05話「魔獣 卒然」だべ

「抜けた!光だ!!」

最後の切羽(きりは)を打ち崩せば、眼前に森が広がっていた。

「やった…べ」

けっきょく一ヵ月かかってなんとかトンネルを掘り抜いた。

「トンネルが抜けた!」男たちが両手を挙げて喜びの叫び声を上げ、歌を歌う。


山嶺の谷間に森が広がり、眼下に大樹の梢がある。これがモフモフ恐竜の棲家(すみか)の獣王の森か。

こりゃ降りる道を造るのに苦労しそうだな。


そんな先の話を考えていると不意にゴツい大男に抱き上げられた。

コラコラ、美少女にセクハラだぞお前。

見れば二の腕に火傷の痕がある。

怪力ザーグだ。


そうかザーグは、あの時戦った三人組の一人だったからな。あの時の火傷の跡か。

おお、最強村人ABのガリルとハレヤも集まって来た。


よく頑張ったな、お前たち。

まるで菊池寛の恩讐の彼方にみてえな結末だ。いやまだ終わってねぇけどな。

男たちに担ぎ上げられながら俺はいつの間にか眠っていた。


…zzz ………………………ンゴッ…………zzz


2日ぐらい眠り続けたようだ。

目が覚めたら腹が減った。

ヒョウタンの酒を軽く一杯引っ掛けながら恐竜干し肉を齧(かじ)る。

身体は軽い。

さてトンネル内部の地ならしをして、仕上げないとな。

労働前に軽くラジオ体操をしながら適当に着替えて部屋から出た…おや?


部屋の外ではフォールが待ち構えていた。

「困った事になりましたベロンさん。トンネルの出口の森に怪物が現れたのです」


「怪物とは?」


「赤い大蛇と青い大蛇です」


ヘビは嫌いだなあ。


「トンネル工事の者が何人か襲われました」

「何っ?!」

俺はとっさに走り出し、現場に急行した。


トンネルの入り口には甲冑を身に付けた完全武装の兵士が数名集まっていた。さすが本物はカッコイイな。

ひときわ立派な教皇庁の紋章が付いた甲冑武者がヘルムを外すと、中身はハゲ隊長のジャクスさんだった。


「体調はもうよろしいのですか?」

「おう!だいじぶだべ!何人やられただ?」

「8人です」

「8人だと?!」

「うち2名が死亡しました」


村の外れに向かうと、血に染まった包帯をした数人の男たちが十人ほど集まっている。

足元の遺体には死者を送る法衣が被せられ、剣が添えてあった。


「姐(アネ)さんも見送ってやっておくんなせぇ」

兵士たちにうながされ、俺は念仏を唱えながら法衣をめくった。


「あ!」

最強村人ABのガリルとハレヤ…お前たちだったのか…


遺体の周りに居た血まみれの男たちが俺の周りに集まり、青ざめた顔で話し始めた。


「トンネルの出口の工事をしてたらいきなり赤い大蛇が現れて、襲われた仲間を救おうとガリルが助けに出たところに突然青い大蛇が襲いかかって来て…やられました」


血まみれの男が幽霊の様な顔で語っている。

目も虚ろで話すのもやっとな感じだ。


「ハレヤはガリルを助けに行って…やられただな」


俺の言葉を聞いて泣き出すヤツも居た。

みんな俺の言葉を待っている。

そうかお前たち、俺が来るのを待っていたのか。

傍(かたわら)に居たハゲ隊長のジャクスさんに状況を聞いた。


「怪物は2匹も居るだべか?」

「左右から同時に襲って来ました」

「2匹同時に?」

「厄介な怪物です」


ヘビやトカゲがそんな戦術を使うのだろうか?


「わかったべ、そいつらは俺が倒す」

俺は背中のダブルトマホウクを抜いて真っ暗なトンネルの中へ向かって歩き出すした。

ザーグをはじめ無傷の兵士たちが後から付いて来た。

「アネさん!俺たちも」


「来んな!」


俺の気迫に押されて男たちが固まった。なぜこんな大声になったか自分でも分からない。


「俺一人で行くだべ」


甲冑を付けたハゲの隊長さんが俺に向かって敬礼をする。

周囲の兵士たちも一斉にパイク槍を振り上げて俺を見送ってくれる。

ザーグたちも敬礼して見送った。


敬礼なんて村の消防団以来だな。あの連中はあっちの世界で何をしてるだろう。ふと昔を思い出した。


消防団で一番仲が良かった谷口のヤツも管路工事の現場で働いていたけど、マンホールの中で倒れた仲間を助けに行って、自分も死んでしまったと聞いた。酸欠ガスだ。


ドワーフ鉱山でも石炭層の掘削(くっさく)では、酸欠ガスによる死者が出た事がある。

そして助けに降りた仲間も酸欠で死んだ。


見殺しにしてでも生きてほしかった…

だがそれは現場に居なかったヤツの言い分だ。

人間はそうはいかない。

絆(きずな)が強いから死ぬ。

助け合うから死ぬ。


俺は斧を握りしめた。


トンネルの中は暗い。

斧を赤熱化させ松明(たいまつ)代わりに掲(かか)げる。

足元を見ていて気づいたが、ズリ石を取り去って床面がていねいに仕上げてある。

「お前ぇらイイ仕事してるじゃねえか」

彼らへのせめてもの弔(とむら)いの言葉だ。


明かりが見える。何事も無く森に出た。

斜面に沿って作りかけの抜け道がある。


「ここか…」


「怖そうな森ですねぇ」


「うわっ?!びっくりした!」

ボルゲルなんでお前が居るんだよ!どアホう!」

「え?教会からずっと一緒でしたが?」


マジかよ…相変わらず空気読めないヤツだな、コイツ。


ボルゲルが森の方を指差した。

「ははあ、あれが大蛇ですか。怖そうですねぇ」


「え?どこ?」


「ほらあの大きな木の下の岩場」

「え?…??」

眼下の森の手前にこんもりとした岩場が有り、そこに巨大な枯れ木が生えていた。

その岩場の隙間を見回すと…いたっ!赤ヘビだ、デカい!


うわ…目の前が巣だったのかよ。

眠ってるのだろうか?大蛇の頭は見えない。地表から見えるのは胴体の一部だけだ。


「ヨシ!あの胴体の脇腹をチョン斬れば、終わりだべ!っと」

俺はトンネルの出口から崖に飛び降り、そのままマイクラ棒の重力操作鎌を崖の斜面に引っ掛けながら崖をザザザっと滑り降りた。


「眠っている今がチャンスだ、あの岩ごとぶった斬ってやるだべ!」

斧を握りしめればダブルトマホウクが赤く光って唸った。

「行くぞ!必殺!八相はっ…


俺が地面を駆け出すとボルゲルのノンキな声がする

「危ないですよ〜上で〜す」


「バカ!大事な所で大声出すな!って…え?上?」

釣られて上を見上げると上から青い大蛇が頭上から降りかかって来るのが見えた。

「ゲゲっ!間に合わねぇ!」


とっさに転がりながら斧をブン投げると斧は青ヘビの鼻先にぶつかり大蛇は動きを止めた。

「後ろ〜あぶないですよ〜」

「えっ?何っ?!」

いつの間にか赤い大蛇が目の前まで迫って来ていた。


とっさに左手の鳶口で地面に一線を引く「マイクラ!」

地面から薄いコンクリ壁がせり出したが、難なく割られた「ダメか!」

そりゃ鉄筋も無いコンクリート板じゃムリだよな!

いや、素材を変えればなんとかならないか?例えば砂鉄とかダイヤモンドとか…


などと走りながら考えてるうちに斧のブーメランが飛んで戻って来るのを右手に掴み、振り返りざまに赤ヘビのアゴに斬り上げた。

ゴチン!と岩石にブチ当たった様な固い手ごたえがあった。

斬った!…あまり効いてないけどなっ!

なんちゅう硬さだ。

デカいし早いし硬いし強い。トンデモねぇ怪獣だ。


「上です〜」


「青か!」

なんなんだ?この怪物は!

まるで二匹が一体となって上下左右唐攻撃して来る。

ならばこちらも二刀だ。


「冷線砲!ダブルトマホウク!」

両手を左右同時に広げて発射したが、あっさり避けられてしまった。

ダメだ、ヤツらの動きに負けている。なんでコイツら蛇のくせに、こんな完璧なコンビネーションができるんだ??


「上です〜」

クソっ!間に合わねぇ。身体をひねり、斧を赤熱化させて伸び上がりながら切り上げる。

ゴチン!とぶつかった手ごたえが『抜け』た。

この手ごたえは岩盤が抜けた時の手ごたえだ。赤熱化ならイケるかもしれない。

斧を回しながら赤熱化させた。

「ダブルトマホウク!ブーメラン」

赤熱化した斧が回転しながら青ヘビを弾き飛ばした。


『鳶口(とびくち)の空間操作を使って斧を飛び回らせよ』

「え?」また頭の中に魔法の使い方を教える声がした。


そうか!この鳶口(とびくち)の鎌は離れた物も引っ掛ける事ができるのか!

「行けぇ!」左手のマイクラ棒を振ると、斧はそれにつられて自在に飛び回って赤ヘビに斬り付けた。


砂や土を凝縮してコンクリートにできるのも、変身できるのも、この空間操作能力の応用だしな。

さすが伝説の魔王の杖だ。なんでもアリだぜ!


二匹の大蛇も自由に飛び回る斧の奇襲に驚いた様子だ。

よし!チャンスだ!巣の中にあるヤツらの胴体を岩ごとブッた斬ってやる!


「冷線砲!」俺は走りながら大蛇の胴体がある枯れ木の根元に冷線をブチ込む。

岩場がたちまち凍りつき、氷の膨張で岩盤に亀裂が入った。

岩盤を砕くさいにドワーフ鉱山でよく使った手だ。

「行くぞ!ダブルトマホウク!八相発破(はっっそうハッパ)」

俺はジャンプして赤熱化した斧をつかみ取り、大上段から岩盤にブチ当てた。

カチコチに瞬間冷凍された岩盤が、アチアチの超高熱をぶつけられ、水蒸気の爆炎を上げて爆発した。


岩は砕け古木は倒壊し、爆煙のような蒸気が立ち込め、粉々に砕けた破片が空から降り注ぐ。


やったか!…え??


中には二匹の胴体は無かった。

いや、今まで二匹の大蛇だと思っていたのは、じつは胴体がつながっている一匹の怪物だったのだ。

「何だ…ありゃ…」


「あ〜あれは双頭(そうとう)の大蛇『卒然(そつぜん)』ですね」


「双頭(そうとう)の大蛇だと?」


ボルゲルは自慢げに滔々(とうとう)と孫子を暗唱を始める。


   孫子曰く

 『卒然(そつぜん)』とは恒山の蛇なり。

  その首を撃てば尾が襲い

  その尾を撃てば首が襲う


なんで異世界人が孫子なんて読んでんだよ。


「しかし孫子に書かれるほどの伝説の魔獣か、どうりでコンビネーションが完璧なワケだべ」

ならば答えはこれだ!

左右の赤と青の頭を無視して胴体のド真ん中に向かって走り込んだ。

「ダブルトマホウク!八相発破」俺は空中にジャンプして胴体に斬り付け…


背後からボルゲルの声が聞こえた

「あ〜、真ん中を撃つと両方から来ますよ」

「え?」

振り向けば左右に『卒然(そつぜん)』の赤と青の顔があった。

「なにぃ?!先に言えよ!!!だべ」


俺は両手の鳶口(とびくち)と斧を左右同時に斬り開いた。

たまたま両方の大蛇の顔にブチ当たり、間一髪(かんいっぱつ)で逃れる事ができた。


着地して振り向けば、今度は背後から二匹まとめて追いかけて来やがる。

「ぎょえええええ!ズルいぞ!」

美少女を追いかけるとはストーカー怪獣かよ!


ボルゲルがメガネを持ち上げながら感心している。

「二匹となって攻め、一つとなって追う。

孫子曰く『それ三軍の衆を用いる事、一人を使うがごとし』ですな。さすが伝説級の魔獣『卒然(そつぜん)』です」


バカ!のんきに解説してる場合か!


というかヤバい、ドワーフの短足では追いつかれる。

鳶口(とびくち)を斜面に引っ掛けて崖を駆け上がる。

「トンネルに走るだべ!」

俺とボルゲルはトンネルに逃げ込んだ。


いや待て、トンネルの中で一匹づつ倒せば良いのでは?

俺は反転して俺を正面に構えた。

「赤熱!」

周囲が明るく照らされると、トンネルの内側の岩盤を削りながら二つの巨大な『卒然』の顔が迫って来る。

ゲゲっ!二匹いっぺんに追いかけて来やがった!

こりゃ無理だ。

俺たちは反対側出口に向かって走った。


「おいボルゲル!孫子に卒然の倒し方は書いて無ぇのか?」


「続きは…え〜と、呉越同舟、始めは処女の如く、後には脱兎(だっと)の如く」


「あ??どういう意味だべ?」


「呉さんも越くんも乙女の様に一緒にダッと逃げましょうという意味です」


「ウソつけ!どアホう!」


明かりが見えてきた出口だ。

出口には隊長さんたちが居るはずだ。


俺とボルゲルがトンネルから転がり出るや叫んだ


「来るぞ!怪獣だ!!」


甲冑武者たちが驚いた表情をしていたが「戦闘用意!」一斉に整列し槍を構えた。さすがプロだ一瞬で理解した様だ。


『変身せよ!勇者ベロン!』頭の中にあの声の指示が響いて来た。

了解だ!ネビュラ遊星。


俺は起き上がりざまに片膝着いて鳶口(とびくち)を頭上に指し上げた。

「変身っ!ぴぴるまぴぴるま超力招来!!」

鳶口(とびくち)の先から光の輪が発生し、俺の全身を引き伸ばす。

手足はスラリと長く伸び、長く飛び跳ねた赤い髪、クビレたウエスト、ピチピチの小さな服からはみだしそうな大きな乳!

大きな乳!!

あ、いけね。

この緊急時に思わず自分で揉(も)んでしまった。


「来るど!」

生臭い轟音が近づいて来て、トンネルいっぱいから巨大な二匹の大蛇が飛び出して来た。

チャンスだ!

俺は大蛇に向かってジャンプした

「赤熱っ!八相発破(はっっそうハッパ)!」

変身で強化したパワーで斧を振り下ろす。

今度は赤ヘビの胴体に半分ほど切り込めた!

イケる!これなら戦える。


のたうち回る赤ヘビをすかさず兵士たちがパイク槍で刺す。早い。

さすが最前線で戦う精兵部隊だ、判断が早い。思い切りが良い。

赤ヘビは彼らに任せよう。

俺は上の青の相手だ!

「ダブルトマホウク!ブーメラン!」

回転斧を投げ付けたが青ヘビは頭を振って斧を弾いてしまった。

弾かれた斧が崖に突き刺さった。

なんつう硬い鱗(うろこ)だ、さすが伝説の魔獣。


青ヘビが空中で口から毒を吹き出す。

「ウギャ!なんで青ダイショウが毒吐くんだよ!」


とっさに避けたが少し服にかかって布がボロボロに腐食してきた。酷(ひど)い臭いだ。

きっとこれは美少女の服だけ溶かすサービス攻撃…ゲホっ!あれ?これヤバい毒じゃね?


青ヘビがまた毒を吐いて来る。

「冷線…」俺は氷の壁で毒液を防ごうと鳶口(とびくち)を向けたが間に合わない。


ヤバイ!毒がかかるか…と思ったが、マイクラ棒の先端に透明なバリアが発生して毒液が弾かれ飛び散った。


「え?」


『空間操作バリアじゃ。重力レンズの傘で、あらゆる光線、熱線、物理攻撃を全て横へ逸らす事ができる』

また頭の中にいつもの魔法解説が響いてきた。


そうか、これもマイクラ棒の空間操作能力が空間をねじ曲げてバリアにしてるんだな。

どうやらここのトンネル工事でいろんな魔法を使いまくったせいか俺の魔法の力はレベルアップしているみたいだ。


再び青ヘビが毒を噴射してくる。

「空間湾曲!ディバイディング」

鳶口(とびくち)を向けながらヲタ呪文を唱えると周囲の空間が歪み、毒は全部横に弾かれて流れ落ちる。

空間湾曲バリアの傘だ。

さすが魔王の杖だ!なんでもアリだぜ!


よっしゃ!これで毒は通じねぇぞ。

服はボロボロになったけどな!


青ヘビがカマ首を高く持ち上げた。

空間湾曲ごと叩き潰すつもりか!

「戻れ!ダブルトマホウク」

鳶口(とびくち)を振ると斧が回転しながら戻って来た。


回転する斧を鳶口(とびくち)の先端で受け止めれば、草刈り用の刈払い機みたいな回転ノコギリになる。


「夏場の草刈りでヘビ相手には刈り払い機が一番だべ」


空間湾曲の超重力で斧の回転速度を上げる。

「高速運転!」

腰を落としマイクラ棒を脇に構えた。

青ダイショウをできるだけ引き付けるためだ。

「来やがれだべ!」


青ヘビは上空から襲い掛かって来る

赤熱化した回転斧をスレ違いざまに振り抜いた。


「王武刈刃(オーブかりば)!一刀両断(いっとうりょうだん)!」


脇構えから刈り払い機をビュンと振り抜くと青ヘビの装甲が首元から2mほど裂けた。

ついでに俺の服もズッコケたがサービスだ。


青ヘビは相当な深傷のはずだが、カマ首を持ち上げてまだ戦うつもりだ。

瀕死(ひんし)の赤ヘビが隣に並んだ。


なるほど、二匹同時なら回転刈り刃も通用しないか。

最期の力で赤と青の同時攻撃を仕掛けるつもりだろう。


「そうか…二人で来るのか」


斧を右手に持ち直し、左手の鳶口(とびくち)を向けて構えた。

コイツらの同時攻撃にはコンクリートも空間湾曲も通用しない。

だが、もっと硬い材質ならば。


二匹の大蛇が同時に飛びかかって来た。


「マイクラ」


地面に一線を引けば、カミソリの様に光る石英の壁が天空めがけて突き上がった。

水晶の壁に切断され二つの大蛇の首が転がり落ちた。


水晶の壁はパリン!と粉々に砕け散り、空から光る破片が降り注いだ。


「お前ぇたちと同じく二人で戦うのが得意なヤツらが居たべ」

一人が討たれれば、もう一人は必ず助けに来る。

絆が強いほど…だから死ぬ。


伝説の魔獣『卒然(そつぜん)』は倒れた。


つづく!だべ



【ボルゲルの兵法講座】

さて今回出てきた兵法は

 ○率然

 ○呉越同舟

 ○ 三軍の衆を用いる事

 ○始めは処女の如く、後には脱兎の如く

これらは孫子の九地篇の教えですね。

孫子九地篇は心理戦を用いて味方を操り、全軍の勢力を1つに集結させる。

あるいは敵を操り分散させる。などの極意が説かれています。

なぜ極意か?というと、これは正面攻撃で敵を撃破してしまう事が可能だからです。


さて率然(そつぜん)の様に、左右一体となった攻防を使える様になるにはどうすれば良いのか?

それは味方を、いきなりピンチに追い込む事です。

そうすれば兵士たちは普段から仲が悪くても、ピンチになれば全力で助け合える。

その方法が呉越同舟であり、

その結果が三軍の衆を犯ちうる事です。

極限状態でピンチになれば協力せざるをえない。これば人間どもの心理です。

まるで菊池寛の恩讐の彼方ですね。ひら、


○ 始めは処女の如く 後には脱兎の如く

これは心理戦で敵の有利な状態にさせ、油断した瞬間に全力攻撃を仕掛ける事です。

これを「開闔」(敵の戸口を開ける)と言います。


勝負の駆け引きは敵軍と味方が接触する直前の「戸口」で決まります。

これは剣術(兵法)で言う間合の攻防です。

敵はこちらに切っ先を向けて構えている。

まずこの切っ先を逸らさないと正面攻撃はできません。

しっかり城門を閉じて待ち構える敵もまた城門を開けさせないと正面攻撃できません。


処女のように従順に振る舞えば敵は油断して侵入口を開ける。

処女とは獲物ですね。アホな敵ほど獲物に釣られて飛び付こうとして城門や剣の切っ先を開けてしまうものですよ。ふっふっふっ。


そして敵のスキを見つけたら、まるで兎のようにダッ!と、真正面から素早く全力攻撃する。

これが兵法の間合の攻防ですね。


ぜひ皆さんも使ってみてください。

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