第2話 異世界への入口――霞が関地下
死刑囚
行き先は知らされていないが、着くのは朝方であるので寝ていろという。それだけの時間があれば、東北より下のどこにでも、自分たちを運ぶことができるだろう。
あまり興味もなかったので、言われたとおりに
それから五時間ほど経過しただろうか。
太陽の気配を察した調査員たちが目を覚まし、互いに会話を始めている。
普段であれば厳しく咎められる私語だというのに、見張りの男は何も注意しようとはせず、ただ、調査員の動向だけを神経質そうに見つめているのだった。
いきなり変わる態度に面食らってしまうが、それだけ大きなことを任されたのだという使命感も、心なしか湧いて来るように感じた。
「よう、
「そうだが……お前は?」
「
「悪い、いつも一人でいたんでな」
「そう言えば、そうだったな。まあ、お前に比べれば俺は全然有名人じゃないよ」
自分が有名人?
どういう意味なのかと、当然のように浮かんだ疑問には、斜め前に座る男が答えてくれていた。何ともまあ、冷たい印象を受ける顔立ちだ。どうやら、この車内には全部で、一二人の調査員が乗っているらしい。
「そりゃお前は有名人だろう。お前の事件はみんなが知っている。高校生の時、交際していた
「そりゃどうも……」
「もっとも、隣のそいつに比べれば霞むがな」
釣られて
「知らねえとは言わせねえぜ。ガキでも知っている、戦後最大の通り魔だ」
無遠慮な男の言動にも、
「俺さ、
「
「
カルト教団
いくらここにいる全員がアウトローとはいえ、さすがに
「すまないが、あまり詳しくないんだ――」
「ああ、勘違いしないで。俺は信者じゃないよ。俺が殺した人の中にも、信者っていたみたいだからね。誰を殺したかなんて、一々覚えていないけど。俺は
それを聞いた斜め前の男は、
「はっ。お前も
「凡人に、あのカリスマ性がわからないのは仕方ないことだよ」
「やめろよ。俺たちはチームの一員だろう?」
話の方向が読めず、
「ああ。
意外だったのは、やはりそこに女性が混じっていたことだろうか。女性の死刑囚は珍しい。名前はそれぞれ、
「みんなには悪いが、⑤班のリーダーは俺が任された。そういうことで一つ、よろしく頼むよ」
自分だけが相手の過去を知っているのは、どうにも不公平だと思ったのだろう。
他人には言いにくいことを話してくれた。
その気遣いは、
まもなく、一同を乗せた車両が霞が関に到着する。
異世界パースへの入口があるのは、その地下である。
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