第18話 プリシラ
街に入った。
リリム達に付き合って冒険者ギルドに入る。
そこで思いも掛けない人物に会った。
「ウメオじゃない。久しぶりね。あれからどうしてた?」
いたのは一般常識を教えてくれたプリシラ。
「今はプラムマンと名乗っている。元の名前も記憶喪失で定かではない」
そうしておいた。
「色々とあったみたいね。ずいぶん裕福そうだけど」
「まあな」
「しばらくあなたに付いていきたいけど構わない?」
「なんで?」
「大きな仕事をこなしたから、討伐は休業中。どうせぶらぶらするなら顔見知りと旅行したいじゃない」
こいつ、怪しい。
だが、危険人物は手元においておくことに限る。
「商いの旅だから大して面白くないぞ」
「別にいいわよ」
ますます怪しいが、実害のない今は手が出せない。
「護衛を紹介する。こっちだ」
3人のところに連れていった。
「『ペガサスの羽』のリーダー、リリムと、前衛のメッサと、魔法使いのシャランラだ。こっちはプリシラ、知り合いだ」
「プリシラよ。魔法剣士、Cランク。よろしく」
「よろしく」
「よろしく」
「よろしく。リリム姉のライバル出現かな」
「こらシャランラ」
そんなんじゃないと思うぞ。
どこから見ても陰謀の匂いしかしない。
さて、盗賊狩りはどうするかな。
死体を回収するのはいい。
懸賞金目当てと言えばいいからな。
アイテム鞄があるなら不自然じゃない。
問題はゾンビを出せないのと、洗脳魔法だ。
ばれても構わないと言えば構わない。
ただプリシラがどこの手先なのかによって、対応が変わる。
それにしてもリリムと俺がなんで付き合っていることになっているんだ。
いや、現状では秘密を共有する仲で、半ば一心同体だけど、恋愛感情は別だろう。
俺はビジネスの関係だと思っている。
まあいい。
プリシラがどこかの手先ならすぐに正体を現すだろう。
街で一泊して、馬車に乗り出発なのだが、リリムが俺の隣に座ろうとした。
そりゃ四人だから、二人と二人になるのは自然だが、昨日の恋人の件が頭に引っ掛かる。
「膝の上に座っていい?」
プリシラがそんなことを言い始めた。
「駄目よ。絶対に駄目」
むきになるリリム。
「じゃあ隣を譲ってよ」
プリシラとリリムの間に火花が散った気がした。
「じゃんけんだ」
「「じゃんけん?」」
じゃんけんを教える。
「「最初はぐー、じゃんけんポイ」」
「やった私の勝ち」
勝ったのはリリム。
「仕方ないわね。向かいは貰うわよ。考えようによったら、向かいの方が話しやすい」
「ぐぬぬ」
二人ともどういうつもりだ。
恋のさや当てに見える。
もてている?
そんなわけないな。
二人とも裏があるに違いない。
馬車が出発した。
「ウメオじゃなかった。プラムマンの出身地はどこ?」
プリシラが話し掛けてきた。
「記憶喪失で覚えてない」
「あのじゃんけんを覚えていたのに?」
「記憶が途切れ途切れなんだ。ウメオの名前も記憶にあった。たぶん自分の名前なんだろう」
「ゴーレム馬と馬車、高かったでしょう」
「それなりにはしたな」
おっとどうやって稼いだことにするか。
よし、あれでいこう。
「どうやって稼いだの?」
「盗賊に捕まってな。隙をみて眠り薬を酒に入れた。全員が寝たところで、寝首を掻いてやった。で大金を得たわけだ」
「そう」
馬車が止まる。
「盗賊です」
メッサの声。
「頼んだぞ」
「任せて」
「私も出る。馬車に座っていたから、運動したくなっちゃった」
「好きにしろ」
俺は危ないようだったら加勢するように馬車の窓から戦況を見た。
12人の盗賊で、弱い奴らだったようだ。
瞬く間に駆除された。
プリシラのスキルのひとつが分かった。
幻影剣だ。
剣が何本もあるように見えて実体は一つ。
暗殺者向きのスキルだな。
もっとも俺を暗殺に来たなら、切り札は晒さないだろう。
切り札のスキルは別にあるのかも知れない。
盗賊の死骸をアイテム鞄に入れて再び出発。
「私の取り分も当然あるわよね」
「もちろんだ。プリシラにも払う」
金にがめついのだな。
俺を信用させるなら、金を取らない方が得策なのに。
演技かも知れない。
その可能性も頭に入れておこう。
「それにしても盗賊が多いな」
「女の御者を置いていると餌をぶら下げているような物よ。常識が足りないのは記憶喪失のせい」
「そうだな」
「護衛の数も少ない。8人は必要よ」
「道行きの話題に一般常識はちょうど良い。教えてくれ」
「じゃあ、一時間銀貨1枚ね」
演技には見えないんだよな。
もっとも分かるほど、人生経験は豊富ではないけど、プリシラの目的はなんだ。
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