金色の糸の先には
香月茉梨
第1話
「いた~!みーつけた!」
「うわ~見つかった・・・」
・・・はっ、またこの夢か。最近よく昔遊んでいたときの夢を見る。いつも出てくるのはきまって幼馴染のしにーこと西秀斗だ。彼は同じ高校同じクラスで15年の中だ。夢の中の私は小学生でしにーと家の裏山でかくれんぼをしている。しにーはかくれんぼが上手で隠れたら見つからないし、鬼になるとすぐに自分を見つけてきた。
そんなことを思い出しながら、ふと時計をみると、いつも起床する時間をとうにすぎている。顔を洗い、制服に着替えて慌てて下に降りると、テレビを見ているお母さんとお父さんがいた。
「なんで起こしてくれなかったの?」
「何度も起こしにいったわよ。麗乃が起きなかったのが悪いんじゃない」
用意された朝ごはんを急いで食べながら、テレビを見た。
(・・・まーたこの話題だ)
『あの人気芸人とアナウンサーが金糸婚したようです。
おめでたいですね~私も金糸婚したいです』
金糸婚とは、総人口の0.001%の可能性で小指から金色の糸が見えて、その糸をたどると運命の人のもとにたどりつけて、その人と結婚すると金糸婚じゃない場合の10倍幸せになれるという言い伝えがあるから、みんな憧れている。
「まだ麗乃には見えないの?もう高校生よ」
「なんパーセントの確率だと思ってるの?無理だよ」
「うちの家系は代々見えてるんだよ。長女でしょ。長女が見えないと恥じゃない」
「いつもいつも早く見えないの?ばっかり。」
そう言って私は家を出た。学校に着いてからも、話題は金糸婚の話題ばかり。クラスで浮かないために私はテンションを切り替えて、友達に話しかけた。
「おはよ」
「おはよー。意外だったよね。まさか、あの二人が金の糸で繋がっていたなんて」
「それな。ほんと意外だった」
いつも通り授業を受け、部活に行って家のドアを開けると、リビングからこんな声が聞こえてきた。
「麗乃まだ金糸見えてないらしいの」
「もう高校生だよな」
「そう・・・うちの神社家系で長女が見えないとか恥じゃない」
「そうだな。養子でもとるか?」
「そうしかないかもね・・・」
衝撃的なことが聞こえてきた。私追い出されるの?どうしたらいいの?とりあえず聞かなかったことにしよう・・・
何もなかったように、ただいまと言って部屋に入り、ご飯を食べて寝た。
次の日学校に行くと、何やら教室の中が騒がしい。何があったのかと思って近づくと、その中心にいたのは、まさかのしにーだった。周りの人の話を聞いて分かったことは、しにーに金色の糸が見えたということだ。
「ねえねえ。秀斗くん。糸の先たどってみた?」
「ううん、さっき突然みえるようになったからまだみてない」
「早くたどってみてよ」
「一生に関わることだから、後で落ち着いてみたい」
「秀斗あとで、教えろよ」
「分かった。分かった」
しにー、金糸みえたんだ・・・私まだ見えてないのに。
その日一日心が落ち着かないまま過ごし、一人で帰っている途中
「麗乃―!」
しにーが私を呼ぶ声が聞こえた。立ち止まって振り返ると、必死に走ってくる、しにーがいた。
「はあはあ。待って、久しぶりに走ったからか、めっちゃ疲れた」
「しにーは体力なさすぎでしょ。ゲーム部もいいけど、運動もしなさい」
「お母さんみたい。僕のお母さん、いっつも勉強しなさいか、しないなら少しは動けしかいわない」
「お母さんに少し同情するわ。で、用はなんなの?」
「そうだったね。今日さあ、僕に金糸が見えたって聞いた?」
「クラスメイトが騒いでいたからね。知ってはいる」
「ほんと⁈」
「まあ少しは聞いたかな。しにーから聞いたわけじゃなくて、噂の範囲内だから、どこまで正しいか分かんないけどね。で、もう一回聞くけど用は?」
「でね、その・・・金色の糸をたどってみたんだ」
「それが、私になんの関係があるの?私が金糸婚家系の金城家だから?」
「そうじゃなくて、たどったら・・・・」
「うるさい!私なんて、金糸が見えないから家追い出されそうなのに、自慢?」
「そうじゃなくて・・・」
「そうじゃないなら何?もう、いい。顔も見たくない。どっかいって」
「麗乃!」
「名前も呼ばないで。早く帰ったら?金糸の先の人仲良くね」
私がそう言うと、しにーは泣きそうな顔をして走っていった。
しにーが走っていった先に信号無視した車がやってきた。周りが見えなくなったしにーは気づいてない。そのまま、しにーは車にひかれてしまった。私は茫然として、動けなくなってしまった。事故に気づいた周りの人が救急車とかを呼んでくれたおかげで、すぐにしにーは病院へ運ばれていった。
私は気づいたら、家のベッドの上にいた。全く記憶はないが、家に帰ってご飯も食べて、お風呂も入っていたらしい。
朝起きて下に降りると、お母さんが話しかけてきた。
「秀斗君が交通事故にあったらしいけど、知ってる?」
私は言い争ったせいでしにーが交通事故にあった背徳感から
「ううん。知らない。そんなことあったん」
ととっさに嘘をついた。
「今から、秀斗くんの病院行くけどついてくる?」
いつもなら、心配して行っただろうけど、喧嘩している手前、謝りたくなかったから、
「行かない。お母さん一人で行ってきて」
「分かった。お父さんも今いないから、留守番たのんだよ」
「うん。いってらっしゃい」
ガチャ
お母さんが行ってから、私はソファに寝転んだ。ここ何日で起こったことを頭の中で振り返りながら、ふと左手の小指をみると・・・
金色の糸が見えるようになっていた。私は飛び起きて、目をこすってみても、糸は見える。夢かと思ってほっぺたをつねってみ
てもちゃんと痛い。私は深呼吸をして心を落ち着けようとしたが、興奮がおさまらない。糸の先をたどってみたくなった。慌てて服を着替え、糸も導くままに走っていくと、大きな病院の中にたどり着いた。この病院のなかに私の運命の人がいるらしい。はやるきもちを落ち着けて病院のなかにはいる。糸をたどっていくとひとつの部屋の前に着いた。その部屋のプレートの名前を見るとしにーだった。つまり、私の運命の人はしにーだったということである。
*病室のドアをノックして、ドアを開けると、中にはしにーの家族と、たくさんの先生、看護師がいた。
「麗乃ちゃん、どうしたの?お母さんはさっき帰ったよ」
「しにーは?しにーは?」
と私が焦ったように聞くと、
近くにいたお医者さんが暗い顔で教えてくれた
「秀斗君は事故のときに体を強くうちつけてしまったようなんだが、その・・・当たり場所が悪く・・・」
「そうなんですね・・・」
しにーの身体にたくさんついているコードが事の重大さを物語っている。
私がしにーの近くに行き、「しにーしにー戻ってきて、また一緒に遊ぼうよ」と何度も呼びかけると、しにーの目が少しだけ開いた。
「しにー!}
私が言うと、しにーがか弱い声で
「今言ってごめんね。僕麗乃のことずっと好きだったんだ。金色の糸の先が麗乃だったときすごくうれしかった。またいつか会おうね」
「しにー!」
「脈が止まっていますね。19時01分西秀斗さん死亡を確認しました」
金色の糸の先には 香月茉梨 @kozukimari2005
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