小中とぼっちだった私が高校デビューしていつのまにか百合ハーレムを作っちゃうお話
ツナ缶
高校入学編
私――中西 鈴は世界一可愛かった...らしい。
そう親から言われ続けていた小学1年生の私は、なんの疑いも差し挟まずその言葉を鵜呑みにして、小学校での毎日を謳歌していた。
『すずちゃん、まいにちわたしかわいいってきくのこわいからやめたほうがいいよ?』
『なんで?わたしはかわいいからいいんだよ?』
『ぜんぜんよくないよ...』
なんでそんなことを言うのか分からなかった私は、それでも毎日同じ質問を色んな人にしていった。だが何故か友達が減っていき3年生になる頃には、遂には学校で仲良くしてくれる子が居なくなってしまった。
今思えば絶対にありえない。人生をやり直すなら小学1年生に戻りたいくらいだ。
だが現実はそんなに甘くはなく、時間は巻戻らない。中学生になり、頑張って友達を作ろうと努力しても、そんな私の噂を聞いた人からは憐憫の眼差しを向けられ、避けられていた。
そのまま少し不登校気味になり、もんもんしてる内に月日は経ち、なんの成果も得られぬまま卒業してしまった。
『次こそは絶対に失敗できない...』
そう決意してからは早かった。春休みの間は毎日ネットで[陽キャのなり方][話が続く方法]など、考えつく限りを調べ髪型や服装など、見た目を中心に変えに変えた。もう少し未来の高校デビューにむけて。
中学校での悲劇を学んだ私は、母校である北部中学校から離れた知り合いのいないエスカレーター式の私立北坂学園を受験し、奇跡的に合格することが出来たのだ。
受験勉強は沢山していたが、如何せん地頭が悪いものだから親からは記念受験だと思われていたらしいが...
◆
そしてついに待ちに待った入学式が終わり、ちょっとした自由時間だ。
『ねぇねぇ、初めて見る顔だけど外部の子かな〜?』
そんな回想をしてると、突然隣の子から話しかけられてしまった。
突然話しかけられた私は、少し驚きながらそちらを向くと黒のセミロングがよく似合う、俗に言うゆるふわ系女子の具現化みたいな女の子がこちらを向いていた。
『え、えっと...そうなの!だから、もしよかったら初めての友達になってくれると嬉しいです!中西 鈴って言います!あなたみたいな凄い可愛い子と友達になれたら嬉しいなぁ......なんて...』
突然の事だった為、慌てて返事をしてしまいまともに返事ができたかもわからない。なんか少しおかしいことも言ってしまったかもしれない。
『アハハ、いきなり可愛いなんてありがと〜、こちらこそよろしくね〜。私は姫宮 小羽。鈴だから...すーちゃんって呼ばせてもらうね』
そんな少し挙動不審だった私に対し、可愛らしく笑い友達になってくれたうえになんとすーちゃん、というあだ名まで付けてくれたのだ。小羽様、一生ついて行きます.....
そうやって小羽様を拝んでいると、前の方の席からすごい美人がこちらに歩いてきて私たちの前で止まった。
『あ、すーちゃん紹介するね。今目の前に居るのが、私の小学校からの親友の天音 心愛。あーちゃんだよ』
『よろしく、うちの小羽と仲良くしてくれてありがとう』
『もうあーちゃん、子供扱いしないでよ〜』
そう紹介された私は、目の前のポニーテールが似合う王子様みたいな超絶美人と超絶美少女との絡みを何故か見せられている。これがエモいってやつなのか...?
黙っていた私に気づいたのか、姫宮さんと天音さんがこちらを見てくる。それに気づいた私も急いで挨拶する。
『こちらこそよろしくお願いします。私は中西 鈴っていいます。心愛って名前凄い似合ってて苗字と相まって可愛くて...とりあえず天音さんに凄いぴったり!』
そんな私の言葉に2人ともすこし驚いた顔でこちらを見てくる......なんか言っちゃいけないこと言ったかな....?え、これやばい????
そう焦っている私に対して、天王音さんは少し喜びながら手を差し出してくれた。
『名前が似合ってるなんて小羽からしか言われたことがないからビックリしたよ。鈴も鈴みたいな可愛らしい声でいい名前だね』
褒めたら逆に褒められてしまった....直ぐに知らない人と仲良くできる、これが陽キャなのか....褒められるなんて親と妹からしかされなかったから少し新鮮だ。
差し出してくれた手を掴んでからは正直記憶がほとんどない。だってあれから天音さんが、自己紹介中も終わったあとも、テストを受けている時も帰る時もチラチラこちらを見てくるからだ。何をしたワタシ...
そして、あの後行われた自己紹介とテストは多分普通に済ませれたと思う。多分......
何故入学式にテストがあるのだ...聞いてないぞ...
◆
2人のおかげでクラスの1軍に入れてしまった1軍女子の私(笑)は、嬉しさのあまりスキップしながら家に帰った。
『ふぁぁぁぁぁ...』
空の色がパステルカラーできれいだ。久々に家族以外と話したから少し疲れて寝ていたのかな。
『おねぇちゃんただいまー!!!!』
ドーン!!!!!!!!
『グフッッッッッッ!』
起きたばかりの私のお腹に誰かが飛び込んできた。まぁ、一人しかいないが......
『おねぇちゃん?ただいまー?』
『おかえり、ゆら』
そう、妹の由良だ。由良はいつも仕事で帰るのが遅い親に変わって世話をしていたからとても姉っ子だ。いつも『おねぇちゃんと結婚する!』と言っているから、重度のシスコンと言っていい.....だが小学6年生だから、そろそろ反抗期で私から離れていくかもしれない...
そんなことがあったら私と話す数少ない人が減るから是非ともやめて欲しい次第だ。そう、絶対に。
『できたら朝も含めて私のお腹に飛び込んでくるのやめて欲しいなぁ...?』
『やだ!おねぇちゃんが起きないのが悪い!』
そんな私の願いも虚しく、直ぐに拒否される。これが毎日のようにされているせいで初めの頃はお腹に青アザのようなものがちょくちょく出来ていた。
途中からはお腹にクッションを置いていたが、今日は忘れていた為明日は青アザが出来るかもしれない...
『そうだおねぇちゃん、友達できなかったよね?』
急に由良が聞いてきたが何故か決めつけてくる。しかし、今日の私はもう昔とは違うのだ...!
『ふっふっふー、ゆら、なんとお姉ちゃん超可愛い友達が2人出来ちゃったのだよ!』
『え........うそ......』
由良は絶句しているが私は構わず説明する。
『隣の子が話しかけてくれたんだけど、その子がめちゃくちゃ可愛くてしかも友達になってくれたの!そのまま成り行きでもう1人とも友達になれちゃった!2人ともめちゃくちゃ可愛くて今お姉ちゃん多分めちゃくちゃ凄いかも』
『ふぅん...』
何故か由良は目が座ってハイライトがなく少し怖かったが、パッと表情を変えてゲームをしようと言ってくるのでとりあえずス○ブラを起動する。
ス○ブラは沢山いるキャラの中から一体選んで、そのキャラを操作して相手を沢山場外に飛ばしたら勝ち、というゲームだ。基本的な操作が簡単な為小さい子でも出来るのだ。
『おねぇちゃんの膝ゲット〜!』
今日も私の妹が可愛い。私の膝上でツインテールを揺らしながらス○ブラを楽しんでいる。天使だ。
『おねぇちゃんを掴んで!一緒に死ぬ〜!』
『なんでぇぇぇぇぇ!?』
『おねぇちゃん、いつもゆらと一緒に死ぬけどゆらとそんなに一緒に居たいんだね!』
『......』
だがス○ブラでの由良は、いつもク○パを使って私を掴んで心中する。
ク○パの技に敵を掴んで場外へ共に自爆する技があるのだがそれをいつも使ってくるのだ。
もう慣れたがス○ブラでの由良は何故かいつも心中しようとしてくる。悪魔だ。
そうやって由良と一緒にス○ブラをしているともう18:00だ。そろそろご飯を作らなければいけない。
中西家は両親が共働きで家に帰ってくるのが遅いため、家事は基本私の担当だ。
親や由良からは少しバカと思われているが、家事だけはずっと続けているから同級生達よりは確実にできる。ドヤッ。
作ったご飯を由良と一緒に食べ、風呂に入り明日に備えようとベッドに潜る。
明日からがスタートだ。失敗する訳にはいかない。そう思っていると......
『おねぇちゃん』
私を呼ぶ声が扉の前からした。
『どうしたの、ゆら?』
扉を開けると、少し不安そうな顔をした由良が枕を持って眠そうな顔をして立っていた。
『おねぇちゃん、一緒にねてくれる?』
『もちろんいいよ』
いつもならドアを開けて直ぐに私のベッドにスタンバイして寝るのだが、今日はいつもと違う。なんかいつもより遠慮気味っていうかなんていうか...ベッドに2人で寝転がると不意に由良が口を開いた。
『おねぇちゃん、もし学校嫌ならゆらが養ってあげるから行かなくてもいいんだよ?だからね、おねぇちゃんは前みたいに家でゆらと遊んでるだけでいいんだよ?』
え??????.............いきなりトンデモ発言を受けて私は脳内が?マークでいっぱいになる。
黙った私をみた由良は肯定したと思ったらしくてそのまま話を続ける。
『ママとパパにはゆらから言うから学校で嫌な気持ちになるくらいなら、高校卒業しても、働いても、おばあちゃんになってもゆらと一緒に2人だけでいようよ』
『え、ちょ、ゆら???ゆらさーん???』
『ん?なーに、おねぇちゃん?』
目からハイライトを無くして架空の未来設計をたてている由良怖い...
『お姉ちゃんは明日から凄い楽しみなの、だからね、もし嫌になっても頑張るから大丈夫』
由良は少し不服そうだが私のやる気を見て少しは納得したようだ...よかったぁ...
『ん....わかった....でも、もしおねぇちゃんに嫌なことする子がいたら教えてね、絶対だよ』
『もちろんだよゆら、お姉ちゃんとゆらの間に隠し事はしないから。ほら小指出して、指切りしよう』
『うん!!!』
そう指切りした私は明日からの学校生活に思いを馳せながら眠るのであった......
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