第7章 初心者狩り
第19話 死の一攫千金
Side:ナレーション
滅ぼし殺して、復讐遂げます、滅殺復讐ギルド。
銅貨6枚の依頼で地獄が開く。
金貨6枚が地獄への渡し賃。
さて今日はどいつを地獄に渡そうか。
Side:ウメオ
ええと、ろくなのがないな。
プリシラがもって来た依頼票を見る。
死んだ仲間の仇を討って下さい。
これ良いんじゃないか。
ええと、冒険に行って仲間が帰って来ません。
モンスターにやられたか。
モンスター相手でも確かに賠償は取れるが、遺体がないとな。
モンスターの腹の中じゃどうにもならない。
「ビギナルドね、知っているわ」
「プリシラの顔馴染みか。でもこの依頼じゃな」
「モンスターにやられたなら、いつかそのモンスターも倒されるでしょう。仇を討ってやりたいけど」
「女領主はやさしいね。私は依頼ならモンスターでも殺す」
「とにかく、めぼしい依頼はなかったということだ」
俺はふっと、ロウソクを吹き消した。
その瞬間プリシラの顔がやけに寂しそうだった。
きっと帰って来なかった冒険者も知り合いだったんだろうな。
下宿に帰ると、マリーが待ち構えてた。
「早いお帰りですね。リリン様の所は良いのですか」
「ああ、早仕舞いだ」
「隣の下宿の役人の卵は勉学がさほどでなかったので、レベル上げに勤しんだそうです。それでそれが目に留まり抜擢されたそうです。あなたも暇ならレベル上げでもしたらいかがです」
「そうです。マリーの言う通り。レベルの高い人は滲み出るオーラが違います。あなたもオーラを纏いたかったら努力することです。努力は裏切りません」
「へいへい」
「返事は、はい一回」
「はーい」
「延ばさない」
レベル上げね。
上げても復讐者の園を覗く時に使っちまう。
無駄だとは言わないが、まあ虚しいな。
Side:ビギナルド
センユウトの奴は何で死んじまったんだ。
俺に仇のモンスターが倒せるとは思わないけど、金を貯めれば討伐の依頼ぐらい出せる。
センユウトの足取りを追う。
この森に入ったのは間違いないが、その後は分からない。
闇雲に探すしかないか。
森は暗くモンスターが出そうだ。
ガサガサと草をかき分ける音がする。
ぬっと、ビッグウルフが現れた。
ビッグウルフは俺にとっては格上の相手。
逃げるしかないな。
全速力で走った。
もうどこを走ったかさえ覚えてない。
息が切れる。
もう走れない。
もつれるような走りで足掻く。
足に何かが当たった。
みると人の手が地面から突き出てる。
その手の傷には見覚えがあった。
センユウトの手だ。
ビッグウルフはいない。
俺は短剣で地面を掘り起こした。
現れるセンユウトの顔。
無数の切り傷。
何があったか分かった。
殺されたんだな。
一体誰に。
埋まってた左手が何かを握っている。
短剣でこじ開けるとペンダントだった。
センユウトの物ではない。
仇の物か。
生きてここから帰り、センユウトの仇を見つけ出すぞ。
必死になれば何とかなるもんだ。
俺は何とか生きて森から出れた。
このペンダントの情報が要る。
銀のペンダントトップの図柄は蜘蛛。
女物ではないな。
たぶん男の物だろう。
王都の冒険者ギルドに戻ってみたものの、あてはない。
情報屋もいるが大金が要る。
安く情報を得るには。
「これ、落とし物なんだけど誰の物か知らないかな」
銀髪のつり目の生意気そうな受付嬢にペンダントを見せる。
「預かりましょうか」
「いやいい。直接渡したい。実は謝礼が欲しいんだ。ギルドを信用してないわけじゃないけど、謝礼の交渉まではしてくれないだろう」
「はい、業務外です。えっと、思い出しました。たしか、キルダー、ブッコロ、ゴウダーツの3人パーティがそのおそろいのペンダントをしてたと思います」
「サンキュウ」
仇の名前が分かった。
さらに聞き込みしたところ、『蜘蛛の毒牙』というパーティらしい。
奴らAランクだ。
俺はEランク、とてもじゃないが敵わない。
殺し屋を雇うしかないな。
それには金が要る。
俺が出来そうな依頼で一番高額なのは。
一角馬の依頼票を手に取った。
角が生えているだけの馬だ。
やり方さえ間違わなきゃどうってことはない。
一角馬の出没する森は明るい森だった。
木がまばらで、明るい日差しが差し込んでる。
いた。
一角馬だ。
ロープをグルグル回し投げた。
首にロープが掛かる。
意地でも離さん。
それからさんざん引きずられ、擦り傷の痣だらけになった。
だが、一角馬は止まった。
ロープを引き、首を斬り裂く。
やった。
ロープを掛けた時点で首が締まる。
時間さえかければその後は勝てる。
依頼品の角をえぐり取る。
突然腹に衝撃が。
見るとビッグウルフが食らいついてた。
畜生、ここまできて。
ポーションを呷る。
血が少し止まった。
だが、内臓が見えてる。
ビッグウルフの興味は一角馬の肉に移ったようだ。
俺がいるのも構わずに、一角馬のはらわた食い千切っている。
俺は逃げた。
傷が開くのも構わずに。
王都の冒険者ギルドに辿り着いた時には体中が寒かった。
あのつり目の受付嬢がポーションを手に飛ぶように寄ってきた。
「飲んで」
「俺はもう駄目だ。一角馬の角でセンユウトの無念を」
「早く」
俺の魂は体から抜けた。
誰かセンユウトの恨みを。
暖かい光の方へ俺は登った。
天国でセンユウトと出会えるかな。
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