夏めく

梅嵜すずり

第1話

今年もお盆の季節が到来。

帰るのは嫌なのだが、どこに行くあてもないので毎年帰省をしている。

アラサーにもなってくるとこの時期がとても億劫だ。帰省の足取りも重くなる。

なぜなら、いざ規制をすると、

「いい人は見つからんのか?」

「理想が高いんじゃないのか?!」

「どこどこの誰それは結婚したぞ?」

などなど気にしてないふりをしているけど、内心はめっちゃ気にしてるんだよ?ポイントをこれでもかと言うくらい串刺しにされるからだ。

お陰で樽の中から首が飛んでいきそうになる。


いろいろ言われるが出来ないものは出来ないのだから仕方ない。


最近流行りのアプリなんかも手にしてみた。あれは確かにすごい。

出会に終わりがない。だが、それと同じくらいこの人だ!と思える人にも会えない。

自分が選択できる立場にないのは分かっているのだが、母数が多くなる分もっと自分に合う人がいるんじゃないかと思ってしまって、選べない。。

選択肢が少ないというのもある意味で幸福だったりするのだろうかと思う今日この頃だ。


息苦しさを晴らそうと畦道を歩く。

歩いているとポツリ、ポツリ、と夜の畦道を煌々と照らしてくれるものがいる。


「今年も見れたかぁ」


億劫な帰省であっても、楽しみがないわけではない。その楽しみのうちの1つがホタルだ。

ここの場所はまだ野生のホタルが自生してくれている。

自然が作り出す情景にはうっとりさせられる。


「こんばんは」


背後からの声にハッとさせられた。

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