第3話真夏のミッドナイト

擁壁の最西端には人が登り降り出来るコンクリート製の階段が設えられていたが、裏山に用があるときは二人一組で肩車をして、その両肩の上に靴のまま上がり裏山に登って行く教師が殆んどだったし、この男女も肩車をして裏山に上がったくちだった。

 バキバキ!枯葉と小枝を踏む音が、暗闇の中に獣の足音かララの踏み鳴らしたノイズなのか判別が着き難かったが鳴り響く音に孝達は人の足音だと分かっていた。

 先ほどから孝の肩にぶつかる洋介の頭に鬱陶しいと、孝の右手で洋介の頭を払い除けていたが、家を出たのが午後8時30分頃で、あれから2時間ほど経過していて10時30分を回ったころだったから小学生の6年生といえども睡魔が襲って来るのは当たり前だった。

 連れの男はララ・レイラを心配そうに上を見上げていたが暗闇にに溶け込んだ裏山の輪郭だけ判断が付いたが山中は闇だった。

「大丈夫?」男の問いかけに答えているのはジー、と鳴くオケラや遠くから聴こえているキリギリスくらいで、時折山中からジジジ!

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