第8話
城の敷地内に王族の墓地があった。じいちゃんのじいちゃん(おれから見たらひいひいじいちゃん)の墓があるから、何度か来たことはあるっぽい。ガチで広い敷地内を迷わずに進んで行った。途中、執事さんとかメイドさんとか、近衛兵ではない服だけど帯剣している人とかとすれ違う。すれ違うたびに、立ち止まってお辞儀された。
『ドラゴンの姿は、王族の証でもあるからの』
ということっぽい。一緒に歩いているおれは、なんだと思われてんのかな。クソでかいリュックを背負った一般ピープル、おれ。側近とか、お付きのもの?
到着した墓地には、おれとじいちゃんの他には誰もいない。誰が供えてくれたんだか、最近供えられたっぽい花はある。
『ワシ、死んどる……』
戒名っていう文化はなさそうで、墓石に『アザゼル』の名前が刻まれていた。繭破壊事件の被害者、全員ぶんまとめてここに収まっているっぽい。
こういうとき、なんて言えばいいかわからなくて、おれは墓石を磨くことにした。撮影機材のメンテナンス用に入れておいたタオルで拭いておく。じいちゃんはドラゴン形態のままだから、その手で触ったら石を壊しそう。
『死んどるんじゃが、ワシ』
ドラゴン形態だと表情の変化が乏しい。今はそれがありがたかった。じいちゃんが自分の墓を見て、どんな顔をするかなんて想像したくない。
「というかさ、じいちゃん!」
ガチへこみしているじいちゃんの前に立つ。ドラゴン、でっかい。頭部だけでおれよりもでかい。全長なら電車の車両一台ぶんぐらいある。
「何のためにこっちに来たのかを、忘れてないか!?」
じいちゃんは実家をあてにしてたんだと思う。なのに、戻ってきたら更地になっていた。その原因を探っていって、真実にぶちあたったわけだ。
でもそんなの関係ねえ!
「じいちゃんは、ばあちゃんを捜しに来たんだろ! こっちの家族が大事なのも、わかるぜ? けどよ。おれたちはばあちゃんを捜しに来たんだ」
メインクエストを見失いかけてたぜ。一昨年、時空転移装置『異世貝』を改良する前のバージョンで、転移に巻き込まれてこちらへ到着しているはずのばあちゃんを捜す。――これがメインクエスト。
「ついでにミライをぶん殴ろう」
おれは竜帝だなんてかっこいい呼び名では呼んでやらないからな。いる場所もわかってる。東のネルザってところ。殴らないと気が済まないよな。じいちゃんは殺されてんだしさ。
おれも殴りたいから魔法覚えよう。
「じいちゃんには、おれとばあちゃんっていう家族もいるんだぜ!」
『ああ。そうじゃな!』
お。じいちゃんの声のトーンが元に戻った。声ってか念みたいな感じだから妙な感じする。けどまあ、元気出してくれたっぽい。
とりあえず、ばあちゃんの手がかりはゼロだから、ギルドに行ったほうがいいんかな。ばあちゃんの名前言って、調べてもらう?
「それで、じいちゃんはなんでずっとドラゴンモードなの」
『服がなくなるんじゃよ』
「そういうタイプなんだ」
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