鈴の音に誘われて

水曜

第1話

 夜、孤独な山小屋で働くアキラ。

 山で一人でいるとさまざまな不思議な音が耳に入る。どこからともなく聞こえてくる、かすかな鈴の音。


 ある晩、アキラは鈴の音をたどって山小屋を出た。森の中に続く道があり、気になって歩き出した。すると、不気味な灯りが点滅する小さな祠が現れた。


 祠の前には古びた鈴がぶら下がっていた。鈴を手に取ると、奇妙な予感に襲われたが、どうしても持ち帰りたくなってしまった。


 夜が更けると、山小屋に帰ってきたアキラは鈴をテーブルに置いた。

 すると、鈴はふと鳴り始めた。アキラは驚いて立ち上がり、鈴を見つめた。


「どうして…?」


 しかし、誰もいないのに鈴はゆっくりと揺れ続けた。そして、鈴の音に合わせて部屋中が寒気に包まれた。


 恐怖に打ち震えながら、アキラは山小屋を飛び出して森へ逃げた。すると、不気味な笑い声が響いた。


「私を呼んでくれたわね…」


 振り返ると、白い霊が立っていた。その手には、鈴が握られていた。

 悲鳴を上げて逃げ出したが、霊はじりじりと迫ってくる。慌てて山小屋に戻り、扉を閉ざした。


 夜が明けた頃。

 アキラは山小屋を出て祠に向かった。

 しかし、どんなに探しても祠は見つからない。鈴もどこかへ消えていた。


 その後、アキラは山小屋に留まることはなく、山を離れた。

 

 けれども、鈴の音が時折、風に乗って聞こえてくることがあった。どこか遠くから、自分を呼ぶように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

鈴の音に誘われて 水曜 @MARUDOKA

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ