第11話 救いの手
「ねぇ神様…エルシドとセシリアのその後ってどうなったのかしら?」
「うむ…エルシドの頭蓋骨を持って行方をくらましたセシリアはとある最果ての教会にたどり着いたようだ」
「そこで教会に来る人々に愛する事の大切さを解いていたそうだよ」
「へぇ…それでそれで?」
「最終的に彼女は聖女と呼ばれ死後崇められる存在になったようだ」
「聖女セシリアか…波瀾万丈な生涯だったけど最後は救われたのね」
「彼等の魂は転生して現在は夫婦として過ごしているよ。君も知ってる人物としてね」
「え?そうなの?」
「エルシドはリンデロイとして、セシリアはローズマリィとして転生したようだ。最もその前から何度も生まれ変わって何度も出会いを果たしてるようだけどね」
「何度生まれ変わっても出会えるなんてロマンチックね」
「それだけ彼等の魂の絆が深いと言う訳さ」
「それでアレクセイの魂はどうなったのかしら?」
「彼の魂は生と死の狭間で今だに彷徨ってるよ…彼の犯した罪はそれほど重いと言う事だね」
「そんなの可哀想だわ…救う手立ては無いの?」
「ある事にはあるけど危険だよ?」
「それでも聞いたからには彼の魂を救いたいわ」
「わかったよ…彼の彷徨ってる場所へ案内しよう」
○○○○○
アレクセイの意識は時折戻り辺りを確認していた
水の中に沈んでゆらゆらと漂っている
(俺は何処へ行けば良いのだろうか…)
長い月日が流れ、ある日突然彼の腕を掴む人物が現れた
気がつくと見知らぬ場所に寝かされていた
「ここは何処?」
「気が付いたのね!良かった…」
アレクセイの前に見知らぬ女性が居た
「ここは死後の世界よ…生と死の狭間に貴方が居ると聞いて探し出したの」
「そうなのか…」
「長い間漂っていたからすぐには起き上がれないだろうからゆっくりすれば良いわ…お腹が空いたら声をかけてね」
死んでるのにお腹が空くのか?
しばらく経ってアレクセイは恐る恐る起き上がった
ふらふらと歩いていくとさっきの女性と別の男性が会話していた
彼等はアレクセイに気づくと笑顔でこう言って来た
「起きて来たのね!お腹空いてない?」
アレクセイのお腹がグゥ〜と鳴った
隣にいた男性がアレクセイに肩を貸してくれた
「起きたばかりだから移動が大変だろう?俺に捕まれば良い…美味い飯やがあるからそこに行こう」
連れてこられたのは『極楽亭』と書かれた看板がある居酒屋だった
「キタ〜なんか作って!そうだなぁ…大根の煮物食べたい」
カウンターに居た男性が笑顔で迎えてくれた
「いらっしゃいませ!それなら牛すじと大根の煮物がありますよ…日本酒で一杯如何ですか?」
「良いね〜それとなんか適当に見繕って〜」
テーブルに着くとお通しの小鉢が3つ目の前に置かれた
「今日はひじき煮と金平牛蒡と蒟蒻のピリ辛煮です」
「わ〜どれも大好き❤ほらほら遠慮しないで食べて」
アレクセイは恐る恐る口に運んだ
初めて食べる料理に戸惑ったがどれも美味しくてホッとするものばかりだった
牛すじと大根の煮物には蒟蒻も入っていて少しピリ辛の味付けがクセになる一品で一緒に運ばれて来た日本酒とよく合うのだった
アレクセイは無言で貪るように食べた
そしていつの間に頬に涙が伝ってテーブルにこぼれ落ちた
「貴方はもうしがらみから解放されたわ…自由を手に入れたのよ」
アレクセイの魂はやっと安堵の地に付けたのだった
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