理解が進みつつある〝発達障害〟とは何か?

発達障害は、身体や学習、言語、行動のいずれかにおける不全を抱えた状態で、その状態は人間の発達期から現れます。

原因はほとんどが先天的な脳機能の偏りで、発達の偏りに伴う能力の欠落は生涯にわたって治ることはありません。

知能が低い場合から問題のないケース、中には高知能の人もいます。

発達障害は知能指数とは無関係に現れます。

以下に、発達障害の主な種類とそれぞれの特性について詳しく説明します。


自閉スペクトラム症(ASD)

社会的なコミュニケーションの困難さや空間・人・特定の行動に対する強いこだわりがある等、多種多様な障害特性のみられる発達障害のひとつです。

(自閉症や、程度の軽いアスペルガー症候群も含まれます)

以下に、自閉スペクトラム症の詳細について説明します。

特徴

自閉スペクトラム症の特徴は多種多様であり、一人ひとり異なります。また、発達の段階に応じてもあらわれ方が異なります。

代表的なものとしては以下が挙げられます。

社会的な関係のもちづらさ

想像力の問題でコミュニケーションの困難

特徴的な行動や動作

活動や興味の範囲が狭い

変化に対する不安や抵抗

社会的なイマジネーションの課題

感覚の過敏さと鈍さ

原因

自閉スペクトラム症の原因はまだ正確には解明されていません。遺伝をはじめ多くの要因が複雑に関与していると考えられており、親の育て方・虐待・愛情不足などが原因ではありません。

生まれつき、脳の中枢神経系という情報を整理するメカニズムに特性があるため、できることとできないことにばらつきがあり、日常生活でさまざまな困難が生まれてしまいます。

割合

データにより異なりますが、人口に対するASDスペクトラム症の方は、おおよそ20人~40人に1人(2.5%~5%)は存在する可能性が指摘されています。

診断

自閉スペクトラム症の診断に際しては、症状を詳細に聴取したり行動を観察したりすることによってなされます。先に挙げたような特徴を有していないかどうか、幼少期からの状況や成育歴、集団生活における様子を含めての情報を集めつつ、心理テストなども交えながら診断を行うことになります。


ADHD(注意欠如・多動性障害)

不注意(集中力がないなど)、多動性・衝動性(落ち着きがない、順番待ちができないなど)の2つの特性を中心とした発達障害です。

不注意

特性では、集中力が持続しない、継続的に1つの物事に取り組むことができない、ミスやなくし物が多い、上の空になりやすいなどの症状が見られます。

多動性・衝動性

特性では、じっとしていることができずに絶えず動いています。たとえば、学校の授業を椅子に座って聞き続けることが困難であったり、貧乏ゆすりを繰り返したりします。

ADHDの症状は7歳までに明らかとなり、幼稚園や学校生活のさまざまな場面で2つの特性による行動が確認されます。ADHDの症状は短期間で消失するものではないため、学業や友人関係の構築に困難を覚えることがあります。

ADHDの原因については、現時点では明らかになっていません。ADHDとの関連が疑われる要因には、何らかの遺伝的な要素、妊娠期間中における喫煙やアルコールの摂取、ある種の化学物質、分娩前後で生じた脳への障害などがあります。

ADHDの治療では、たとえば学校の課題などにどのように取り組んでいるかを観察し、上手くできていたこと/よくなかったことなどのフィードバックをしつつ、丁寧に取り組み方を教えます。

ときには報酬を与えながら行うこともあります。そのほか、順番の待ち方やおもちゃの共用の方法などを教えることもあります。

社会人では、不注意の傾向が現れやすいため、対策を講じます。


学習障害(LD、限局性学習症ともいう)

発達障害の一種で、全体的な発達に遅れはないのに、読み、書き、計算などの能力が部分的に遅れている(苦手な)状態のことを指します。

学習障害は、学習における技能に困難さがみられる発達障害の一つです。具体的には、読むことやその内容を理解することの困難さ、書くことの困難さ、数の理解や計算をすることの困難さなどがあります。

学習障害の特性は以下のように分類されます

読字障害

文字が読めないのではなく、文章を読むのが極端に遅く、読み間違えることがよくあります。

書字障害

文字を書いたり文章を綴ったりするのが難しいです。読字障害があると書字障害も伴いやすいです。

算数障害

計算や推論することが難しいです。

学習障害は、本格的な学習に入る小学生頃まで判断が難しい障害です。特定の分野でできないことを除けば発達の遅れは見られないため、「がんばればできる」「努力が足りない」「勉強不足」と見過ごされることが多いです。

学習障害の原因については、遺伝的要因や脳の発達の遅れなどが関与していると考えられています。


発達障害の原因は多岐にわたり、不明な点が多く残されています。複数の要素が関係し、遺伝的、胎児期の保健状態、出生時の環境、感染症、環境要因などが挙げられています。

双子研究により、遺伝要因とそれ以外の要因の影響度を算出することが可能で、自閉症スペクトラム障害とADHDに関しては遺伝要因の影響が大きいと分かっています。

発達障害は、一般的な発達の進み方から外れた発達特性を持つ人々を指します。発達障害は神経発達に問題があり、社会的なコミュニケーションや行動の制御、学習能力などに困難を抱えることがあります。

発達障害のある人は、他人との関係づくりやコミュニケーションなどがとても苦手ですが、優れた能力が発揮されている場合もあり、周りから見てアンバランスな様子が理解されにくい障害です。発達障害の人たちが個々の能力を伸ばし、社会の中で自立していくためには、こどものうちからの「気づき」と「適切なサポート」、そして、発達障害に対する私たち一人ひとりの理解が必要です。

児童、就労、生活など行政における発達障害支援があります。

気なる方や、診断された方は、まず役所に相談すると良いでしょう。


以上が発達障害の概要と主な種類についての説明です。

それぞれの発達障害は、その特性や症状、影響などにより異なります。これらの情報を理解することで、発達障害のある人々への理解と支援が進むことを願っています。


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