お題、試作短編集

テリヤキサンド

VR本屋 KAC2023お題「本屋」

 「なんだここ?」


VRで色々な場所を巡っていたら、古めかしい店を見つける。

SFチックな他の店と違い、なぜか下町にあるような佇まいの店。

はっきりいって、浮いている。

でも、どうせVRなのだ。

特に気にする必要もないだろう。

という訳で店へと入っていく。


 「おお、VRでこんなに作り込まれているのか。」


入ってみると埃っぽい古書屋といった内装。

そこいらの本に手を触れてみると吸い付くように手の中にその本が手元に現れる。

VRなんだからこういうもんなんだなと思いつつ、本をめくろうとすると


 「いらっしゃい。」

 「!?」


耳元で声がした。

声のした方を見ると至近距離にお婆さんの顔。


 「うお!」

 「ここは立ち読み禁止だよ。」


そう注意を受ける。

いきなり現れたもんだから、驚いてしまった。

ホラーVRでありそうだなと思いつつ、落ち着いてから、本を閉じ、元に戻す。

それを見届けたお婆さんは後ろを向き、カウンターらしき場所へと移動していく。

警告みたいなもんか。

なら、背表紙を見て判断していくか。

そう思い、ずらっと並んだ本を見ていく。

すると、ふと気になった本があった。

なぜ、気になったのかわからないが、その本を手に取る。


 『@#$%^&*』


変換できない文字なのか文字化けしている。

無性に気になったためにこれを買って帰ろう。

本を持ち、カウンターへと向かい、本を置く。


 「これでいいのかね。」


選択肢が出るようなセリフに俺はその本分の仮想金貨を出し、本を受け取る。


 「毎度あり。」


無事、本を買うことができた。

そういえば、この本はこの後、どうなるんだろうと思っていると本が自分の中へと消えていく。

そして、頭上には新しいアイコン。

これをタッチすれば、見れるということだろうか。

試すのは本屋から出て、ゆっくりできるところでしよう。

そう思い、本屋を後にする。


本屋を出て、ゆったりとしたスペースにつくとアイコンを押してみる。

するとあの本が目の前に表示される。

本自体が出てくるのでなく、電子書籍のようなイメージで出てくるのか。

本の内容はというとまるでわからない。

だが、文字自体がなんなのかわからないままなのにかかわらず、それを読み耽る。

そして、気がつくと数時間経っていた。

まさか、ここまで集中するとは思わなかった。

続きは明日にして今日はこの辺りで終わろう。


 「ねえねえ、聞いた?」

 「なになに?」

 「この間から休んでいる黒田君だけど、どうも昏睡状態らしいよ。」

 「え、そうなの。

前に見た時にはそんな様子なかったけど?」

 「うん、この頃、熱心に何かやっているような感じだったからそんな気配はなかったよね。

黒田君の友達が遊びに行った時にがもうVRメットつけてる状態で意識がなかったとか。

一体なんなんだろうね。」

 「ゲームのしすぎなのかしらね。

私達も気をつけないとね。」


その後、色々と調査はされたものの、VRの内部データ、ログなどに異常は見られず、黒田少年の件は原因不明の病として処理されることとなった。

その不気味な事件の後、VRに関して、妙な噂が流れることになる。

VR内に現れるレアスポット古びた本屋。

そこにある本を手に入れることができれば、新たな世界が開かれると。

その世界が一体どういうものなのかはわからないが興味のある者はそれを探し、情報交換をして、噂を広める。

その結果、現実に何が起こるとも知らずに・・・。

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