第2章 オタク救世主になる
第1話 海しかないっしょ
――夏。
太陽の日差しが燦々と輝いている。
潮風が心地いい。
川辺と内海と合流し、海に到着。
周りはクラスの人たちで溢れかえっている。
渡辺は既に宮元と一緒に来ていた。
何故か今日は露出が少ない。
ジーンズにTシャツを着ている。日焼け対策かな?
ここ、サンサンビーチは夏になると多くのお客さんで賑わいを見せる。
夏真っ盛りの時期だけあって家族連れや学生たちで溢れかえっている。
それにしても内海が来るなんて珍しい。こういう陽キャのイベントは仮病で欠席する奴なのに。
にしてもあいつ水着持ってるのか……?
「きいてくれー!」
クラス委員の石川による号令にみんなの視線が集まる。
「準備ができた人から順に水着をもって着替えてほしい。その後は各々自由行動!」
石川の指示により、それぞれが水着を持ち別れていく。
俺たちも内海と別れ、男子更衣室へ。
「それにしても、お前が渡辺さんと買い物とはな、楽しかったか?」
「まぁな、渡辺の水着、俺が選んだんだ」
「マジかよ。大丈夫かな……」
「それどういう意味だよ」
「いーや、別に。俺はギャルには興味ないからよ」
そういえばこいつは清楚しか受け付けないんだった。
くだらない会話をしながら水着に着替えた俺たちは、
パラソルの中で女性陣の着替えを待つことに。
各々が着替えを終え、砂浜でじゃれあう男性陣。
ふと、川辺の上半身を見ると、大胸筋が膨れ上がっている。
こいつはオタ芸で鍛えているからか身体ができあがっている。
すると、女性陣が姿を現した。
先頭はもちろん渡辺。
「渡辺さん! 水着めっちゃ似合うね!」
「さっちゃんやばすぎー! マジエンジェル!」
「ギャルさいこー! 黒ビキニめっちゃいい!」
渡辺親衛隊が歓喜の渦に包まれる。
「あれが、お前が選んだ水着か。たしかに似合ってるな」
「そうだ、俺のセンスに震えろ親衛隊!」
「お前がなんでドヤ顔してんの?」
腕を組みながらニヤリと笑う俺に川辺がツッコミをいれる。
ふと、女性陣の一番後ろにいる内海はスクール水着を着ていた。
やっぱりあいつ持ってなかったのか……。
てか、海でもそのグルグル眼鏡外さないんだな!
◆
着替えを終えたクラス一同は、砂浜でお城を立てる者、ビーチバレーをする者、浮き輪に座りながら海で優雅に過ごす者と
各々が満喫している。
クラス委員の石川は、パラソルの下で渡辺と一緒にいる。
付きまとっているというのが正しいか。渡辺が嫌な顔をしながら話をしているのが遠目からでも分かる。
「助けなくていいのか?」
川辺がニヤニヤしながら訊いてくる.。
絶対楽しんでるなこいつ
「そうだなぁ~、行ってやるか」
さすがにほっとくわけにもいかないので、
渡辺のいるパラソルへ。
太陽の熱で砂浜が熱い。
「おーい、渡辺。楽しんでる?」
「あっ! 周くん! やっほー!」
石川と渡辺に割り込む形で話しかける。
さすがにバツが悪いと思ったのか、石川がほかの女子たちの元へ
「助かったよー、ほんとあいつしつこくてさ」
「それは大変だったな……」
「背中にオイル塗ってあげるだって、ほんとキモイ」
さすがにそれは下心丸出しで気持ち悪いな。
「でも、ありがとう♪ 周くんのおかげでゆっくりできる。よかったら少し話そうよ!」
渡辺がポンポンと隣に座ってと促す。
「あ、ありがとう。それにしてもやっぱり似合ってるよ水着」
「ありがと♪」
素直な感想を伝える。
「それにしても周くんって身体鍛えてるんだね! ビックリしちゃった」
「中学生のころまでサッカーやってたから」
川辺程ではないが、脚の筋肉と腹筋には自信がある。
「へー! だから脚の筋肉凄いんだね! もうサッカーはしてないの?」
「まぁね……」
本当はスポーツ推薦でこの高校に入ったんだが、
ある事件をきっかけに中学生の冬にサッカー部を退部した。
俺がオタクと罵られているのは、スポーツ推薦でありながらサッカー部に入らず
変な同好会に入っていることが許せないのも一定数いる気がしている。
まぁ、ほとんどは、オタク=気持ち悪いが理由だと思うが、だけどもう2年前の話。
そんなことはどうでもいい。
「脚、触ってもいい?」
「えっ?」
「ダメ??」
「いいよ」
そんな艶めかしい顔されたら俺も断る理由はない!
「わーすごい! カッチカチだ! おもしろーい!」
渡辺の綺麗な手が俺の脚を撫でる。
とてもくすぐったいが心地いい。いかん。頭が煩悩に染まっていくのが分かる。
「そーだ!」
何かに気づいたのかバックから日焼け止めを取り出した。
「後ろ塗ってくれる?」
ええええええええええええええええええええええ
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