デュアル・カラード
ハマー
第X話 序文 色のない世界
世界には色がなかった。
世界は色を忘れていた。
いや、あるいは、その色が正しく認識されていなかった。
天国と地獄の中間のように、曖昧な場所だった。
光あれ――と誰かが言った。すると無から有が生まれた。
それは地から現れたもの。
あるいは極光色と呼ばれるもので、溢れんばかりの色を内包し、満たされていた。
白き極光は『カラーマーカー』を作り、正常な色の認識と力を与えた。
世界は色に満たされる。美しくも愛しいものが世界を覆っていく様は一つの時代の終わり、いや、あるいは――新しき色の時代、白の始まり。
そこは善と悪、喜びと悲しみ、栄光と失墜、神に設計された全てが両立する世界だった。
美しく愛おしいものは善と悪を分け隔てなく包み込み、許容していた。
それは全て、神が定めし理想郷へと辿り着くため。
そこには神に造られし、神の定義する、平和があった。
だが、世界に平穏をもたらした白き時代は、終わりを迎えようとしていた。
光り輝く時代の色を知るものは消え去り、後に残されたものたちは逃げ隠れるしかない。
彼らは暗く冷たい場所で命を繋いだ。
その終わりは世界の中心、あるいは深き場所に、空からやってきた新しき神が現れたからだ。
そこは大地の下であり、同時に海の下でもあった。
物理的な距離では測れない星の中核。そこには壊れかけの玉座があり、地から現れた古き神が座して星を治めていた。
空から現れた新しき神は、古き神を玉座から追い落とすべく力を振るった。
抵抗する古き神、戦う理由は自己のためではなく、星に住まう無辜の民のため。
しかし永きに渡り世界を浄化してきた古き神には自身が戦うための余力などなく、立ち向かおうと放った白き光は新しき神の黒き光によって塗り潰される。
新しき神は古き神の敗北を嘲笑し、悠々と壊れかけの玉座に座った。
玉座は新たな主人を迎えて鳴動する。
それは変革の波となって世界の隅々まで伝播していった。
ここに白き旧世界は終わりを告げ、黒き新世界の幕が開けるのだ。
そして世界には色の力が満ち、全ての生物はカラーによる影響を受けた。
光あれ――と誰かが言った。すると無から有が生まれた。
それは空から現れたもの。
あるいは極光色と呼ばれるもので、溢れんばかりの色を内包し、満たされていた。
黒き極光は『カラーマーカー』を奪い、異常な色の認識と力を与えた。
世界は色に満たされる。美しくも恐ろしいものが世界を覆っていく様は一つの時代の終わり、いや、あるいは――新しき色の時代、黒の始まり。
古き神は願う。どうかこの世界を救ってくれと。
そして、ああ――この色が、どうか。
――全てのペリフェリエスに届きますように。
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