第15話 訪ね人
知り合いのA夫妻の体験談。
A夫妻は今から約5年、昔住んでいたアパートから今の家に引っ越した。
引っ越しの理由は様々あるのだが、子供も大きくなったことだし、アパートでは手狭であるため、夫の職場や最寄り駅から近い場所にある手頃な一軒家に移り住むことにしたというのが一番の理由だった。
A夫妻が家に住み始めて数ヶ月後の夜のことである。この日はA夫妻の息子の5歳の誕生日であり、お祝いの外食から帰ってきて、息子を寝室で寝かしつけていたときだった。
もう夜も0時を過ぎようかという時、玄関のチャイムがなった。
夫が応対しようとしてドアを開けようとしたが、すんでのところで妻が止めた。
『こんな時間に訪ねてくる人なんて普通は居ない』
妻のその言葉にはっとなり、恐る恐るドアスコープから外をみた。
誰も外にはいなかった。
しかし、チャイムはなり続けている。
A夫妻は気味が悪くなり、寝室か居間に移って警察に連絡しようとした。
その時
『ねぇ、開けて』
外から息子の声がした。
おかしい。息子は今ベッドで寝ているはずだ。
それに、その声には抑揚や感情というものが全く込められていない。
A夫妻が驚きのあまり固まっていると、今度は玄関の扉がバン!バン!と音を立てて鳴り始める。
まるで、複数人がドアに手を叩きつけているような激しい音。
今にもドアがひしゃげてしまうのではないかという音の合間に、息子の声で『開けて、ねぇ、開けてよ』と呼びかけられる。
恐ろしくなったA夫妻は、そのまま二階の寝室に避難し一夜を震えながら過ごした。
この出来事は一度だけで、今はもうなにも起きていないとA夫妻は言う。
しかし、未だに気味が悪く、玄関には盛り塩を置くようにしているそうだ。
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