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@suke_yaki
第1話 事件の始まり
「アザミノ首相、チェックメイトですよ」
俺は勝ち誇ったように、数々の不正を書き記した書類を突き付けて、青ざめる初老の男を見下ろした。
ブラック企業に勤め、身も心も限界を迎え、世の中の金持ちや社長たちに一泡吹かせたいという、後ろ暗い願望が、この異世界に転生することで、今まさに叶うところだった。
「何ということだ、常識外の魔力をもって、私の悪行を炙り出すとは……これが転生者の力というのか」
肩を落とし、声を震わして呟くこの男は、この国のトップらしい。俺は優越感に浸る。これぞ夢にまでみた、成り上がりである。
「悪い事は隠せないもんさ。さあ、観念するんだな、潔く、その偉そうな椅子からどくといい」
その台詞に呼応するように、俺の後ろからイケメンが現れる。
「アザミノ首相、詳しい話は警察本部でお伺いしますよ。こちらへ」
魔法警察エリートの、マイクがそう言って、アザミノ首相の身柄を拘束する。
「よくやったな、タメスエ」
マイクが小さな声でそう言った。ここに来るまでの道中で、一度も俺を褒めることのなかったエリート坊ちゃんの、貴重なお褒めの言葉だ。
「やれやれ、骨の折れる仕事だった。さて、これからは、悠々自適に、暮らしますかなあ。各地にいる、俺を持っている女の子たちに会いに行ってもいいかもなあ」
俺は呑気にそんなことをつぶやいた。俺にはことの大きさがあまり理解できていなかったが、どうやらこれは、大ニュースらしく、周りの人たちが見たこともないほど慌てふためいていた。
俺は関係ないとばかりに、人込みをかき分けて帰ろうとした、俺を引き留めるもの、取材を申し込む者、感謝をする者、困惑し怒り狂う者……このアザミノという奴は、たくさんの人の人生に良くも悪くも関与していたらしい。
そんな中で、アザミノの胸にあったバッチと同じ形のバッチをしていた男が、青ざめた様子で叫んでいた。
「大変だ、これから選挙で、新しい首相が決まるんだ、解散総選挙だ!」
俺はその様子を興味もなく、横目に流して、各地で出会った可愛い女の子たちとの再会に思いを馳せながら、立派な宮殿を後にしたのだった。
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