第三二話 反逆者vs王国最強の盾②
ファルカオは鋼と化した肉体で俺に拳を繰り出すが因果律無効の魔眼で軌道が逸らされていた。
「無駄だ」
俺は後方に跳んで、宙を斬ろうとするが、
「させん」
ファルカオが距離を詰めて、腕で剣を受け止める。
さすがに速いな。
ファルカオは当たらない拳を突き出し続け、そよ風が俺の体を撫でる。もはや、距離を空けることは困難だ。
「ぬっ!」
ファルカオは腕を交差させて俺の袈裟斬りを受け止めた。俺は魔眼の力を使わずに膂力のみで相手を攻撃していた。
「面白い、わしを正面から斬りつけようとするとはな!」
「お前も攻撃が当たらない癖に攻撃してるんだ。人のことは言えないと思うが!」
青の将軍が俺を殴ろうとする度に、俺は拳に剣をぶつけ続けた。
剣と拳がぶつかる度に周囲に鈍い音が響く。
「へへっ」
俺はついついニヤケてしまう。
魔眼のおかげとはいえ、あの青の将軍と渡り合っているという事実に舞い上がっていた。
今までの下積みが、努力が、意味があったと、報われた気がした。
「埒が明かないな!」
俺は青の将軍の横に回り込んで横薙ぎを繰り出す。その軌道は鎧に向かっていたが、
「そう上手くはいかぬぞ」
青の将軍は手の甲で防御する。
それから俺とファルカオは横へと回り込みながら、攻撃の応酬を続けた。
「す、すげえ」
「馬鹿! ファルカオ様を応援しろ」
「あれが魔力が無い人間なのか……なんでファルカオ様と渡り合えるんだ?」
周囲の兵士達も真剣な面持ちで戦いを見守っていた。
「ん⁉」
俺は唸る。ファルカオが後方に跳んだからだ。
魔眼による遠距離の斬撃が有効になったかと思ったが、
「『メタル・ライジング』」
ファルカオが両手を地面に当てて、聞いたことない魔法を唱えた。
名前からして『鋼属性魔法』の類だとは思うが――――っ⁉
「来る!」
俺は足元の揺れから下方からの攻撃を察知し、覚醒した脳の空間把握能力によって攻撃してくる物体の大きさを把握、魔眼の力を発動させる。
すると、鋼鉄の突起物が地面から突き出してきた。しかし、その突起物は俺に当たることはない。
「これでも駄目か⁉」
ファルカオは動揺しながらも、鋼鉄の突起物を出現させ続ける。
「…………」
しかし、佇んでいる俺に攻撃が当たることはなかった。
そのまま俺は剣を振り上げると、
「これならば! 『メタル・ハンマー』!」
ファルカオが魔法を唱えて上空に鋼鉄のハンマーを顕現させる。また、魔眼の力で攻撃の軌道が逸らそうとするが、
「俺を狙っていない……!」
そのハンマーは俺には向かわず地面へと打ちこまれた。足場を崩された俺は前傾姿勢になって倒れそうになる。
「『インペリアル・バースト』!」
後方――上空からファルカオの声が聞こえる。足場を崩した瞬間、上空へと飛んだようだ。
瞬く間に俺の視界は白い魔力の塊に覆われた。
「やはり効かぬか」
俺の背中に向かって『インペリアル・バースト』を放ったようだが、それすらも把握していた俺は魔眼の力で無傷の状態だった。
「ふぅ……」
俺は地面に手をついて、立ち上がると、ファルカオが目の前に降り立つ。
意表をついて攻撃し続けているな……正直、いつまで相手の攻撃に対応し続けれるか分からない。
俺は不安を募らせながら、真っ向から来る拳の軌道を逸らす。
「ぬぅ!」
ファルカオはもどかしさを感じているようだ。
俺達は再び剣と拳が交差する状態になった。攻撃はまともに当たっているが相変わらずダメージは与えれない。
体力勝負になってしまえば不利だ。例え俺がそれで勝ったとしても、他の将軍と戦える体力が残るとは思えない。
俺は全力の横薙ぎを食らわすが、ファルカオはしかめっ面をしながら拳で受け止める。
まだだ……もっと体重を載せて、風のように!
「うおおおおおおおおおお!」
気合を吐きながら、体を左右に振って、剣で猛撃し続けた。
対して、ファルカオは腕を立てて防御する。彼の顔は次第に苦々しい表情となっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます