第13話 シェルターのふりをした赤黒い触手
細心の注意を払いながら、
あくまでも、牽制が目的。
自分たちに近づけさせないための威嚇であって、
それでも、貧弱な装備にあっては、やはりパースの生き物が人間を上回る。
絶妙なタイミングで
一瞬にして、体内へと吸収。
反射的に目を瞑ったために、左の瞼が開けなくなる。
まもなく、洞窟の入口が見えて来た。
「一か八かだ。頭を低くして、一斉にこの中に飛びこむぞ!」
口の半分が麻痺して動かない
足取りの悪い
それに続いてやって来る
異界のセミといえども知る由もなかっただろう――ここには、別の主が蠢いているということを。
頭を低くしたのは単純明快、その植物と接触しないためだ。
壁なのか、天井なのかはわからないが、
祈るようにして、三人が息を潜める。
やがて、一同の頭上へと、上から干からびた何かが落ちて来た。
それが
あまりにも形が変わっていたためである。
「……。あの赤黒い植物が、どうにかしてくれるんじゃないかと期待したが……まさか、ここまでとはな」
その触手に血液を丸ごと吸われたのだろう。
ほとんど原型をとどめていない。
「うっかり触ったら、俺たちでもアウトか」
わかりきったことを
「でも、人じゃなくてよかった」
ぽろりと
それを耳ざとく
間があったのは、おそらく
聞かれては困ること。
つまりは、それなりに大事な内容になる。
無理してまで聞き出すべきものだとも思えないので、一応、自分なりに推測してみようか。
『人じゃなくてよかった』とは、いったいどういうことだろう。
もしも、この蝉が人だったならば、さぞかしグロテスクな死体を見る羽目になっただろうから、それを回避できてよかったという意味なのだろうか。
それとも、襲って来た相手がセミでよかった、という意味なのか。⑤班の武器を奪ってしまうような非協力的な人間に、強襲されることでも心配していると言いたいのか。
「……」
まさか、いくらなんでもそれはない。
自分たち調査員の目的は、この世界からの帰還にある。日本に帰って、新しい生活を始めることを、誰しもが夢見ているはずだ。
互いに争っていては、いつまでも帰還の日が遠ざかるだけだろう。
まったく、
再び腹が減って来た。
せっかく補給した熱量も、先の一件ですべてを使ってしまったかのようだ。
痺れが収まり、どうにか動かせるようになった右腕を、
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