第42話 オーガゾンビ

 ダンジョンのエリアはビッグウルフの領域に入った。


 狼系の厄介なところは集団戦闘が得意だということだ。

 アンデッド達は集団戦闘が苦手だ。

 同種の上位種には従うが、それ以外だと従わない。

 さらなる進化する個体が現れるのを待つか。


「ここから先は立ち入り禁止だ。聖女様が狩りをなさっておられる」


 聖騎士に止められた。


「それはギルドに通達してあるのかな。街のギルドではそんなことは言ってなかったぞ」


 その時アンデッドが現れた。


「お前は死霊魔法使いか?」

「ご名答」

「くそっ、死ね。【鋭刃】」

「おっと」


 俺は剣を抜いて、相手の剣を受け止めた。


「くっ、やむを得まい」


 聖騎士は甲高い音のする笛を吹いた。


「【次元斬】。ここらで聖騎士を一掃するのもいいか」


 俺は聖騎士を斬り捨てて、アンデッドを呼び寄せた。

 聖騎士の一団の足音がする。

 30人はいるか。


 正当防衛を成り立たせるためにアンデッドを前面に出す。


「死霊魔法使いか、ついてない」

「気を引き締めていくぞ。アンデッドはどれも第二段階に進化してる」


 あれを出してやるか。

 オーガハイゾンビを出した。


「オーガゾンビだとぅ」

「増援を呼べ」


 笛が吹き鳴らされる。


「オーガよ。攻撃を受けたらやれ」

「ウガ」


 オーガハイゾンビが前に出ると、聖騎士はスキルを使用して斬りかかった。

 もういいのかと尋ねる仕草のオーガハイゾンビ。


「やっていいぞ」


 オーガハイゾンビはその剛腕を聖騎士に向かって振るった。

 ふっ飛ばされる聖騎士達。


「時間掛けるのもなんなんで。【次元斬】」


 聖騎士達は真っ二つになった。

 俺は聖騎士達をゾンビにした。


「おい、オーガハイゾンビ、賠償スキルを貸してやるから、ゾンビの聖騎士から賠償を取れ。【貸与、賠償】」

「ウガ」


 賠償スキルを返してもらったが、オーガハイゾンビは強くなったのかな。


「【鑑定】、おー、身体強化が5つに、鋭刃が3つに、浄化2つに、火魔法に、俊足に、堅牢とたくさんあるな」


 実験的にやってみたが、オーガにはもったいなかったか。

 オーガだと使えるのが身体強化ぐらいしかない。

 まあいいか。

 どれだけ強くなったか試してみよう。


「オーガ、名前を与えてやる。お前はリギッドだ」

「ウガ」


「ビックウルフを引き裂け」

「ウガ」


 リギッドの後を追って移動する。

 早速、ビッグウルフの集団がお出ましだ。

 ビッグウルフは体長2メートル半はある大型のウルフ系モンスターだ。

 茶色の毛並みが美しい。

 毛皮として人気がある。


 リギッドはビッグウルフを無造作につかむと地面に叩きつけ引き裂いた。

 ビッグウルフ達が戦闘態勢をとる。

 リギッドは俊足スキルを発動。

 目にもとまらぬ速さで、ビッグウルフに迫ると、やはり無造作につかみ千切った。


 鋭刃とかもったいないけど、身体強化だけでも強いな。

 あと俊足も。


 瞬く間に立っているビッグウルフはいなくなった。

 もう少し戦闘を見てみるか。


 さらに奥に進むとリリム達と出くわした。

 大広間に30頭はいるであろう、ビッグウルフと対峙してる。


「オーガのリギッドに譲ってやれ」

「仕方ないわね」


 リギッドはビッグウルフを一頭掴むと、それを棍棒にして薙ぎ払った。

 打たれたビッグウルフの体が裂けている。

 いいや斬られたのか。

 鋭刃のスキルを使ったのだな。

 頭がいいのか。

 オーガって馬鹿ってイメージだったんだが。


 ビッグウルフのリーダーは果敢にもリギッドの喉笛に噛みついた。

 だが牙は通らないようだ。

 オーガの皮膚は硬いからな。

 リギッドはリーダーを掴むと背骨を折って放り出した。


 そこからは虐殺だった。

 リギッド強いな。

 ひょっとして今のリリムより強い。

 賠償で強くできるのが分かってなによりだ。


 だが、俺が賠償でスキルを取って貸した方が良い。

 その方が効率的だ。


「譲ってあげたんだから、私達にビックウルフのコート作ってよ」

「それは私も欲しいな」

「私にもです」


 5人分ぐらいアンデッドにせずに毛皮のコートにしてもいいか。

 状態が良さそうなのを選んで皮を剥ぐ。

 雑用やってた時の技術が役にたったようで何よりだ。

 あんな奴らに覚えさせられた経験でも無駄になるよりましか。

 経験に罪はない。

 存分に技術を使おう。


 残りの肉と内臓はスタッフもといグールが美味しく頂きました。

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