第二五話 これからの行動について
相変わらず俺はセラの部屋におり、ベランダに繋がるドアの前で外の景色を見ながらセラと話し合う。
本来ならセラは貴族学園に行っている時間なのだがクノクーノが死んだことで一時休校となっているらしい。
「この城、爆破しますか?」
今後のことについて話していると、セラが極端な提案をしてきた。
「それで王族が死んでも貴族共が新たな王になろうとして争いが生まれるだけだ」
「その戦いで勝てばいいのですわ」
俺はふむ、と
マッチポンプ的なやり方だが、それで国が生まれ変わるなら悪くないと思ってしまった。しかし、その戦いで罪の無い平民が何人死ぬのか分からない。
「それも一つの手だが、爆破ごときでこの国の軍は全滅すると思うか?」
俺は唯一の懸念点を挙げる。
「……どう考えても、全滅は不可能ですわ。少なくともあの将軍達に傷を付けることは不可能かと」
この国には周辺諸国に名を轟かせる五人の将軍がおり、全員、鳴り物入りしたクノクーノと違って実力で将軍になった連中だ。
「やはり、そう甘くはいかないな……戦力が欲しい」
「人手ということですか?」
俺は前髪を掻き上げながら考えごとをして口を開く。
「人手もそうだが魔道具や呪文書も欲しい、とにかく王国を潰すにあたっては欲しいものはいくらでもある」
そう言って、セラの方を向く。すると、セラはつま先立ちで腕を伸ばしてきて、俺の前髪を整え始めた。まあ……気にしないでおくか。
俺は引き続き、喋り続ける。
「そもそもずっとここにいることはできない、王国の全国民に俺と言う存在がいることを知らしめたうえで、王国の手が届かない場所に移動したい」
今後の方針について語ると、俺の前髪を整え終わったセラが腕を組んで口元に手を当て、
「存在を知らしめるのはリスクがありますわ」
眉間に
「それでもやらなければならない、俺が苦しんできたって知らしめるところから変革を始めないと意味が無い。俺自身が王国に虐げられた人々の希望になるために必要なことだ」
「分かりましたわ……わたくしもついて行きます!」
力強い言葉を言ってくれるセラ。
「今更だが、本当に付いて来る気か?」
「はい」
「なら、もう何も言わない」
俺はセラの意思を再確認した。たった一言だったが、不思議と熱い信頼と忠誠を感じた。もっとも、彼女の心情はそれだけじゃないかもしれないが。
「そういえば王国の手の届かない所に行きたいと言ってましたわよね」
「そうだ」
「なら、いい方法がありますわ」
セラは得意気な顔を見せる。俺は首を傾げるが、とりあえず、セラを当てにすることにした。
それから俺達は深夜になるのを待って、移動を始める。
「思いのほかザルだな」
「わたくしの透明になる魔法を使っていますので」
俺達は王城の外に広がる庭園を歩いていた。巡回している兵士もいるが俺達は『プリズム・フィルム』という魔法のおかげで透明になっているので気付かれることがない。
「おい、あまりくっつくな。何かあったときにすぐに動けないだろ」
俺とセラは透明なので、離れて行動すればお互いを見失うため、なるべく近くにいたのだが、セラは俺の腕にしがみつきながら歩いていた。
「だって、ずっとファル様とこうやって歩きたかったですもの」
「今じゃなくてもいいだろ」
「今じゃなかったらいつでもいいんですの?」
「そりゃ、いいに決まってる」
「やった」
透明なので顔が見えないが、微笑んでそうなセラはより一層、俺の腕に強くしがみついた。
セラが言うには王国を脱出するのにうってつけのものが王城の離れにある宝物庫にあるらしい。俺達はそこへ、回り道をしてから向かうことになった。
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