異世界に召喚された俺だが、現代で培った格ゲーの知識と技術で余裕で生き抜いて見せる~ステータスが俺だけ格ゲー仕様だったけど、最強だから問題ありません!~
空地大乃
第1話 格ゲーしてたら異世界来てた
「……一体どこだここは?」
突如見知らぬ場所に立たされる事となり、
闘野は直前までeスポーツの格ゲー部門で優勝を果たした筈だった。闘野は無類の格ゲー好きでありその腕も伝説級だった。
決勝で戦った相手ですら瞬殺で物足りなくも思えたほどで勝利者インタビューを受け答えようとした直後に急に格ゲーのステージが変化したように景色が一変したのである。
「ようこそおいでくださいました勇者様」
闘野の目の前には随分と豪華なドレスに身を包まれた女が立っていた。金髪の巻き髪で碧眼。整った顔をしていてかなりの美人だ。どこかの姫様のような雰囲気も感じる。
闘野はコスプレかな? と首を傾げた。そして改めて周囲を見てみたが、石の壁と柱に囲まれた場所であり足元には大きな魔法陣が描かれていた。
女の周囲には杖を持ちローブを着た魔法使いのような男女が立っていた。他にも鎧姿の騎士っぽい連中も立っている。
「何だこれは? 優勝したからイベントか? しかしセットを整えるのが随分と早いな」
「え~と言われている意味がよくわかりませんが、きっと戸惑っているのですね。それも仕方ありません。急に別の世界から呼ばれてしまったのですから」
「別の世界から?」
目の前の姫様みたいな格好の相手の話に闘野が首をかしげる。だが、ふと思い出した。闘野は何より格ゲーが好きだったが、それ以外のゲームもやったし漫画もアニメもそれなりには嗜んでいた。
その中に確かこういったパターンがあったはずだ。唐突に異世界に召喚されるという話だ。
「もしかしてここは異世界って奴なのか?」
「勇者様の世界から見たらそうなりますね。この世界はアークワクスと呼ばれております。そしてこの国はカプリコン王国。私は一応は王国では姫という立場でアルマナと申します」
「姫なのか?」
「はい、勇者様」
ニッコリと微笑みアルマナが答えた。ふむ、と闘野が腕を組む。
「あの、勇者様のお名前をお聞きしても?」
「俺は闘野だ。名前が闘野で姓が不動」
「まぁ、家名があられるとはしかも素敵なお名前ですね闘野様」
姓があることに驚かれた。どうやらこの国では姓があるのは特別なことらしい。
「それでどうして俺はこんなところに?」
「はい。実はこの国は今危機的状況にありまして」
「危機的状況?」
「はい。ここ最近になりサンク帝国の勢力が強くなって来たのです。サンク帝国は元々は王国で近くにフレイモア王国やサニ王国がありなんやかんやでゴタゴタあって結局近くの巨大国家の介入もあって取り込まれサンク帝国となったのです」
「なんやかんやって?」
「それは、少々事情が複雑なのですが、例えばカジノの遊技台的な物の利権が絡んだりなどです」
なるほど、と闘野は納得した。正直そこまでよくわかったことでもないがきっと色々あるのだろう。
「つまりその帝国に対抗するために呼んだということか」
「そのとおりでございます。ですのでこのような形で急に召喚してしまい申し訳ありませんが協力頂けませんか?」
「といってもな」
闘野が悩んだ。現世ではeスポーツの大会も終わり落ち着いたと言えば落ち着いている。基本ゲーマーとして稼いでいた闘野は地球にそこまでのしがらみもない。
親も放任主義で父など俺より強いやつに会いに行くなどと言って全く家に戻らないような男だったし、母は母でそんな父を追いかけて何故か制服姿で世界中飛び回っているような人だった。
ただ、だからといってこの申し出を受けるかといえば話は別だ。
「そもそも俺は何の力も持たないゲーマーだ。格ゲーなら得意だがリアルファイトなんて大した力になれないぞ?」
闘野が答える。もっとも彼は格ゲーのキャラになりきるためにそれ相応のトレーニングも続けていた為、ゲーマーと言っても体つきはいい方なわけだが。
「その格ゲーというのは何か存じ上げませんが、力については問題ありません。この召喚魔法で呼び出された異世界の勇者は大きな力を持って現れることが多いのです」
「大きな力?」
「はい。試しにステータスと念じて見てください。それで貴方のステータスが浮かび上がる筈です」
「そうなのか? ふむ、ならステータス」
闘野はアルマナに言われステータスと唱えて見た。すると何もない空間に半透明のウィンドウが出現した。そこには確かにステータスらしきものが表示される。
――初回ボーナスとしてスキル『フレーム眼』を取得しました。
ステータス
名前
性別 男
TP150
打撃■
投撃■
速度■
耐久■
気合■
体力800
気力800
スタン値900
必殺技
必殺奥義
逆転奥義
究極奥義
スキル
フレーム眼
(まるでKBFだな……それにしてもこのフレーム眼ってのは一体?)
ステータスを見て闘野が思ったのがそれだった。KBFはキングバトルファイターズの通称である。暫く氷河期が続いた格ゲー業界に突如現れたこのゲームは格ゲーメーカーが垣根を取り払い一眼となって共同で作成したゲームであり、これまでの格ゲーのいいとこ取りをした素晴らしいまさにキングオブ格ゲーであった。
闘野が召喚される直前、eスポーツ格ゲー部門でプレイしていたのもこれである。そしてこのゲームは自らキャラを作ってカスタマイズ出来るモードもあった。このステータスはまさにそれにそっくりなのである。
ただスキルについてはよくわかっていない。これはゲームにはなかった項目であり当然フレーム眼が何かも不明である。
「見えましたか?」
「見えたが、俺がやっていたゲームにそっくりだな。唯一違うのはフレーム眼……そんなのがついてるぐらいだ」
「ゲームというのが何かはわかりませんが、ではジョブを教えて頂いても宜しいですか?」
「ジョブ?」
闘野が小首をかしげた。ジョブと言われても今見ている画面にそんな表記はない。
「ジョブなんてもんはないが?」
「そんな筈はないのですが。あ、さては見方がよくわからないのですね。では私が鑑定しても宜しいですか? それで私からも闘野様のステータスがみれますので」
「なら頼む」
「それでは、鑑定――」
闘野が許可するとアルマナが鑑定を発動させた。そしてジィっと闘野を見るが。
「……ステータスが存在しませんと出ますわ」
「うん? そんなことはないぞ。確かにステータスがある。ふむ、これはまさにKBFと同じだな」
会話を続けながらも闘野はステータスを弄り、TPを消費して必殺技などを追加していった。
TPとはテクニカルポイントの略でもあり文字通りテクニカルなことをすると増える。基本的にはコンボを決める、コマンド投げ(通称コマ投げ)を決める。カウンターを取るなどである。
元のゲームと同じでこうして得たTPでステータスを強化したり必殺技の追加が可能なようであった。
「あの、一つお聞きしたいのですが現在のレベルは幾つでしょうか? 攻撃力は? 防御力は?」
姫様が闘野にそんな質問をしてきた。だが幾らステータスをみたところでレベルなんて表示はない。
「レベルというのはないな。攻撃は打撃や投げでまた変わると思うぞ。防御なら今振ったから■■だ」
「……なるほど。今のでよくわかりました。つまり貴方は、ステータスがないのですね!」
ビシッと指を突きつけアルマナが断言した。だが闘野には意味がわからない。ステータスそのものは存在するからだ――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます