第76話 第4回戦

 第4回戦だ。

 これでベスト4が出揃う。

 準々決勝というわけだ。


「構えて、始め」


 初手、氷の世界。

 いくつもの氷の柱ができた。

 温度が下がる。


「氷のフィールドか。ならば、【火魔法、大火球】」

「はっくょん!」


 虚無魔法発動。

 相手の火球を消し去った。


「おー、寒い寒い」


 俺は手をこすり合わせた。

 小声で詠唱。

 電撃を生み出して攻撃した。


「【土魔法、壁】」


 電撃は土の壁に阻まれた。


「おっと、滑る」


 俺は滑って転がったふりをした。

 そして、頭から地面に激突。

 ふりだけど。

 幻影魔法で火花を出して、火花は巨大な電撃になった。

 こちらは電撃魔法。

 電撃は土の壁を打ち砕いて、相手を痺れさせた

 幻影魔法で対戦相手を黒焦げに飾り付ける。


 髪の毛はチリチリで顔は真っ黒けだ。


「おっと、そんな所で寝てたら風邪ひくよ」


 そう対戦相手に声を掛け近寄る。


「おっと、失礼」


 大きなおなら。


 相手に触ったところ、手から火花が散った。

 大爆発。


 これで相手は死亡判定になった。

 今回の芸はいまいちだったな。


 落ちがなあ。

 おならは前にやったからな。

 今回のは毒ガスじゃなくて爆発だが。


 でも会場は笑っている。

 まあいいか。


 ショウがリリーと腕を組んでやってくる。


「大儲けありがとう」

「賭けたのか?」

「おお、ありったけな」

「俺が負けてたらどうしたんだ」

「そんときゃあ。夜逃げだな」


 まったく、俺より芸人らしい人生を送っているな。

 ひょっとしてショウの方が芸人として素質がある。

 だが、こいつは努力しない。

 芸人になったらパッとしないだろう。


 俺も努力はしてないが、ショウよりは頑張っている。

 こいつと張り合っても意味ないな。


 どうしたって言うんだ。

 幸せそうなこいつが羨ましいのか。

 そんなわけはないな。


 ショウとリリーと俺で祝勝パーティだ。


「乾杯」

「「乾杯」」


「なぁ、こんどダブルデートしようぜ」

「俺に彼女はいない」

「リリムさんとかいるだろ。デートって言うから敷居が高くなるんだ。遊びに行こうぜって誘えば良い。息抜きさ」

「息抜きか。俺には必要ないが、リリムには良いかもな」

「それじゃ決まりだな」


「でどこに行くんだ?」

「まずは劇場、そしてレストランで食事、でもって塔の上から夕陽を見る」

「塔は立ち入り禁止だろう」

「硬いこと言うなよ。そんなのばれなきゃ良いんだぜ」

「それもそうか」


「ねぇ、宝石を買ってくれるって話は」

「おう、それもデートコースに入れるか。宝石店でショッピング」


 ショウはリリーにしなだれかかられて、鼻の下を伸ばしている。

 こいつ、痛い目に遭いそうな予感がする。

 フラグが立ったって感じかな。

 ホラー映画では最初に襲われる感じか。


 まあ、ショウがどうなっても別にいいけど。

 ただ、知り合いが不幸な目に遭うのは少し思う所がある。

 だが、ここで何か言っても有頂天になっているから聞かないのだろうな。


「好事魔多しというから気をつけるんだな」

「平気だよ。リリーさえいれば俺は無敵。吸血鬼にも勝てる」

「うん、信用してる。絶対に守ってね」

「もちろんだよ」


 吸血鬼の目撃情報は増えている。

 だが、下水道の粉を使った細工は見抜かれた。

 まあ、ばれるとは思ってた。


 猛毒ネズミも殺されている。

 殺された箇所で出入りが分かるが、どうも出入りしてない箇所も殺しているらしい。

 きっとカモフラージュだな。

 こっちの手の内が見透かされているようだ。


 使い魔の類は駄目だろうな。

 気配察知系の魔法を使っているようだから、騙されない。

 やはり下水道の出入り口の細工か。

 魔道具もばれるだろうな。

 蛍光塗料とか手に入れられればいいけど。


 そうだ。

 光魔法で紫外線を出して、光る物を探せばいい。

 きっとモンスター素材とかで見つかるに違いない。


 さすがに紫外線に反応する物質があるってことは知らないだろう。

 その塗料を水に溶いて、出入り口の地面に塗っておけば、靴に付着して、後が追える。


 ショウと別れて、モンスター素材を扱う店に行った。


「【光魔法、紫外線】。うお、カビも光る。汚れもな。強く光るのは、蝶のモンスターの鱗粉か」


 ちょっと高いが、これで突破口が開けるといいな。

 よし、スノーに命じて塗料を散布させに行かそう。

 これで効果が出ると良いのだが。

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