姫宮 小羽の気持ち 後編
楽しかった部活動見学も終わり、桐生さんの迎えで私は家に帰る。
「おかえり、小羽」
「ただいまパパ」
「機嫌良さそうだけど何かあったのかい?」
「え!なんで分かったの?」
「そりゃあ、私の愛しの娘だからね。それくらいは分かるよ」
「へー」
「も、もうちょっと反応くれてもいいじゃないか...」
こんな感じでおちゃらけてるのが私のパパ、姫宮 悠だ。実はパパは姫宮家に婿入りしているから、姫宮はママの姓なのだ。姫宮家に男が生まれなかったから、姫宮の名前を残すためにパパを婿入りさせたとかなんとか...
ちなみにママは、姫宮家の当主として毎日遅くまで仕事してるのだ。パパは専業主夫みたいな感じでいつも家にいる。
「で、天音ちゃんと何かあったのかい?」
「ううん、あーちゃんじゃないよ」
「え!?じゃ、じゃあ誰なんだい?ま、まさか彼氏ができたとか!?!?」
「違う違う、新しく仲良い友達が出来たの」
「なんだぁ、ならよかった。そうだ、今度うちにその子を連れてきなさい。小羽の友達なら誰でも歓迎するから」
「うん、いつかね」
「じゃあご飯の用意しとくから、お風呂先入りなさい」
よし、うちにすーちゃんを呼んでもいいという言質が取れたから今度誘おう。そう決意しながらお風呂に入ることにした。湯船に浸かっていると、あーちゃんからメッセージアプリで何か送られてきた。なになに...『この格好変じゃないかな!?』ってセリフと共に自撮り写真送られてきてる。
え、なに、ついにあーちゃんもオシャレに目覚めた!?今までオシャレのおの字もなかったあーちゃんに何の心変わりだろうか。これは明日学校へ朝早く行って問い詰めるしか無いな。うん、そうしよう。
◆
「あーちゃん、昨日のあれってどういう事なの!?」
「なんの事だい小羽?あと語尾」
あ、まずいまずい。焦りすぎていつもの調子を崩してしまった。朝も早く周りに生徒がいないから良かったものの、もう少し遅い時間だったら私のイメージが少し崩れるところだった...
「とぼけないで欲しいな〜。昨日のメッセージの事だよ〜?」
「あぁ、鈴と会うために制服じゃあれだと思ったから私服選んでみたんだ」
「なんでここですーちゃんが関係してくるのかな?昨日なんの用事で何があったの〜?」
「マフィンのお礼と伝えたいことがあったんだよ。内容は.........内緒だ」
おかしい、嫌な気配しか漂ってこない。今まで私とあーちゃんの間に隠し事などなかった。なのにここに来てすーちゃん関連で秘め事なんて、勘繰ってしまう。問い詰めようと言葉を発する直前、教室の扉が開く。そちらを振り向くとすーちゃんが登校してきたのだ。
「お、おはよう。2人とも」
「鈴、おはよう」
「すーちゃん、おはよ〜」
仕方ない、ここは一旦見逃しておこう。後から問い詰めるつもりだけどね。
3人でたわいもない話を先生が来るまでしていたが、どうにも2人の様子が少しおかしい。すーちゃんは顔を赤らめ、チラチラとあーちゃんの方を見るし、あーちゃんはその視線を避けるように話を続けている。やはり二人の間に何かあったに違いない。私だけ除け者にされてる感じがして少し嫌だな...
先生が来て、ホームルームが終わったから体育のため、更衣室に移動する。ここで私は会った時から気になっていた、すーちゃんのお胸を触らせてもらうことにした。
「すーちゃんってずっと思ってたけどお胸大きいよね〜」
「!?」
ふむふむふむ、これははっきりいってすごい柔らかくていい。
「ん...///ひ、姫宮さん!?ちょ、やめ」
「あーちゃんはちっちゃくて揉みごたえないないけど、すーちゃんのは揉みごたえしかなくて気持ちいいね〜」
「小羽!なに言ってるんだ!?しかもなんで鈴の胸を揉んでいるんだ!?」
「天音さんはこんな時に来ないでー!」
さっきの会話での意趣返しも込めて、あーちゃんを煽る。少しスッキリしたからこれで勘弁してやろう。ひとしきり揉み終えた私達は、チャイムもなったので急いでグラウンドへ出る。
「ではこれより、体育を始める。まずは2人1組になって準備運動だ。早くペアを作れー」
先生から言われて直ぐにすーちゃんを探すが、あーちゃんが声をかけたようだ。出遅れた私はとりあえず近くにいた瀬名さんをペアを組むことにした。瀬名さんとのペアストレッチも特筆すべきことも無く終わる。強いて言えばすーちゃんの大きいお胸がストレッチで強調されてるくらいかな。
「おし、ストレッチも終わったし今日は50mのタイムを測るぞ」
体育祭がすぐにあるから、足の速さを団決めの参考にするのかなぁ...お、2番手でいきなりあーちゃんとすーちゃんが走ることになってる。あーちゃんは陸上の県代表選手に選ばれかけてたから早いのは分かってるけど、すーちゃんはどれくらいなんだろう?
「みてみて寝夢ちゃん!すーちゃんの待機ポーズ可愛いよ〜!」
ふぁぁぁぁぁぁぁぁ、クラウチングスタートじゃなくて小学生とかがよくやってる待機ポーズだ。可愛ぃぃぃぃ。私たちの声が聞こえたのか、すーちゃんは見よう見まねクラウチングスタートの構えに入った。
「On your marks・・・set」
パァン!
頑張れすーちゃん...!
「あ」
すーちゃん転んじゃった...大丈夫かな...?駆け寄ろうとするもきちんとゴールまで走りきったようで、そのままあーちゃんに連れられて保健室へ行ってしまった。
私の番になり、悶々としたまま走るも記録更新はせず、なんなら少し遅くなっていた。授業も終わり、昼休みに突入すると少し悩んでいるすーちゃんが戻ってきた。怪我をしてないか聞くも、「膝を擦りむいただけだから大丈夫」と、返された。
「はぁ...」
「急にため息なんてついてどうしたのすーちゃん?もしかして英語の小テストの結果が振るわなかったとか〜?勉強できないすーちゃんも可愛いけど、一緒に進級したいから今日の放課後すーちゃんの家で勉強一緒にしようね〜」
「いや待て、小羽!鈴は体育がダメダメだったから落ち込んでいるんだ。だから私とランニングをして、体力を付けることから始めなきゃいけない」
少し憂鬱な表情をしているから、落ち込んでるのかと思って冗談を言ったらあーちゃんが横入りしてくる。ほんとになんなんだ。今まであーちゃんが1人に執着することは絶対になかった。なにより、私以外に興味を向けることもほとんどなかったのに...やっぱりすーちゃんと何かしらあったのだろうか......
◆
「あー、楽しかった〜」
何がかと言うと、すーちゃんのお家でお勉強会をしていたのだ。まさかお勉強会ok貰えるとは思ってもなかったから楽しかったし何より、妹に教えてる気分を味わえてすごく嬉しかった。私は一人っ子だからそういう関係に憧れてたんだよね。
だけど問題が生じてしまった。あーちゃんが何故あんなにすーちゃんに執着するか、ゆらちゃんの言葉で気づいてしまったからだ。確信まで至らなかったから、すーちゃんに問いただしたらあっさりと吐いてくれた。恋とか分からないけど、すーちゃんを取られるのが何故か嫌で堪らなかったから私を意識させといた。
あれから数日経つも、あーちゃんのアタックは変わらないしすーちゃんも満更でも無さそうで腹が立ったから、放課後桐生さんに頼んですーちゃんを誘い2人きりになれる場所へ連れ出すことにした...
後書き
最後までお読み下さりありがとうございます。そして、1ヶ月ほど更新出来なくてすみません。諸事情によりなかなか執筆する時間がなくて書けませんでした...来月も同じ状況なるかもです...
次回からは鈴視点でお届けするので楽しみにしていてください!鈴視点は書くの楽しい!
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