駅
春になり日が伸びた。6時になってもまだこんなにも明るいものなのか。
遅れて家を出て、駅まであと少し。線路を超える歩道橋に足をかけたところで、踏切の音が響く。階段から見える線路を乗るはずだった電車が通るのを見つめていた。
別の世界では、あの電車に私はいたのだろうか。
駅のホームで次の電車を待つ。
ああ、夢のようだ。
この柔らかい夕日は私を現実から包みまどろませるオブラート。今の私をただ受け入れてくれる優しい光。
アナウンスが私の鼓膜を震わせた。恐ろしかった。
ああ、これでは駄目なのだ。
このままではいけない。
今を認めるだけでは、私に未来は無い。
目的地の反対を目指す電車から流れ出る足音が私を追い詰める。
やめてくれ。私を独りにするな。
響き鳴る警笛。
私の乗る電車が来たのだ。
扉はちょうど私の目の前で止まり、それは開いていた。その時私は思い出した。私にも乗り込む電車はあったのだ。私は、暗い日曜日の中で立ち止まっているだけではなかった。出口を探すため、ひたすらに歩いていたのだ。
これも、その一歩。
それが、どんなに小さな足掻きであろうとも。
私は、この歩みを止めない。
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