オマージュ

グカルチ

第1話

ある女性Aさん、母が占い師で母には霊能力や予知能力があった。そんな母の予知能力が通じなかったお話。


Aさんが子供の頃、小学2,3三年生の頃、よく遊んでくれる近所のお姉さんがいた。ヨーコさんといい、面倒見がよく、母も彼女の事を気に入っていたし、すぐそばに彼女の家があったので、安心して彼女にAさんの事をまかせていた。


そのせいか、様々な依頼や仕事に熱中できたが、同時期に妙な夢をみることがあった。いつものように仕事をしていると二人の男女が尋ねてくる。

「娘を返して下さい」

 どこか自分たち夫婦に似ているような顔立ちをしているがもやがかっていてその正体ははっきりとわからない。気味が悪いな、とおもいながら体をおこすと、それが夢だったと気づく。


その夢が頻繁になっていき、だんだんと精神的にも病的になっていき、落ち込む事が多くなった。これまで霊能力や予知能力でそんな目にあったことはないし、精神科に相談しても、特段様子のおかしなところはないという。

 

 薬をもらってなんとかしばらくやりすごしていたがある時から夢が様子を変えていった。

「どうして、娘を返してくれないんですか、あなたの娘に対する思いと同じなのに、それに」

 と母親

「娘を思う気持ちがわかるだろう?これは警告だ」

 と父親。

 怒気まじりの言葉に、困惑して、ぱっといつものように目を覚まし体を起こした時、ふと“ある事”に気づいて急いで娘の傍にかけよった。


 娘はほとんど異変がないが、体のあちこちにあざやら、目にはくまができている。まるで自分と同じようだ。そして大声で尋ねた。

「あんた、誰かにいじめられてない!?」

 A子さんは答える。

「ないよ」

 そしてすべてに気づいた彼女は、頭に手を抱え、頭を抱えながら、彼女にこんな話をし始めていた。

「どうして気付かなかったんだろう!!ヨーコさんはヨリコさんだ!!あれは、この世のものじゃないんだ!!」

 そうして、こんな話をしてくれた。


 昔ねえ、私と仲の良かった年上のお姉さんがいたんだけど、ヨリコさんっていってね。その頃気味悪がられていた私の霊能力を唯一信じて、見守ってくれて遊んでくれていたの。両親もまた、そんな私たちの関係を善く思っていてね。


 でもある時、両親が、血相を変えて私に迫ってきたの。

「なんであんなうちの子と一緒に遊んでいたの、もうこれ以上かかわっちゃだめよ」

 話をきくとその日、両親がヨリコちゃんの家を尋ねていったら、玄関先でインターホン越しに母がでて、娘は病気だとか、これ以上娘にかかわらないでくれという。さらに粘ったが、彼女はいま病院にいるといって聞かない。そんなわけがない、いつも娘が世話になっていると食い下がると、ヨリコちゃんの母は、ヒステリックに怒りだした。お前が嘘つきだとか、娘の事を考えろだとかいじめのつもりかなどと、その様子に困惑し、あるいは驚嘆し、逃げるように家にかえったのだという。


「あんな嘘をつく家の子関わってはだめよ!!」

 だが、しばらくヨリコちゃんは家を訪ねてきていた、自分がでようとすると、A子さんは母にとめられる、その数週間後、ヨリコちゃんは亡くなったと、ヨリコちゃんのお宅から電話があった。たしかに娘は重い病気を患っており、体中にあざがあり、もう何年も病院暮らしをしていたらしい。そしてあの時の態度を詫びてきた。


 どういう事なんだ。と混乱するA子さんの母とその母。あっ、と気づいて、A子さんは母にすべてを打ち明けた。ヨリコさんの死後、身の回りの態度が変わったこと、ヨリコさんが死ぬまで自分が周囲にいじめられていたこと。そして、ヨリコさんには一度も触れたことがなかったという事。



「どういう事?それも彼女のせい?」


 その場は困惑した母だったが、数日後、A子さん母とその母が町に出かけている時、二人はヨリコさんの後ろ姿を見た気がした。

「あれ……」

 と指を刺したA子さん母の口元を、母親がふさぐ。

「ごめんね、今まで黙っていたけど、母さんも霊感があるのよ、あれはこの世のものじゃない、今まで気づかなかったけど、恐ろしい負のオーラがあるわ」

 その瞬間、脳内にヨリコさんの記憶がよみがえる。ヨリコさんと遊んでいるとき、体中にあざがうきあがってきたこと、いじめられているとおもっていたが、母親が調べたところ、実際その事実はなかったこと。たしかにしばらくたって、A子さんが詳しく思い出すと、むしろヨリコさんと一緒に遊んでいた時、怪我や骨折、不幸が続いていたこと。そして、母親が見た夢の事。そして、母親は続けた。

「見て……」

 その指差す先で、ヨリコさんの両親がヨリコさんの肩をだいた。そのあとこちらに気づき、会釈をしたのだ。だが、母親は知っていた。この両親、ヨリコさんの死後2週間後に二人で無理心中をして、死んでいた事を。


「あの子、また出たんだ……今度はあなたのもとに、ごめんね、明日お墓参りにいこう」


 そして、次の日、休みを取って二人でヨリコさん一家のお墓参りにいった。母親がおしえてくれたのだが、ヨリコさんは、病室で体中あざだらけになっていたそうだ。そして、彼女の口ぐせが

「友達が欲しい」

 といって、空想の友達の話をするのだが、その友達の名がA子さんの母の名だったそうだ、彼女にも霊能力があったのだろうか。

「きっと、お盆の時期に帰ってきてこの世に未練がありまた迷い込んでしまったのね」 

 墓参りの帰りに母は笑っていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

オマージュ グカルチ @yumieimaru

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る