第15話 レベル上げ

 森の空気は澄んでいて美味しいはずが、ゾンビのおかげで腐臭と濁った空気だ。

 手下の選択をの間違えたか。

 洗脳を使って手下を増やして方が良かったか。

 いいや、洗脳は解けることもあるし、食費が掛かる。

 生きている人間の集団を引き連れると色々と面倒だ。


「ご苦労様」


 ゾンビ達を監督してくれている3人が戻ってきた。


「もう臭いし、最低の仕事」

「お家再興のためには我慢です」

「ゾンビが戦ってくれるし、匂い以外は楽な仕事だから、文句は言えない」


 3人の文句が止まらない。


「報酬の1日金貨3枚がなかったら、ぶちぎれているところよ」

「ゾンビに上位種が生れて、リーダーが現れるまでの我慢だ」

「分かっているわよ」


 鑑定のモノクルで見ると、ゾンビのレベルアップが頭打ちだ。

 ゴブリン程度が相手ではレベル10になるのがせいぜいのようだ。

 次に殺すべしのモンスターと言ったら狼系のモンスターのハグレだ。

 だがゾンビの頭ではハグレとそうでないかは区別がつかないだろう。

 それに、狼系のモンスターは強い。


 ゾンビはスピードがない。

 狼系だとスピードに翻弄されて、やられる一方なのが目に見えるようだ。

 足の遅いゴーレムとかの方がまだやりやすい。


 ここらの森に出るボア系のモンスターも美味しいが、ゾンビが噛みつくと肉が汚染されちまう。

 粗悪品の肉を売ることは避けたい。

 ボア系のゾンビは要らない。

 ゾンビにするなら狼系の方がましだ。


 ゾンビは雑兵と割り切ることにした。

 レベルが10になった奴からアイテム鞄の中で眠らせる。

 気分はゲームのレベル上げだ。


 それと、『強者の渇望と亡者への道』はゾンビにも効果があった。

 装備したゾンビは生命力吸収スキルを覚えて、生きている者に触ると生命力を吸収するようになった。

 このゾンビはリーダーとして育てることにした。


 名前を付けてやらないとな。


「カーカスだ。お前は今からカーカスな」

「ウー」


 ゾンビが返事をして頷いた。

 意外に賢いな。

 ゾンビの研究は追々やっていけば良いと思う。


 俺の耳は風切り音を捉えた。

 振り返り、剣に手を掛けたが、間に合わない。

 リリムを狙ったであろう飛んできた矢を、俺はとっさに胸で受け止めた。


 矢は深々と刺さり、俺は一気に矢を引き抜く。

 傷は瞬く間に塞がった。

 毒が塗られていたようだが、何ともない。


「ふふっ、【賠償】、ステータスオープン」


――――――――――――――――――――――――

名前:ウメオ・カネダ

レベル:99

魔力:9965/9999

スキル:

  賠償

  聖刃 勇心 身体強化

  堅牢 鉄皮 剛力

  空間魔法 火炎魔法 氷魔法

  治癒魔法 加護 聖域

  自己再生 暗黒魔法 次元斬 超身体強化

  隠蔽 幻影 鋭刃

  乗馬

  毒魔法 隠身

  鷹目 狙撃

――――――――――――――――――――――――



「【鷹目】、見えた。【狙撃】」


 木々の隙間から逃げて行く殺し屋の姿が見えた。

 俺はスキルを使い矢を投げた。

 矢は一直線に殺し屋に向かう。

 そして殺し屋を貫いた。


 殺し屋の死骸をゾンビにする。

 スキルごちそう様。


「庇ってくれたのよね。ありがとう。あなた、真の勇者だけあって強いわね。狙撃にも対応できるとは思っていなかったわ」

「即死でなければ容易いさ」

「お礼は何が良い?」


 『強者の渇望と亡者への道』がもっと欲しいな。

 何とか作れないかな。


「謝礼なら、禁忌魔道具を作る職人に心当たりはないか」

「そんな物騒な人の心当たりはないわ。ウソツキー侯爵ならお抱えの中にいるかも」

「それは良いことを聞いた。ウソツキー侯爵の領地に寄ろう」

「殺し屋がたくさん来るわよ」

「望むところだよ」


 寄り道が決まった。

 ウソツキー侯爵の領地だ。


「ウソツキー侯爵はたぶん王都よ」

「魔道具職人を拉致るのが目的だから。それと殺し屋狩りかな」

「殺し屋が可哀想になってくるわね」

「殺すんだから、殺されても文句はないだろう」

「そうなんだけど」


 馬車に揺られてふと考えた。

 次はゴーレムをやろう。

 遺跡のちょうど良いのがある。


 ゾンビとゴーレムは魔法生物という括りだ。

 術者がいて作り出す。

 ゾンビの元は生物だが、ゴーレムは無機物を原料に作る。

 疑似生物なのは変わりない。

 だが、繁殖もする。

 ゾンビに噛まれて死んだものはまれにゾンビになる。

 ゴーレムも分裂して増える種類もいる。


 ゴーレムは主に警備に使われる。

 古代遺跡で数多く目撃されるのはそのためだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る