視界
深い溜め息をついて岩本は話し始めた。
そこにさ。ほらそこ。
こっち見てる女いるだろ?
あーお前には見えないか。
ずっとなんだよ。
二週間前からずっと。
俺のことジーって見てくんの。
絶対に視界のどこかにいるんだよ。
家にいても必ず。
何て言えばいいかなー
鼻ってさ、視界に入ってるって言うじゃん。
普段は無意識だから見えないだけで、実はずっと視界に入ってるみたいな。
意識すると鼻が見えてくるよって。
それに近い感じ。
分かりにくいよな。ごめん。
んー 飛蚊症とか?
意識しだすと気になって仕方なくなる。
一回認識すると意識しない方が難しい。
そんな感じなんだよ。
今?
あっ、いた。あそこの電柱の後ろ。
こっち見てる。
で、
消えないんだよ。
本読んでても表紙裏から覗いてるし、パソコンの画面見ててもモニターの後ろから見てくるし。
今俺はお前の顔を見て話してるよな?
お前の後ろにいるよ。女。
もう頭おかしくなりそうだよ…
ん?姿?
分かりやすく言えば貞子かな。
薄汚れた白い服着て、髪が長くて、髪の隙間から見える肌は青白いのに口は真っ赤で大きく開けてんだよ。
で、目は見開いててほとんど黒目。
そんな女がずっと見てる。
心当たり?
同じような話を多田から聞いた日からなんだよなー
二週間前。
岩本からこの話を聞いた日から、視界にあの女が見える。
岩本と多田とは連絡がとれなくなった。
もしかしたら女はずっと視界にいたのかもしれない。
僕が生まれた時からずっと。
僕が認識したから、意識したから見えるようになったのかもしれない。
今も女は視界の端で口を大きく開けて僕を見ている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます