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 私の初めての登校日。歩いて10分程のお寺の門の前。登校班の集合場所なのだ。昨日のうちに、その班長さんという 北川泉希きたがわみずきちゃんの家にばっちゃんに連れられて、挨拶を済ませていた。やっぱり、6年生で背が高い。初日だからとばっちゃんも付き添ってくれていたのだけど、泉希ちゃんは、私の姿を見るなり、直ぐに傍に寄ってきてくれた。泉希ちゃんは先頭で旗持って歩くんだけど、私には2番目で歩きなさいよって言ってくれた。全部で10人程で、今年1年生の女の子2人も居て、1週間位はその保護者も後ろから付いて歩くらしい。そして、一番後ろは 水屋利勝みずやとしかつ君。同じ、6年生だ。


 校門に着くと、教頭先生が、もう一人の男の先生とみんなを迎えていた。すると、教頭先生が泉希ちゃんに


「北川さん 水島さんを 一緒に連れてって あなた達 同じクラスだから いろいろと教えてあげてね 靴箱も名札あるはずだから」


「えっ そうなんですか わかりました 実海ちゃん 同じクラスだって 良かったわね」


 そして、6年1組。担任の先生は不忍仁斎しのばずじんさい先生。古臭い名前なんだけど、一応、学年主任で、ちっとも笑わないのだ。ちょっと、近寄りがたい。泉希ちゃんは、歩いている時も前後ろなんだけど、直ぐに親しげに話し掛けてきてくれて、私は、最初から緊張することも無かったのだ。もしかすると、あの教頭先生という人が気を使って、段取りしてくれたのかも。


 それから、泉希ちゃんはずうっと私に寄り添ってくれて、仲の良い友達なんかにも紹介してくれて、すぐに打ち解けられていったのだ。すると、泉希ちゃんは学級委員に選出されていた。クラスの中でも背も高いほうで、しゃべり方がハキハキしているから、おそらく、勉強も出来るんだろうなと思っていた。髪の毛も長くてポニーテールにしていて、座っている姿勢も真直ぐなのだ。


 始業式なので、その日だけ同じく登校班で集まって下校することになっていた。そしたら、帰って居る途中で泉希ちゃんが


「ねぇ みゅうみゅん ウチに来ない 一緒に遊ぼー」 もう、私はみんなに みゅうみゅんと呼んでと言っていたのだ。


「えっ いいの? それでも 家の人に言わないと・・・」


「うん お昼 食べたら 登校の場所で待ち合わせしよっ 1時にな! みゅうみゅん・・・長いなぁー みゅん でええか?」


「うん 」 泉希ちゃんは笑いをこらえているようだった。そのまま、別れたのだけど、やっぱり しゃべり方 変なのかなって・・・。


 家に着いて、事務所に「ただいまー」って声を掛けると、事務所に居た数人から「おかえりー」の声が返ってきた。私は、びっくりして、ええー こんなのー 初めての経験。ばっちゃんが寄って来て


「おかえり 実海ちゃん どうだった? 学校は」


「うん 直ぐに 友達できた 泉希ちゃんも親切にしてくれてー それでさー お昼食べたら、泉希ちゃんとこ 遊びに行っていい? 誘われた」


「そうかい いいよー 冷蔵庫にいわし煮たのとだし巻きが入っているから お漬物も良かったら それと、おみおつけは鍋に あっためるんだったら、陶器のお茶碗でチーンしてな 一人で出来る? ばっちゃん等 もう 少しかかるからー」


「はぁーい 大丈夫」


「それと 門限は5時 だよ」


「ハイ! 了解!」と、私が手を敬礼したものだから、奥で笑い声が聞こえていた。


 学校に行くときはハーフパンツだったんだけど、私はジーンの短パンにハイソックスに着替えていた。泉希ちゃんも朝はそんな風だったから・・。待ち合わせの場所には泉希ちゃんが先に待っていてくれた。


「ごめん 遅くなって・・」


「ええんよ まだ 時間前やん ほな いこかーぁ」


 そこから10分もかからなかった。この前、じっちゃんと歩いた散歩道。昔の街道だという。昨日、ばっちゃんに連れられてきた時は、もう暗くてよくわからなかったのだけど、その道沿いに泉希ちゃんの古そうな家が・・・表はガラスがはめられて、その中に金属とか皮に細工がしてある飾りみたいなものが並べられていた。その奥に二人並んで、机に向かってなんかしていた。


「お父さんは、銅の細工、お母さんは皮細工なのよ 後で、紹介するね ウチも小学校に入る前に京都からここに越してきたのよ」

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