幼馴染の友達に「2人でポッキーゲームしてくれない?」と言われた

月城 朔

第1話 「どこのラブコメかなって思わない?」

「2人でポッキーゲームして欲しいんだけど」




「「…………はい??」」




 俺の幼馴染、永瀬ながせ 小春こはるの友達が突然とんでもないことを言い出した。






「おはよ颯太」


「ん……おはよ」


 俺、七瀬ななせ 颯太そうたは小春の声で起こされた。

 俺と小春の両親は昔から仕事で忙しく帰ってくることが少なく、親同士が昔から仲が良かったので俺たちの親がお互いにお願いして一緒に過ごすことが多かった。

 昔は小さいこともあって、朝は必ずどちらかの両親がいるようにしていたが、もう高校生だということでそんなことも無くなった。

 そういうわけで、高校生になってから小春と一緒にご飯を食べることになった。


 ……どこのラブコメだよって、我ながら思うが。



「ってことで俺は寝る」


「いや起きてよ!ご飯食べれないじゃん」


 普通に眠い。もう少し寝させて欲しい。だいたい、8時から学校があるのがおかしいんだ。うん。


「ほら、起きろっ」


「ちょ、寒っ!」


 俺が気持ちのいい2度寝に浸ろうとすると、小春は俺の布団を思いっきりはいだ。


「お前、今12月だぞ……いきなりはぐのはないだろ」


「だって全然起きようとしないし」


「お前なぁ……」


 もうちょっと他にやり方があるんじゃなかろうか。まあ、俺が起きないのが悪いんだけど。


「ほら、ご飯作るから早く降りてきてね」


「はいよ」



 昔から時々両方の親の帰りが遅くなって、一緒に料理を作って晩ご飯を食べる、なんてことがあったので、朝ご飯も一緒に作ることにしている。朝は大丈夫でも晩はどうしても帰れない時があるらしい。


 ……いつも思うけど、本当にどこのラブコメだよ。こんなやつ、日本中探したとしても1万人に1人もいないだろ。


 そんなことを考えながら、俺はさっさと着替えを終わらせ、下に降りてキッチンに向かった。



「颯太、今日弁当に焼肉弁当にしようと思うんだけど」


「お、いいな。じゃあ俺はブロッコリーでも茹でるわ」


「お願い」


 ちなみに両親がいないのでもちろん弁当も自分たちで作る。何弁当にするかは俺が提案することもあるし小春が提案することもある。要するに適当だ。


 そんなこんなで弁当と朝ご飯を作り終え、俺たちはテーブルに向かいになって座った。


「「いただきます」」


 朝ご飯はシンプルな白ご飯、卵焼き、野菜炒め、味噌汁、そしてカブの浅漬け。そこまで時間があるわけではないので朝は結構シンプルだ。んでこのカブの浅漬けが美味い。ご飯がどんどん進む。俺も小春も漬物が好きなので、よく漬物が食卓に並ぶ。


「しっかしねぇ……」


「ん?どうした?」


 俺が浅漬けをばくばく食べていると、小春が突然ため息混じりにそう言ってきた。


「ほんと、改めて自分たちの状況を考えてみるとどこのラブコメかなって思わない?」


「お前もか」


「あ、やっぱり颯太も?よくこんな状況になったなって思うよね。まあ昔からこうだし、颯太が恋愛的に好きになる未来なんで想像つかないけど」


「だよなぁ。クラスメイトは付き合ったりしないのか?ってよく言うけどさぁ」


「そうそう。ほんと懲りないよねぇ」


 もう16年くらい一緒に居る仲だ。そんなもはや家族のような関係の小春と恋仲になるなんて、パラレルワールドにでも行かないと有り得ない。


「友達からは合う度になんか進展とかないの?って聞かれるし」


「俺もそんな話ばっかりされるわ……よく飽きないなって思うよ」


「こんだけ長くいて、こんなに恋人になりそうな雰囲気もないのにね。かといって、別に颯太が幼馴染として好きじゃないわけじゃないからね。一応言っとくけど」


「それくらい分かってる」


「それもそうか」


 16年もいるんだからそれくらいは分かる。


「やっぱ、小春と一緒に居るのが1番楽だしな」


「友達とカラオケ行ったり色んなところに行って遊んだりするより、颯太とこうして居るほうが楽だわ」


「こうやってずっと一緒に居るから、クラスメイトにそんな目で見られてるんだろうけどなぁ」


「ま、私がもしクラスメイトだとしても早くくっつけって思うし。そのくらい私たち一緒に居るもんねぇ」


「ほんとにな。今更距離を取れなんて言われても無理だし」


「もし颯太からそんなこと言われたら泣くよ?私」


「大丈夫、そんなこと言わないから」



 そんな話をしながら朝ご飯を食べ終え、俺たちは家を出た。

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