部活動見学編


話し合いが終わり、部活動見学の時間になると嬉しそうに姫宮さんがこっちを見る。


『すーちゃん、じゃあ料理部が活動してる調理室に行こっか〜』

『ま、待て小羽、絶対に鈴には手を出すなよ!』

『じゃあね〜あーちゃん』


慌てたように天音さんが何かを言っているが、私は今姫宮さんに耳を塞がれていて何も聞こえないのだよ。


私たちの教室がある2階から1階へ降り、暫く歩いていると、調理室というプレートがかかっている教室に着いた。ここが料理部の活動場所かぁ、と思いながら扉を開けると見たことある人がいる。


『ん〜、美味しいです!』

『瀬名ちゃんは美味しそうに食べてくれるからお姉さんたち作りがいがあるわ〜』


頬が落ちそうな顔で、先輩たちに餌付けされてるのは瀬名さんだ。何してるんだこんな場所で。教室にいないと思ったらこんなとこにいたのか。


『え、えっと瀬名さんも料理部の見学かな?』

『んーと、美味しそうな匂いがすると思ってここに来たの』


わーお、なんだその超絶嗅覚は。犬なのか?おっぱいも大きいし可愛いからうちで飼おう。誰がなんと言おうとこれは決定事項だ。

頭の中で瀬名さんを持ち帰る方法を考えていると肩を叩かれる。


『すーちゃーん?』

『え?』

『もー、すーちゃん聞いてなかったの〜?今から簡単なお菓子作り体験するから手洗ってきてだって〜』

『わ、わかった!瀬名さんはいっしょにお菓子作りする?』

『...ん、僕?僕はみんなのお菓子採点係に任命されてるからしないよ』

『あ、そうなの?』

『すーちゃん...すぐ騙されるね〜...』

『え!?』


なんと!今からマフィンを作るそうだ。私の料理の実力を見せる時が来てワクワクしてきた。瀬名さんには騙されたから抗議の視線を送ろうとしたらもう寝てる。なんだこやつ。寝る子は育つの典型例じゃないか。


『みんなー、マフィンの作り方説明するからこっち集合ねー』


あ、先輩が呼んでる。とりあえず説明だけでも聞かなきゃ。まぁ、私にかかればマフィンなんてよゆーなんですけどね。フフン

先輩の説明も終わってマフィンを作ろうとすると、姫宮さんから作ったマフィンの交換をしようと言われた。なんだその陽キャみたいなイベントは!陽キャイベ発生に興奮した私は、一にも二にもなく首を縦に振った。


(何味つくろっかなぁ)


1人4つまで作れるらしいから、とりあえず瀬名さんの試食用、姫宮さんとの交換用、由良用、あ、どうせなら帰りに天音さんに渡すのもいいかな。とか考えていると窓際で寝ている瀬名さんのお腹が鳴った。

その音を皮切りにみんなマフィンを作り始めた。私は急いで味をチョコ、抹茶、レーズン、マーマレードの4種類に決めて作業に取り掛かった。


大したハプニングもなく、マフィンを作り終わって休憩してると、瀬名さんと姫宮さんがきた。


『あーん、ん!このマーマレードマフィン、僕が食べた中で1番美味しいよ!』


あれ、1番と聞いて先輩がこっちにやってきて、私のマーマレードマフィンを1口食べた。


『なにこのマフィン!?すごい美味しいじゃない。貴方、うちの部活に入るつもりは無い!?』


ふむ、ここまで先輩から褒められるとは...日頃から鍛えたこの料理の腕前はこの時のためだったのか。


『すーちゃん、早く私のと交換しよ〜』

『あ、うん!するする!』


姫宮さんのマフィンは...さつまいもマフィンだ!私の時もそうだけど、ここの部活使える材料ありすぎでしょ...なんか冷蔵庫もでっかいしさすが私立。

んー!姫宮さんのさつまいもマフィンも美味しい!私のと違って外側がサクサクで中がしっとりしてていいアクセントになってる。


『姫宮さんのマフィン、私のと違って外の生地サクサクしてるけどなにしたの?』

『んふふ〜、アーモンドプードルで作ったクランブルっていう生地を使って作ったんだ〜』


クランブルとはなんぞや、そう思った私はネットで調べる。...簡潔に言うとアーモンドプードルとかを使ってぽろぽろと崩れる生地を乗せて焼いたもの、らしい。お菓子作りなんて中々しないから初めて聞いた。姫宮さんすごい...


姫宮さんのマフィンを食べていると、部活動見学終了時間になったらしい。

楽しかったな、初めての事だらけで私はとても気分が高揚しているのを感じる。


『じゃあ天音さんを迎えに行こうか』

『ん〜、すーちゃんは私と2人きりじゃだめなの?』


え...?


『で、でも...天音さんにもマフィンあげたいなぁって...』と狼狽えながら言った私に対し、姫宮さんはケラケラとしながら、『すーちゃん、ただの冗談だよ〜』と返された。だけど姫宮さん、姫宮さんの冗談は本心みたいで怖いよ...


その後、私たちは今日あった楽しい出来事を話しながら、天音さんを迎えに校門へと向かった。


校門へ着いた私が彼女に抹茶マフィンを手渡すと、彼女は大きく微笑んで喜んでくれた。しかしその時、天音さんが何かを呟いたようだったが、あんまり聞こえなかった。気になった私は天音さんに尋ねようとしたけど、彼女は沈思に浸っているようでやめた。


家に帰ってダラダラしてると天音さんから、今から会えないかというメッセージが届いた。マフィンのお礼がしたいっぽい。コンビニに行こうとしていた私はとりあえず場所を聞き了解、とだけ送って家を出た。


指定された公園に行くと、そこには天音さんが既に立っていた。

私は、天音さんの姿を見ると、改めて彼女の美しさに驚く。髪の毛をポニーテールにまとめ、風に揺らしている彼女の目は私を見つめていた。私は、彼女の美しさに圧倒され、言葉が出てこない。

彼女は、そんな私に微笑みかけて、口を開いた。


「突然なんだけど、私と付き合ってくれないか』


..........????は??????








あとがき


こんにちはツナ缶です。最後まで読んでくださりありがとうございます。

初めて書いた作品で少しドキドキしてますが、何人かの方に小説のフォローを頂いて1人で喜んでます。ありがとうございます。

頑張って続きを書くので応援よろしくお願いします。

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