夏時 白絹の戯れ

梅林 冬実

夏時 白絹の戯れ

階段から下りる君を僕らは眺める

純真な白絹に身を包み

想い人の腕をとって

淑やかにヒールを操る


人々はみな笑顔だ

きらめく2人の姿は希望に満ち溢れ

そんな2人を見つめる誰もが

瞳を輝かせている


君は愛する人に誘われ

僕らの前にやってくる

口々に祝意を述べる仲間に

大人しく僕も従う


おめでとうお幸せに


何カ月も前から用意していた文句

喉に閊えることなく出てきた言葉に

僕自身が少々驚く


ありがとう

みんな来てくれて嬉しい


みんなと一括りにされる事実に

怯んだりなどしない

君の幸せを願う気持ちに嘘はない


きれいだよ とても


心からの思いを口にする

けれどすぐに周囲の歓声に掻き消され

僕には少し微笑みかけただけで

君は彼と行ってしまう


きれいだよ とても


もう一度 とても小さな声で呟いてみる


Congratulations on your wedding

I loved you


美しく結われた長い髪

ふわり流れるヴェール

純白のドレスは

君が歩く度絹が戯れて見事だ


晴天に恵まれたこの日を

君らは選んだ

僕と君が出会ったのも

ちょうどこんな日

夏の終わり とても天気の良かったあの日

4年の時が過ぎ 僕は君を好きなままで

君は僕の気持ちに気付くことなく

愛する人と巡り合いその人と結ばれた

これをめでたいと言わずして何と言う


おめでとう!


2人の背中に叫ぶ

周囲は驚いて

次はお前だなーなどと

長閑なことを言って聞かせる

君は嬉しそうにその人とこちらを振り向いて

ブーケごと僕に手を振る

彼と繋いだ左手は 彼から離れることはない

軽く会釈する君の夫

軽く会釈を返す僕


あの頃に戻れたら なんて時はない

君は君の人生を素直に生きて今がある

僕は君という存在を心の奥底に捉えながら

ずっとそっぽを向いていた

こんなにも悔いると知っていたなら

君に一声かけただろうに


でも君はきっと

僕など相手にしなかったろう

君の左に立つひとと共に

きっと生きたことだろう

だから何度でも言う


おめでとう 末永くお幸せに


じき暮れる夏の日

外界へ続く階段

誰もが羨む笑顔を2人たたえながら

僕らの元へ下り通り過ぎ

そして新たな道を歩いていく


僕はどうしたらいいのだろうね

暫し考えてみるさ

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夏時 白絹の戯れ 梅林 冬実 @umemomosakura333

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