夜夜中、帳はそこに
浅葱 游
三行半
恥ずかしげもなく広げた脚に、私の倍近い重みが載る。硬い股関節が無理に割り開かれる痛みは、事後の気だるさとか眠気とか、愛する彼のあたたかみの中ではちっぽけなもの。繋がったまま、私に体重を預ける彼が愛おしい。穏やかな熱で二人の境界が曖昧だ。
深夜三時から始まった行為は快楽を貪るというよりも、彼の性処理に近かったように思う。会陰がコンドームで擦れて痛いし、騎乗位で当たった膣奥は未開発の痛みが走った。澄んだ脳内はとても理性的で、快楽に溺れたふりさえ出来やしない。そんな夜。
うたた寝から目覚めて尚、彼は私と一緒にいる。
重たい彼に、どうにか上から退いてもらう。まだ乾いていない膣から無くなった彼との繋がり。収縮する膣口に感じたコンドームの柔らかさに、彼が私の中で果てた現実と、空っぽになる虚しさを知る。
あかりひとつ無い夜で良かった。ラブドールになった私を感じさせずに済むのだから。コンドームを外さないまま、彼は熱い腕で私を抱く。やめてよ。甘ったるく囁くと、彼は嬉しそうに腕に力を込めた。
愛されている実感と、熱くて離れてほしい気持ちとが、ジレンマとして心に残る。かみ合わない歯車だけれど、彼を好きだという気持ちがなんとかこの関係を保っていた。彼が寝息を立てたのを、つむじに感じる。
ベッドヘッドからティッシュを取って、濡れたままの秘部を拭う。アナルまで垂れていたらしく、臀部に触れるシーツがひんやりと触れた。
ゴミ箱も、脱がされた下着もどこにあるか分からない。彼の腕をそっと撫で、重たい瞼を閉じる。さようなら、長い長い一日。
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