集合写真

仁城 琳

集合写真

卒業アルバムを開く。私は一枚の写真を見つけた。集合写真。懐かしいな。集合写真に映るみんなを見る。懐かしい顔、みんな元気にしてるのかな。あれから何年経ったんだろう。私が今…あれ、私今何歳だっけ。

瞬きをして写真に視線を戻す。あれ?なんだかみんなの顔が歪んでる?歪んでるというかノイズがかかっているように顔がはっきりと見えない。んん。目を擦る。それでもやっぱり写真はおかしいまま。どうしてだろう。見えない。みんなの顔、思い出せない。


仲の良いクラス。私たちのクラスは学校内でも特に仲の良いクラスとして認識されていた。確かに仲は良い。カーストなんて無いし、もちろんいじめも無い。みんながみんなを尊重していてみんなが輝けるクラス。クラスメイトはみんなそう感じていたし、先生も親もみんなの目にそう映っていた。はずだ。一人を除いて。

いじめられていた訳では無い。でも私は何故か疎外感を覚えていた。なにが、と問われれば分からないとしか答えられない。しかしどうしようも無い孤独を抱えて過ごしていた。自分だけが、このクラスの一員ではないような、そんな感覚。

孤独を抱えていただけの私はいつかクラスメイトを憎むようになっていた。クラスメイトも、先生も、親も、どうして私の孤独に気付いてくれないのか。どうして誰も理解してくれないのか。どうして誰もわたしの気持ちに気付こうとしてくれないのか。憎い。憎い、憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い。


私はとっておきの仕返しを思い付いた。私の孤独に気付けなかったお前らへ。全て手遅れになってからやっと気付けばいい。お前らのせいにしてやる。クラスメイトをいじめた子供。生徒のいじめ問題を放置した教師。子供の異変に気付けなかった親。レッテルを貼られて生きろ。これが私の復讐だ。お前らの顔なんて思い出したくもない。


…。…。

集合写真に写るみんなの顔はやはり見えない。私の顔だけがはっきりと見える。その顔が激しく苦痛に歪む。血が滲む、脳症が飛び散る。目玉が飛び出る。体液が流れ出す。もはや自分の顔かどうかも分からない、私の、写真?

「私。」


私は学校の屋上から飛び降りた。遺書を残して。クラスメイトにいじめられた、先生にも親にも相手にしてもらえなかった。孤独に耐えられないので、私はこの世を去ります。

この遺書を見て残された者たちが苦しみますように。


この写真はあるはずが無い。卒業アルバムに私が写ってるはずがない。

「あれ。私、もう生きてないの?」

ぼとりと何かが落ちた。目玉。ヌルヌルと生温い液体が流れる。

「…はっ。あは。」






卒業アルバムを開く。私は一枚の写真を見つけた。集合写真。懐かしいな。集合写真に映るみんなを見る。懐かしい顔、みんな元気にしてるのかな。あれから何年経ったんだろう。私が今…あれ、私今何歳だっけ。


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