第14話 盗賊のアジトに乗り込む格ゲーマー
トーヤとキャミーは盗賊がアジトにしている洞窟に足を踏み入れた。内部は単純な構造をしており先に進むのに苦労はなかった。
「何か罠的な物があるかと思ったらそうでもないんだな」
「罠なんてあったら出入りするのに邪魔だからな」
そういうもんか、とトーヤが首をすくめた。確かにそこまで入り組んだ洞窟でもなく基本一本道である。罠なんて仕掛けたらうっかり仲間が引っかかる可能性もあるのだから仕掛けるメリットがあまりないのだろう。
「それにこの盗賊は定期的にアジトを変えるタイプだからな。その度に罠を仕掛けるのも非効率的だ。それでも掛けるなら撤退時だろうな。まだ盗賊が残ってると思ってやってきた連中を引っ掛けることが出来る」
「ほう。凄いなキャミー。伊達に鎧を着てない」
「鎧は関係ないだろう」
トーヤははじめてキャミーに感心した。感心の仕方に彼女は納得してないようではあるが。
「お、道が分かれてるな」
ここまで盗賊に出くわすことは無かったが、途中で初めての分岐に差し掛かった。直進するか左に見える横穴に向かうかの二択である。
「キャァアアァア! 嫌、助けて乱暴しないで~~~~!」
「は? 飯を持ってきただけだろが! 騒ぐなコラッ!」
その時、横穴の先から女性の悲鳴が聞こえてきた。キャミーがハッとした顔を見せる。
「迷っている場合じゃない。こっちだトーヤ!」
「こっちに行けばコボれるのか?」
横穴に向けて指をさし、トーヤを促すキャミー。それにトーヤは答える。彼にとって大事なのはコンボ出来る相手がいるかいないかだ。
「お前の頭にはそれしかないのか! いいから急げ馬鹿!」
「誰が馬鹿だ! 馬鹿と言ったほうが馬鹿なんだからな!」
「子どもか貴様は!」
ムキになって言い返すトーヤに呆れた目で怒鳴り返すキャミー。そして二人は横穴を進み悲鳴の聞こえる方に向かった。
「貴方たち私を誰だと思ってますの!」
「カプリコン王国の姫様だろうが。だから攫ったんだよこっちは」
「そ、そして私を、は、辱めるつもりなのですね! 裏吟遊詩人の詩みたいに!」
横穴の先は行き止まりになっていて、そこに簡易式の牢屋があった。中には金色の髪をお団子状にした少女が捕らえられていた。
近くには二人の盗賊の姿があり、どうやら食事を届けに来たようだが妙な疑いを掛けられ困っている様子だ。
「あのなぁ。俺らに幼女をどうこうする趣味はねえんだよ」
「どうせならもっと胸の大きな色っぽい女がよかったんだけどなぁ」
「な!?」
金髪の少女が絶句していた。
「まぁ確かにまだ子どもだしな」
「何を呑気な! あの方は我が国の第二王女シャルロット様であられるぞ! 後あれでもあの方は十五歳で成人しているのだから間違っても失礼なことを抜かすなよ!」
トーヤが見た目から感想を述べるとキャミーが眉を吊り上げてトーヤに言い聞かせた。
「マジか……」
トーヤが目を丸くさせた。成人の認識がトーヤのいた地球と異なるのはともかく見た目にはかなり幼い。幼児体形という奴だろう。トーヤにその手の趣味はないが一部の男性からなら支持を得そうな姫様である。
「しかし何故姫なんかがここに?」
「無論盗賊に攫われたのだろう。その、なんだシャルロット様はアルマナ殿下に比べると天真爛漫なところがあると有名だからな」
「アルマナ……うん? どこかで聞いたような?」
アルマナというのはまさにトーヤを召喚した姫様のことであり、しかも召喚されてすぐにコボり脱衣KOまでかました相手だったのだが名前を聞いてもピンっとこないのである。
「とにかく見つけた以上見過ごすわけにはいかない。助けるぞ!」
「お? つまりコボっていいのか?」
「今回は好きにしろ」
「よっしゃーーーー!」
「お、おい! 確かに好きにしろとか言ったが!」
キャミーからの許可を貰いトーヤーが喜色満面な様子で盗賊たちへとダッシュする。
「うぉ! なんだこいつ!」
「おら! ジャンプ大キック!」
「グボッ!」
「からの屈小キックキックキックキックキック! 屈小パン! 中キック――」
「お、お前一体なんなんだいきな――」
仲間の一人が突然飛び込んできたトーヤにボコボコにコボられたことでもうひとりの盗賊が絶句していた。
そして一人片付けたトーヤの目がキラリと光る。
「次はお前だな! おら浮いとけ!」
「ギャフン!」
「ひゃははははは! おらおら空中コンボ! 破天卸! 破光拳ーーーー!」
「ギャァアアァアアア!」
こうして盗賊二人はあっという間にトーヤによってフルボッコにされることとなった。
「チッ、こいつらもう終わりかよ。あぁクソ! もっとコボってコボってコボりまくりたかったてのに!」
「たくこいつは――」
トーヤが文句を言っている間に、キャミーが剣で牢屋を破壊しシャルロットを出してあげた。
「あ、殿下!」
するとシャルロットはキャミーには目もくれずトーヤの下へトコトコと駆け寄った。
「あ、ありがとうございます。わ、私のことを助けに来てくれたのですね」
「うん?」
そしてキラキラした目でトーヤを見上げるシャルロット。そんな彼女を、何だ? という目で見下ろすトーヤ。そんな二人に不安を隠しきれない様子のシャルロットであった――
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