第13話 戦争は終わった後が大変です。俺は東奔西走!(その2)

 「ティグ、普段はポーションはどうやって手に入れてるんだ?」

「ああ、ポーションの行商人がいるんだ。梅レベルの安ポーションは、工場で大量生産してるからな。相場より値段が安ければ、まとめて購入するんだ。」


この世界にも製薬会社があって、工場でポーションを量産してるのか。

目からウロコだ。


「だが、残念ながら今、村には行商人はいない。」

ダメか。では他にポーションを手に入れる方法は? ···········


 村人や騎馬乙女たちが、ワキトス先生の指示で治療を開始していた。

突撃娘が、敵兵の一人に止血を行っている。

「色っぽい姉ちゃん、またあんたに会えて感激だ。俺、もう死んでもいい。」

「せっかく治療しているのに、勝手に死ぬな!」

突撃娘は敵兵の頭をポカリとなぐった。

おいこらっ、本当に死ぬぞ!



 そこで俺は閃いた。

「おいティグ、そういえばトナーリ村にもポーションが備蓄してあるんじゃないのか?」

「ああ、あるはずだ。トナーリ村は近くの鉱山で、人夫として働いて、生計をたてている村だからな。当然、事故も多い。松、竹クラスも含めて豊富にあると思うぞ。」

「それを持ってこれないか?」

「いや、それは難しいと思うぞ。攻めてきたのはトナーリ村の全軍だ。今すぐ使者を送って、OKだったとしても、こちらに送る荷馬車を仕立てられるかどうか ···········」

「そうか、わかった。それなら俺が行く。俺がダンプで乗りつけてポーションを持ってくる。」

「待った、リュージ。おまえが元エルフの鉄竜で向かえば、トナーリ村は大騒ぎだ。みんな逃げ出すかもしれんぞ。」

「それでも俺は行く。今は一刻一秒を争う。一人でも多く助けるんだ。」

「 ········· そうか、魔王はどうしても敵兵まで助けたいんだな。わかった。それなら私が馬で先導してやろう。先に話をつけるから、合図をしたら村に入って来い。」

「それはありがたい、助かる。よく考えてみたら、トナーリ村がどこにあるのか知らないんだった。」


 ティグは、やれやれという表情で、両手を拡げて言った。


「まったく、おまえは手間のかかる魔王だ。そして魔王らしくない、優しい魔王だ。でも、私はそんなリュージが嫌いではないぞ。そうだ、何なら私がおまえの本業を手伝ってやろうか?」

「本業? なんだ、それは。」

「決まっておろう、もちろん世界征服だ。」

「お断りだ! 俺は平和を愛する地味な大学生なんだ。魔王なんかにされてたまるか!」



 こいつのド天然は変わらない。

よく考えてみたら、こいつは俺の平和な異世界生活(?)をブチ壊すトラブルメーカーだ。

でも、ここまでくれば戦友だ。

どんな未来が待っているのかわからないけど、とにかく走るしかない。


「リュージ、急ぐのだろう? ではすぐに動くぞ。向かうはトナーリ村だ。」

「ああ、わかった。行くぞ!」










 


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