姫宮 小羽の気持ち 前編


私は、すーちゃんを想うこの気持ちと、今の関係を天秤にかけるが、どちらも手放したくなかった。だけど無理だった。『まだ付き合ってない』『悩んでいる』なんて言われたらチャンスだと思ってしまう。


「だって、黙ってるままだとあーちゃんに取られちゃうし...」と私は頭の中で己の行動を正当化する。だが、私だって分かっている。相手は女の子で、しかも親友の想い人でもあることを。


この告白に成功したとしても、親友との友情は失われる。失敗した場合、想い人との今のこの関係が終わってしまう。どちらも耐えれないけど、私は我慢できなかった。それほどまでに私は彼女を欲していた。欲しいものは全て手に入れたかった。手に入れられないものなんて人生で1度もなかった。だって私は姫宮財閥の一人娘だから。


服が欲しかったら、何着でも買って貰えた。ピアノを習い始めた時は、家にグランドピアノがすぐに設置された。料理を練習し始めると、私専用の最高級器具が全て用意されていた。なのにどうだ、本当に欲しい想い人は私のものにならず、親友に取られそうだ。もしも親友が告白に成功してしまったら、私たちが紡ぎだす予定だった未来はどうなるのだろうか。いつからこんなことを思うようになったんだろう...






高校での私のクラスは、エスカレーター式でそのまま上がってきた子ばかりだった。だが隣のかわいい女の子は、初めてみる顔だったから、気になった私は声をかける。


「ねぇねぇ、初めて見る顔だけど外部の子かな〜?」


中学時代は私がクラスメイトに話しかけても『姫宮様と話すなんて恐れ多いです』とか言って離れていくから、私のことを知らない子と仲良くなりたかったのだ。


「え、えっと...そうなの!だから、もしよかったら初めての友達になってくれると嬉しいです!中西 鈴って言います!あなたみたいな凄い可愛い子と友達になれたら嬉しいなぁ......なんて...」


そんな私の思惑とは裏腹に、彼女は気さくに返事をしてくれた。可愛いなんて今までの学校生活で面と向かって言われたことのなかった私は、少し恥ずかしくなってしまう。裏では言われてるだろうけど、私は聞いた事ない。だから全てが新鮮だ。


「アハハ、いきなり可愛いなんてありがと〜、こちらこそよろしくね〜。私は姫宮 小羽。鈴だから...すーちゃんって呼ばせてもらうね」


大丈夫かな、照れてることバレてないかな。ドキドキしながら返事をし、あだ名を付けてあげたが喜んでいるかは分からない。ただ、拝まれているが...拝まれていると私の親友であるあーちゃんが来たから紹介をする。


「あ、すーちゃん紹介するね。今目の前に居るのが、私の小学校からの親友の天音 心愛。あーちゃんだよ」


「よろしく、うちの小羽と仲良くしてくれてありがとう」


「こちらこそよろしくお願いします。心愛って名前凄い似合ってて苗字と相まって可愛くて...とりあえず天音さんに凄いぴったり!」


「「!?」」


驚いた。あーちゃんはこのルックスと恵まれた身体能力を活かして、スポーツマンとして活躍しているから色んな人から『イメージと違うよね』と言われている。その度にあーちゃんは裏で傷ついていることも知っている。多分名前について褒めたことある人は私くらいしかいない。


なのにすーちゃんは出会ったばかりだからか知らないけど、あーちゃんの名前を可愛いと言っている。お世辞だとしても嬉しいだろう。今まで何回も外部の子と接する機会があったけど、そんなこと言われてこなかったから。その証拠にその後行ったテスト中も、帰り際もずっとすーちゃんのことを気にしていた。


学校が終わり家に帰ってからも考えることはすーちゃんの事ばかりだ。だって、あんな子初めてだもん。あーちゃんの名前に可愛いって言うし、私にも可愛いという。別の学校では可愛いが常用句なのかな、そんな些細なことばかりが頭の中を駆け巡る。ご飯を食べてる時も、風呂に入ってる時も、考えるのはすーちゃんのことばかりだ。


夜になってもなかなか眠れずにいた私は、ようやくすーちゃんに惹かれていることに気がついた。そこで、明日の部活動の見学にすーちゃんを誘うことに決め、胸の高鳴りを抑えようとした。結局それは逆効果で、すーちゃんと一緒に過ごす時間が楽しみで心が躍るだけだった。




あとがき


最後までお読み下さりありがとうございます。そして更新が遅くなって申し訳ありません。

前回の話ですが、個人的にダメだったと思うので今回の章が終わり次第直したいと思います。


話は変わりますが、いいね、星マークなどいつもありがとうございます。頑張って続き書きますので応援よろしくお願いします。

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