第13話ドライブ
私の友人のU氏の体験談。
今から数年前、U氏は大阪に恋人と住んでいた。
U氏と恋人は趣味が同じであり、お互い休みの日は古道具屋や蚤の市、自然豊かな観光スポットなどを巡ることが好きだった。
ある日のこと、ひさびさに恋人と二人で休みのタイミングがあったので、神戸の海沿いの街へドライブもかねてアンティーク品の並ぶイベントを見に行く事にした。恋人がレンタカーを借りて来てくれたため、目的の街まで山沿いの道を走っていた。
事前に調べた時、その道を使えば1時間ほどで目的地の海沿いの街へ付くことがわかったので、二人はカーナビの指示に従い、山道を迷うことなく走りながら談笑していた。
どれくらいたったろうか。
U氏はある違和感に気が付いた。
1時間程度は走ったはずなのに、一向に目的地である海沿いの街へつかないのだ。
それどころか、まるで誘い込まれるように、どんどんと山道の奥深くへと入り込んでしまう。
山深く、コンクリート舗装も剥げたような悪路が広がり、一直線だったはずの道がいくつかの方向へ枝分かれしていた。
カーナビは無機質な声でこの先の進行方向を示しているが、どう見ても、この先に街への道が続いているようには見えなかった。
U氏は流石におかしいと思いカーナビを確認した。
すると、カーナビの目的地は、いつの間にか古い霊園に変わっていた。
U氏と恋人はなんとかナビを設定し直し、迷いながら山道を降りたという。
『でも、これの本当に怖い所はね』
あれほど山深くの道に入るまで、おかしいと気がつかなかった事だとU氏は言う。
目的地もいつのまにか霊園へ変わっていたし、今までそれにたいして恐怖心を抱くこともなく、なんの疑問も抱かず普通に進もうとしていた。
気がついて良かったけど、本来ならすぐにわかるような違和感とか不気味さにあれだけ気が付かなかった、カーナビを設定し直すまで恐怖心を抱かなかったことが一番怖い
U氏はそう言って締めくくった。
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