世界は腐っている。

@xtsubakix

Prologue

「君は優秀だ。その様子だと、この学校が普通ではないことにも気付いているのかねぇ」

呼んでいる本をパタっ、と音を立てて閉じ、顔に笑みを浮かべながら俺を放課後、職員室に呼び出した1-3担任、桐山秋野は言う。

入学早々、学力確認テストで学年一位、一学期、二学期の期末、中間テストでも一位。

5月の初めごろに行った体力テストでも学年一位。

…と、俺のこれまでのテスト結果が机の上に並べられている。

「ただ、君は表舞台に立とうとしない。そして、人との関りも一切見られない。部活動も所属していないしな。」

少し桐山は表情を強張らせて言った。俺のそういう消極的な性格が気に入らないのだろう。

部活の勧誘とかだろうか。興味はないな。

「それがどうしたんですか。俺は俺の思うままに生きるだけです。」

俺は今思ったままの意見を述べた。

「いや、怒るつもりや非難するつもりはこれっぽちもない。ただお前に協力してもらいたいことがある。」

ほう。思ったよりも面白い話かもしれない。

「この学園で起きている事態を止めてほしい。お前ならできるはずだ。」

「『事態』ですか。その内容は?」

「…これから1-2で虐めが発生する。それを止めてほしい。」

虐め…か。ただそれならば「事態」などと大げさに言わないのではないか。

そんな俺の疑問を感じ取ったように、桐山は言った。

「…そう。本当は虐めだけではない。お前が気付いている通り、だ。」

桐山はそれ以上言うつもりはないようで、口を静かに閉じた。

俺の考えている通りなら、命の危険が伴う作業でもある。ただ、退屈な日々を面白くするのには丁度ちょうど良いかもしれない。

「分かりました。協力します。但し条件付き、でね…」

「話が早くて助かる」

その後俺と桐山は少し「条件」について話し、桐山もそれを了承してくれた。

話が終わると桐山は席を立ち、小さく「戻っていいぞ」と俺に言った。

俺はそそくさとカバンを背負い、寮に帰ることにした。

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