかったのではないでしょうか。氷流ビンリュウ様、本当にありがとうございます」

「そなたが喜んでくれるならそれでいい」


 黒竜王は王だ。私たち民のことをよく考えてくださっていると思う。


「みなも、喜ぶと思いますよ」

「そうか」

「はい」

「まだしばらくやらねばならぬことはあるが、終わったらまた旅に出よう」


 そう言ってくれるのもとても嬉しい。


「約束ですよ?」

「ああ、約束だ」


 そうして私達は唇を重ねたのでした。


 終幕



また黒竜王と梅玲は旅に出ます。玉玲も一緒です。

玉玲を見初める者が出てきたり、それに明和がやきもきしたり、他の国の王が訪ねてきたりとこれからも様々なことが起こる予定ですが、今はここで終わります。(「嫁入りからのセカンドライフ」コンテストに参加の為、六万字未満で一部完結とさせていただきます)

お付き合いありがとうございました!


後日橙紅視点のSSを書きたいとは思ってますー。よろしくー

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